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第1225回 獅子がくる!

1、読書記録269

本日ご紹介するのはこちら。

『月刊文化財』通巻699号 

特集 新指定の文化財ー美術工芸品・記念物・無形文化財(生活文化)

ちなみに前回はこちら。

2、令和三年七月十六日の答申

まずは美術工芸品。

国が所有し、宮内庁三の丸尚蔵館が保管している5件の文化財について、同日付けで重要文化財に指定して、それを国宝に格上げした、というもの。

国がしっかりと管理しているものなので、「指定文化財」にしないと保護できないというものでもなかったため、

日本文化を代表する優品としてすでに知られているにもかかわらず後回しにされてきた、ということなのでしょう。

平成29年から開催された有識者懇談会の中で、三の丸尚蔵館の資料について

文化財指定することもふくめ、価値を分かりやすく表示することを考える時期に来ている

という指摘を受けたため、まずこの5件の指定になったとのこと。

・絹本着色春日権現験記絵 高階隆兼

・紙本着色蒙古襲来絵詞 

・紙本金地着色唐獅子図 狩野永徳

・絹本着色動植綵絵 伊藤若冲

・屏風土代 小野道風

同じく重要文化財に新たに指定を受けたものは

・木造十一面観音 滋賀県東近江市百済寺

・木造弥勒菩薩坐像 奈良県奈良市西大寺

・木造金剛力士立像 愛媛県松山市石手寺

・多賀城跡出土漆紙文書

・鉄道省営業乗合自動車 

・ゐのくち渦巻ポンプ

・キハ四二◯五五号気動車

続けて史跡としては

高輪築堤跡が旧新橋停車場跡に追加指定されています。

そして新たな枠組みとして登場した無形文化財(生活文化)では

・書道

・伝統的酒造り

が選定されています。

新登録の美術品として東京国立博物館所蔵の三点の中国陶磁が

竜泉窯の青磁浮牡丹文香炉

漳州窯の呉州赤絵牡丹双龍文大皿

漳州窯の青呉州人物図鉢

登録建造物は数が多いので省略しますが、

ミヤギからも東北学院大学正門や

竹駒神社馬事博物館

などが選定されています。

3、獅子がきた

これらのうち、冊子の表紙ともなっている唐獅子図を取り上げます。

教科書などでも必ず見かける、狩野派の、桃山文化の代表例だと思っていましたが、実はまだ国宝になっていなかったのですね。

かつては秀吉の陣屋屏風であったとか、足利義昭から毛利輝元に贈られたとされる金屏風がこの作品であると言われていましたが、

本作は本来屏風ではなかったのでどちらも否定されています。

もともと障壁画であったものを切り詰めて屏風に仕立てたものであることが明らかで、

毛利輝元が奉行となって建築された勧学院客殿の滝図と同規模と推定されています。

つまり毛利家に伝来したことを考えて、京都聚楽第の南東に与えられた毛利氏の屋敷の長床に飾られた障壁画であったのでないか、というもの。

表紙解説を担当した文化庁の錦田調査官は天正十八年(1590)に小田原攻めから凱旋した豊臣秀吉を毛利輝元が饗応した場、池坊専好が飾った立花が置かれた壁に本図が飾られていたのではないか、と想像しています。

さらには周囲の他の壁には秀吉の天下統一を祝して麒麟など他の霊獣も描かれていたのではないかとも述べています。

4、守るためには

いかがだったでしょうか。

萩の城に飾られた大名家の至宝であっても詳細な来歴はわからなくなってしまうものなのですね。

そしてもう一つ。価値のあるものでも必ずしも国宝・重要文化財となっているとは限らない、ということ。

国や地方自治体が所蔵しており、保存状況が安定していれば指定の優先順位は低くなる、ということなのでしょう。

といっても昨今の現状はそうも言っていられなくなってきたのではないでしょうか。

地方自治体も財政が苦しくなってきて「指定」しておかないと適切に管理されなくなってしまうのではないかという心配があります。

「指定」「登録」した、というのはニュースで取り上げられることもあり

普及活用にもつながっていきます。

戦略的に使っていくことが必要なのかもしれませんね。


本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。





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