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ニュータイプ育成ゲーム。『SDガンダム バトルアライアンス』

 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning』を観てからというもの、人生最大のガンダムブームが起きている。具体的には、過去作の視聴、ビデオゲームの購入、プラモデルショップへ行っては好きな機体のHGをカートに入れて、「作っても飾るところないから」と冷静になってそれらを全て棚に戻すといった異常行動を取っている。その結果、いま一番欲しいのはシャリア・ブル(ジークアクスのすがた)のアクスタという、Xを開けば無数にいる量産型オタクの一機になってしまった。

 それはさておき、熱にあてられて購入したのが『SDガンダム バトルアライアンス』だ。別作品のガンダムが正史に介入する……。今は亡き「春映画」めいたプロットが気になってセールで購入したものの、今となっては本作はニュータイプを炙り出してスカウトするために連邦軍が作ったゲームなのではないか、というくらいの疑念を抱くことになった。

 発売は2021年で、参戦作品としては『鉄血のオルフェンズ』までを、DLCを導入すれば『水星の魔女』や劇場アニメ版『閃光のハサウェイ』の機体やキャラクターまでを取り扱っている。開発はアートディンクで、タイトルからしても携帯機で展開されていた『ガンダムバトル〇〇』シリーズの系譜といって差し支えないだろう。その過去のリソースに頼らず、新規モデリングによるSDガンダムに踏み込んだところに、並々ならぬやる気を感じる。

 ストーリーは前述の通り、「Gユニバース」なるシステムに取り込まれた連邦軍の兵士とオペレーターが、様々なガンダム世界の事象が入り乱れたデータ世界の歪みを正し、自分たちの世界に戻るために歴代のパイロットと共闘する、というもの。オデッサの闘いで挑んできたランバ・ラルのグフが急にバルバトスに上書きされるなど、予想もできない展開の連続は面白く、一年戦争を戦っていた兵士が宇宙世紀の未来やアナザーガンダムの出来事を目の当たりにしていくのは、あまりに大胆で気の毒だ。合間合間に挟まれる会話も小ネタが多く、良く言えばマニアック、悪く言えば「頼んでもいないのにオタクが横から解説を入れてくる」くらいの塩梅で、この辺りは評価が割れるだろう。

教えたがりが多い。

 主人公は無口系で個性は薄いが、その代わりオペレーターであるユノとナビゲートAIであるサクラがひっきりなしに喋り、アニメのネームドキャラクターも本作のオリジナルキャラに呼びかける音声があるなど、新規録り下ろしボイスはかなり多い。本作は一緒に闘う僚機を2機選べるのだが、特殊会話のバリエーションも多彩で、意外な組み合わせもあるため色々と試したくなってしまう。

アークエンジェル所属を名乗り仲間ということにする。

 アクション面では、格闘と特殊格闘、メイン1つと2つのサブ射撃を織り交ぜて闘うスタイル。原作を再現したモーション、武装によって色分けされた歴代の機体を駆る楽しさは健在で、範囲攻撃や空中コンボのシメではカメラアングルも変わり迫力満点。敵を打ち上げてから射撃で釘付けにするなんちゃってDMC戦法など、SD頭身だと割り切ってガシャガシャ動かす方向性にしたのは大正解で、ガンタンクが空中コンボをキメるあり得ない絵面なんかは、お祭りクロスオーバーゲームの醍醐味として大いに笑わせてもらった。

 しかし、本作を様々な機体を乗り換えて遊ぶカジュアルなアクションRPGだと思い購入すると、手痛い大火傷を喰らうゲームバランスであることは、やはり否定できない。その要因は、マルチプレイを前提とした難易度と、諸々の仕様に由来する。

 ザコ敵に相当する量産機との闘いは、縦横無尽なアクションと重厚感あるSEのおかげで気軽に無双感を味わえる。ところが、ネームドキャラクターの乗るMSとのボス戦は、序盤からかなり苦戦させられるバランスだ。敵の攻撃速度は速く、ガードしても削りは手痛く、回復手段は有限で、育成度合いにもよるが2~3度連撃を喰らえばあっという間にこちらのHPが尽きるジリ貧の闘いを強いられる。幾度となく闘ってる内に、昔の『モンスターハンター』のようなターン制の立ち回りを意識したデザインであることはわかるのだが、感覚としては序盤の装備でグラビモスと闘わされているような、苦しい状況が常に続く。

 MS戦で重要なのは回避とガードなのは言うまでもないが、敵が繰り出す攻撃は格闘・射撃ともにVSシリーズなら即刻炎上修正は免れないほどの超誘導を有しているので、ガードが重宝される。しかし通常のガードでもHPは削られるので、それらを無効化し、かつ敵の格闘にそれを合わせればカウンター&打ち上げ状態で反撃できるジャストガードは最重要テクニックと言っても過言ではない。これが連続で決まれば、グラビモスだと思った相手はゲリョスくらいの柔らかさに変わるのだが、いかんせんジャストガードの受付判定はかなり狭く、必須なのに最難関という不可思議な設計に落ち着いてしまっている。

 輪をかけて辛いのが、MAとの戦闘だ。彼らはその巨体を活かした突進や広範囲攻撃を繰り返し、ジャスト回避やガードのタイミングはMS戦以上にシビアとなり、自分や僚機が撃破されてもレストア(救助)することもままならない、手詰まりに陥りやすい難易度設計である。脚部などの部位を集中的に攻撃することでダウンを取ることもできるが、それ以外は心休まる瞬間は一時もないと言ってよく、ただひたすらに敵の猛攻に耐え忍び、わずかな隙を突いて攻撃か回復かを瞬時に選択する、その思考能力が問われるゲームなのだ。

 ガードが重要テクニックであると述べたものの、原作再現の名の元に繰り出されるオールレンジ攻撃はこちらのガードの及ばない背部を突き、特定のボス機はガード不可の掴み攻撃を繰り出してくるため、短い予備動作を見抜いてガードか全力回避かを選択する瞬発力を試されてもいる。そうした死闘が待ち受ける中、「ガードの全方位化」はハクスラ要素である強化パーツ依存、「ジャストガードの受付時間を延ばす」「回復回数を回復する」といった喉から手が出るほど欲しい生存スキルは手に入るのがストーリークリア後、というチグハグ具合がこちらの闘志を萎えさせる。

 結果としてプレイヤーは、敵の予備動作を見て回避かガードかを瞬時に選び、ガードであれば極めて短い受付時間に四苦八苦しながらジャストガード成功を祈るという、とてつもない緊張感に晒されることになる。もし本作を一度もミッション失敗に至ることなくストーリーをクリア出来たなら、あなたはアムロ・レイの再来と呼ばれてもおかしくないニュータイプである。

強気に出られるのはザコ戦のみ。

 苦難はまだ続く。本作は、敵を倒して入手する「キャピタル」を消費して、機体を強化することができる。ところが、レベルの上限を突破させる素材は手に入るミッションがストーリーの進行によって区切られており、本作は常に開発側が規定したバランス調整の上での戦いを強いられることになっている。これにより、足りないプレイヤースキルをレベルで補うことは許されず、頼れるのはその都度の上限のパラメーターと、機体性能と、己の腕のみという、実に硬派なゲームとなっている。SDガンダムって、もっと牧歌的だと思ってたのに……。

 一応、本作には難易度設定もあり、開始時点ではミッションごとにEASYとNORMALから選択することが可能。だが、その先のHARDの解放条件は「NORMALで全ミッションクリア」となっており、ここにおいてもズルが出来ない仕様になっている。『地球防衛軍』シリーズのように、NORMALの終盤のミッションに躓いたので、HARDの比較的簡単な序盤のミッションで武器を集める、といったプレイングすら、許されないのだ。キャピタルの回収効率も、ドロップする強化パーツの強さも、NORMALとHARDではかなり差が開いている。HARDをある程度周回できるようにまで登り詰めた今、これらがあったら楽できたのにな、という本音は隠せなかった。

これでもまだアップデートによる修正で
キャピタルの排出率は調整済みとのこと。

 総じて、素材は悪くなかったと思う。SD頭身の機体をガシャガシャ動かす楽しさ、ミッションの途中でどの機体とキャラクターが介入してくるかわからないワクワク、歯ごたえがありすぎるボス戦をくぐり抜けた達成感などは、病みつきになる魅力を秘めていた。しかし、「遊びやすさ」の観点をことごとく蔑ろにしたかのような苛烈な敵の猛攻、ハクスラの効率を著しく妨げる一部のマップ構造、一切の不正を許さない厳格さが、息苦しさを助長する。「悲しいけどこれ、戦争なのよね」とアートディンクは言うのかもしれないが、手のひらサイズのSDガンプラのような愛らしさとは正反対のいかつい難易度に対しては、こちらもアクシズを落とすことで抵抗の意を示すしかない。

 願わくば、このシリーズが続いてほしいと思うのだ。開発時期的にエアリアル&スレッタのみの参戦に留まった『水星の魔女』のキャラクターの追加や、『ククルス・ドアンの島』『復讐のレクイエム』、そして『GQuuuuuuX』の機体で、また賑やかなクロスオーバーを味わってみたい。とくに『GQuuuuuuX』参戦の暁にはシャア(旧)とシャア(令和)のMAV戦術をゲームで再現できたらと思うと、夢が膨らむではないか。そんな未来を夢想しながら、終わりなきハクスラ周回に旅立つとしよう。ただ あしたへと あしたへと 永遠に……。

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