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『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』ファーストインプレッション

 『ファイアーエムブレム 風花雪月』をクリアして感想をアップし、その日に『無双』に手を付け始めました。おそらく、ゴールデンウィークをすべて捧げても終わらないことを予感させるボリュームに、戦慄しております。

 今回、『無双 風花雪月』を15時間ほど遊んでのファーストインプレッションをお届けします。『風花雪月』は遊んだけど『無双』はまだ、という方に向けた記事になりますので、興味がおありの方はぜひ『風花雪月』を遊んでみてくださいね。GWは血塗れの同窓会で決まり!!!

 まず手始めに、本作は『風花雪月』と同等の、あるいはそれ以上の時間泥棒になる、ということを言及しておかねばならない。無双おなじみの3Dアクションパートは5分で終わるものから20分を超える長い戦場まで幅広く、支援会話や育成に凝りだしたら際限なく時間を吸われていくだろう。これから100時間クラスの超大作『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』を控える2023年5月の今、このタイトルを購入するタイミングについては、慎重に検討いただきたい。

『無双』の心地よさ

 『風花雪月』の開発にコーエーテクモが関わっていたため、満を持しての『無双』アクションとの融合を果たした本作。15時間ほど触った印象としては、「風花雪月と無双が見事に両立している」というもの。

 アクションパートではおなじみ弱攻撃と強攻撃、無双乱舞を使い分け、並み居る敵をぶっ飛ばしながら闘っていく『無双』方式。キャラクターのアクションは選択する兵種(=武器種)と紐付けられるが、キャラクターごとの固有のモーションもあり、兵種が中級から上級、そして最上級に昇っていくほどに無双らしい豪快で広範囲なアクションを手軽に繰り出せるようになる。ゲームのパフォーマンスも素晴らしく、敵味方が入り交じる戦場でも処理落ちを感じることもほとんどなかった。

 特殊技や魔法に相当する「戦技」も、装備中の武器の耐久値を消費して使用する『風花雪月』を踏襲したスタイルで繰り出せる(戦闘中に耐久値が0になってもロストはしない)。無双と任天堂タイトルとのコラボでは前作にあたる『ゼルダ無双 厄災の黙示録にも存在した「ヘイトゲージ」の概念があり、戦技で攻撃したり特攻を突いたりしてゲージを削り切ると、周囲を巻き込みながら強烈な連撃を叩き込む「必殺の連撃」を浴びせることができ、キルカウントがぐんぐん伸びていくのが爽快でたまらない。

 アクションパートの最大の特徴は、マップ画面で友軍に指示を出す戦略要素。本家無双シリーズにも搭載されている要素だが、本作の場合は指示の重要素がずば抜けて高い。どのユニットにどの拠点を制圧させるかなどを、そのユニットと相対する敵との武器の相性をチェックしながら、的確に指示を出していかねばならない。CPUはある程度自主的に行動はしてくれるが、戦闘中に発生する様々なミッションを達成するには、指示を使いこなすことは必須のバランスになっている。

 故に、本作はとにかく「忙しい」ゲームなのである。目の前の敵を無双アクションで蹴散らしながら、味方を敵の要塞へ進軍させたり、力尽きたら任務失敗となる対象に護衛を就かせたりと、常にマップや画面下部のアナウンスに注意を払う必要がある。画面の外における敵と友軍との闘いは、武器の相性とレベル差などで大きく変動するため、常に有利に立ち回れるよう考えなければならないし、本作は『ファイアーエムブレム』なので戦闘中に力尽きた仲間はロストしてしまう(仲間をロストしない「カジュアル」難易度も選択可能)。仲間に指示を出していれば軍将の気持ちが味わえるが、その選択には常に味方の命がかかっているし、『風花雪月』と違って戦場の全てを見渡せるわけではないため、より神経質になってしまいがちだ。

 そういった事情もあり、『風花雪月』を遊んだけれどアクションゲームは苦手かも、という方に向けた「イージー」難易度が搭載されている。普段はノーマルで遊んでいたが試しに触ってみたところ、戦闘中の忙しなさが解消されるほどに緩やかなゲームバランスへと変化するため、こちらがオススメだ。体験版も配信されているので、ぜひとも試していただきたい。

至るところで感じる『風花雪月』らしさ

 本作の醍醐味はアクションのみならず、FEシリーズおなじみの支援会話はふんだんに用意されているし、戦闘中に条件を満たせば敵将を自軍にスカウトすることも可能である。本作は『風花雪月』と違い職種=武器種のため戦闘中に武器を切り替えることが出来ない。そのため、多種多様な武器を扱えるよう人材は多い方が有利に進められる。困ったらとにかく敵将を自軍に引き入れて軍備を拡大するのがオススメ。

 また、本作ではとある事情により慣れ親しんだガルグ=マク大修道院での行動シーンが少なく、戦闘以外のほとんどの時間を前哨基地で過ごすことになる。ここでは買い物や料理を通じて仲間と交流を深めることができ、おなじみの「お茶会」は「遠乗り」へとリニューアル。基地を離れ二人きりのデート時間を過ごし、相手の言葉に返答するだけでなくこちらから質問することも可能となった。本作にも膨大な差分のテキストとボイスが収録されているのだろう。

 豊富な支援会話でキャラクターの心情や性格を深堀りしていくのは、『風花雪月』ならでは。本作はifストーリーという側面があるため、原作を知っていればニヤリとしたり、思わず感動したりといった、より愛着を感じられる内容が多いのもファンにとってはご褒美だ。例えば、『風花雪月』におけるイングリットのプロフィールの嫌いなものの欄には「ダスカー人」の記載があったが、本作では無くなっている。その心情の変化を思わせるエピソードが作中に含まれており、暖かい気持ちに包まれる、といった出来事があった。続編ではないが、『風花雪月』のアフターで生まれた作品ならではの味わいは、あのゲームに膨大な時間を捧げたからこそ感じられる感慨で、だからこそ本作を強く推したいと思わずにはいられないのだ。

こういう「ありえたかもしれない」シチュエーションが多すぎて死ぬ。

サプライズ多めのifストーリー

 そもそも、『風花雪月』は続編が作りづらいタイトルだ。あの物語は一作で完結しているし、続きを作るには脱落者が多すぎる。かといって前日譚や空白の5年間を描いてもベレト/ベレスがいない上に結末が見えきっているので、面白みが薄い。

 そのため本作は、「三人の級長がベレト/ベレスと出会わなかったら」という状況から派生した、もしもを描くストーリーになっている。『風花雪月』とは極論を言えば「先生が味方する陣営が勝つ」ゲームだったので、それすら取っ払ったらどうなるのだろう、という想像力が働くことで、まだ誰も知らない『風花雪月』の物語を紡ぐというアイデアが秀逸だ。今私は青獅子ルートを進めているが、我らがディミトリは「ダスカーの悲劇」の真相を知るため奔走し、フェリクスが女房役を努めながら王国に巣食う闇と闘い続けている。エーデルガルト率いる帝国やクロードが治める諸侯同盟とはどのように関わっていくのか、先生の不在によって生じる歯車のズレが少しずつ広がっていく物語は、つい止め時を見失ってしまう。

 本作ではなんと、あのモニカやマイクランをはじめとした『風花雪月』のサブキャラクターが多く登場するし、時には共闘や実際に操作することもできてしまう。また、名前だけ登場していたキャラクターに本作で初めてグラフィックが与えられる場合もあり、「思ったより悪そうな顔してたな……」と苦笑してしまうファーガスのお偉いさん連中のご尊顔は、ぜひご自分の目で確かめてほしい。

 ところで、ベレト/ベレスの不在を埋める本作の主人公は「傭兵」であり、そして先生ではなく「生徒」として選択した学級に配属されることになるのだが、現時点ではかなり影が薄い存在になってしまっている。彼/彼女はプレイヤーの分身でありながら「灰色の悪魔(ベレト/ベレス)を倒す」しか動機がなく、ソティス枠になるであろう謎の存在ラルヴァも、意味深なことを言うばかりで物語の動きには何も影響を与えてはいない。そのため、本作を進めるモチベーションは「風花雪月のみんなに会えるから」でしかなく、本作単体で遊ぶことは中々に薦めづらいのが本心だ。

「FEの呂布」もとい「ジオン一般兵から見たアムロ」の我らが師。

ひとまず遊び続けよう

 たった15時間では1ルートの折り返し地点といった進捗で、コストパフォーマンスとしては申し分ないボリュームが予想される本作。ファイアーエムブレム×無双の融合として、アクションとシミュレーションの折衷は上手いこといっており、脳死でボタン連打では勝てない辺りが「手ごわいシミュレーション」由来のゲームの本懐と言うべきだろう。

 ただ、『風花雪月』のあの壮絶な戦争「経験」に匹敵するショックを得られるのだろうか、という懸念もありはする。軍備→進軍→戦闘と、ゲームフローとしてはより戦争らしくなってはいるものの、スカウトに対するハードルが低いので脱落者が少なく、同級生が殺し合うあの悲惨さ(と不謹慎な面白さ)には全く及んでいないのが現状の感想である。

 ベレト/ベレスの不在は三人の級長にどんな影を落とすのか。本作の主人公は何を成すのか。その全てを見届けるにはまたしても100時間を捧げる羽目になるのだろう。全ルートの完走の暁には、また何か書くかもしれません。

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