「WILL: 素晴らしき世界」をクリアしたのでゲームデザインに着目してみた

日頃からテキストアドベンチャーゲームというものに興味があって自分でも作っていたりするのだが、前々から興味のあったWILL: 素晴らしき世界をクリアした。

ので、感じたことをいくつか書いていきたいと考えているのだが、シナリオ内容の話とシステムの話を書こうと思ったらとても収拾がつかなくなったので、ひとまずゲームシステムのことについて書こうと思う。

文章を入れ替えることで行動自体を入れ替え、主語を変えていくシステムが面白い

同じ行動でも自分・相手・他主人公が取るという3種類で大違いになるのv で、その点は作者が影響を受けたという「街 -運命の交差点-」や「428 -封鎖された渋谷で-」とは違っている点となる。

同じ「足をくじく」「前に飛び出す」という行動であっても、左側のリ・ウェンと右側のジミーが取るのとが取るのとでは意味合いが違ってき、当然結末も変わってくる。プレイヤーはその制御をしながら結末を変え、物語を導いていく。

いくつかある結末のうち「Sランク」の結末に導いていって展開を進めていく――というのがこのゲームの進め方だ。

一方「街」「428」では時系列がきっちり管理され、登場人物が今どこにいて彼らがどのように関係しているのかといった、因果関係をほぐしていくことに楽しさがあった。

「街」「428」では選択肢を選ぶことで行動を変えるが、「WILL」ではそのあたりがちょっと違っていて、登場人物の行動自体を入れ替えていくことになる。なので行動の選択肢が少なくなるのでシナリオの整合性を保つのはかなーり大変だったろうと思う。

「この人にこれをさせてみるとどうなるだろう?」という期待を持って試すことができるので、その点がこのゲームシステムの面白いところだろうなとは思った。

因果関係の推理が難しい

これはちょっと致命的だと思った。先述の通りこのゲームでは、時制や場所がバラバラなので、どのように因果関係を推測すればいいのかがわからない。デザインもされてないので現実的に難しい。

こうなると因果関係を自分で推理することは不可能で、Sランクエンドにたどり着くのに主語の組み合わせを総当たりせざるを得ず、ゲームを遊んでいたと思ったら作業を始めていたことに気づいてしまう。

「街」や「428」ではタイムチャートによる時制が横並びで示され、また渋谷という場所が縛られており、登場人物たちが何時何分にどこにいるかを読み取ったりタイムチャートを見ることで、プレイヤーは登場人物たちの行動の因果関係を把握していく。

「WILL」では時制や場所がバラバラで、なおかつアルファベットランクのついている結末に行けたとしても納得感が薄い。
つまり登場人物同士が繋がってる感がない。後半作中でもその理由付けが示されるが、意図的なものなのか後付なのかは不明。群像劇でなおかつ「街」「428」に影響を受けたという形なのであれば、その点はちょっと物足りなさを感じた。

「こんな展開にしてみたらどうなるだろう」といったような期待感は持てるものの、それが正解じゃない場合に結局総当たりすることになってしまうので限られたものになってしまう。「こんな展開にしてみたらどうなるだろう」でSランク取れればいいが、そうでないものだったりするととたんにプレイしてる感がない。

一応総当たりゲーであることの理由付けが最後の方でされるけど、だからといって体験がよくなるわけでも苦行が報われるわけでもないので、正直微妙な感じだった。

あえてバッドエンドにして進む

後半になるとSランク結末ばかりが正解でなく、あえて✗のついた分岐やAランク以下の結末にすることで他の人の結末をアンロックするという仕様が出てくる。

「バッドエンドにして進む」ところについても面白いなと最初こそ思ったが、結局最善を求めるのではなくすべての可能性を開けてみる必要があり、前述の推測材料がないこともあいまって組み合わせ総当たりゲーになってしまっている感があった。
因果関係がいまいちよくわからないので納得感が薄く、また開示されているのかどうかもまったくわからないので、やはり自力でたどり着くのは難しいと思う。攻略ブログを見ないぞという強い気持ちで始めたにもかかわらず結局見てしまった。

このゲームでやろうとしている体験

この行動をこの人にさせてみたらどうなるだろうという行動自体を登場人物同士で入れ替えることによる可能性の期待を主体に置くのであれば、やはり「街」「428」のように時制と場所を縛ったほうが良かったんじゃないかなぁと思った。

場所は難しいにしても、時制が明確だったり他の登場人物に及ぶ影響がプレイヤー側で予想できないとやはり厳しい。自分で操作している感覚がないので作業っぽくなってしまう。

ただ行動自体を入れ替える面白さというのは他のゲームではやっていないことだったし、ヒントの出し方は「シナリオによるレベルデザイン」になるので、同じシステムでの続編があればぜひやってみたい。

総評

システム自体は斬新だし、アドベンチャーゲームでは数少ない「シナリオで遊ぶゲーム」となっている。「街」「428」のようなゲームの新作も近年出ていないので、アドベンチャーゲームを作る人や興味のある人はチェックすべきゲームだ。

ただ、やはり自分で推理しようがなく、「とりあえず試してみる」以外に攻略の手がかりがないので、正解を知っても納得感が薄いというのが難点。

この手の総当たり問題については別記事にしたいぐらいアドベンチャーゲームについては根深い問題だと思う。このゲームに限らず「この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO」をプレイしていても同じことを考えてしまったので、別の記事で改めて考えてみたい。

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