今すぐG.R.A.D.を読め。黛冬優子の「覚悟」を学べ。
ドーモ、伝書鳩Pだ。人間、弱気になることは誰だってある。仕事が上手くいかないとき、プライベートで悲しい出来事があったとき、体調が悪いとき。思うようにいかない出来事や不安に苛まれたとき、人間は常日頃と同じパフォーマンスを発揮できるほど、強い生き物じゃあない。
だがシャニPよ。おまえの中に、担当アイドルの可能性やポテンシャルを疑うような心があるとするのなら、おまえはプロデューサー失格だ。羽ばたこうとする少女たちの足を引っ張ってどうする。おまえが先陣を切って、道を切り開いてあげるのが使命じゃなかったのか。その腐った性根を改めてこい。具体的には、G.R.A.D.黛冬優子コミュを今すぐ読め。くよくよしている時間はない。
ユニットではなく個人の資質が争われるG.R.A.D.だが、その出場と同時期に冬優子に密着取材の仕事が舞い込んでくる。これはまたとないチャンスだ。だがシャニPは密着取材を受けることで「ふゆ」と「冬優子」を切り替えられる暇がなくなること、常に気が抜けなくなることを危惧して、仕事を引き受けるか悩んでいた。それに対し、おまえの担当アイドルの回答はこうだ。よく聞け。
言うまでもなく、「ふゆ」のプロデューサーとしておまえは失格、赤点だ。G.R.A.D.という大きなオーディションを前にしての密着取材、そんな大きな餌をこの黛冬優子が逃すはずがない。283プロにおいて最もセルフプロモーションに長け、常に最高のアイドル像を披露してきた冬優子の才能と努力を、おまえは最前線で見守ってきたんじゃなかったのか。
これが、黛冬優子だ。観客に理想のアイドル「ふゆ」を見せつけるためなら、黛冬優子は後退しない、逃げない。持てる力全てを用いて、最高のイリュージョンを見せる。そんな気の強さに、おまえは惚れ込んだはずだ。思い出せ、W.I.N.G.コミュでの葛藤を、【オ♥フ♥レ♥コ】での二人三脚を。
そして忘れてならないことがもう一つ。黛冬優子はプロデューサーであるおまえを信頼している、ということだ。でなければ、「黛冬優子」でいられる自分をさらけ出したりなどしない。一体何年「ふゆ」をやっていると思っている。そんな彼女が「黛冬優子」として接していられるのは、少なくともおまえがボロを出さず、受け入れてくれるという証明を勝ち取ったからだ。その栄誉におまえは感謝し、泣き崩れるべきなのだ。
自らの過ちに気づいたおまえことシャニPは、冬優子に非礼を詫びることとなった。冬優子を案じるようで、その実黛冬優子を本当に信じられていなかったこと、「ふゆ」じゃない一面が露呈することを恐れていたこと。アイドルはイメージ商売だ。ファンの夢を壊すようなことがあっては、取り返しのつかない大惨事になる。可愛いアイドル「ふゆ」から一歩はみ出した途端、黛冬優子はいったいどんな仕打ちを受けるのだろうか。そのことを恐れ、臆病になっていたのだろう。
それに対して、冬優子はプロデューサーを安心させられなかった自分の非力さを振り返る。
もし、あんたがふゆの大丈夫って言葉を
信じられなかったんだとしたら
それは、あんただけじゃなくて、
ふゆにも問題があったんだって思うわけよ
信じるに足るふゆを、
見せられていなかったってわけでしょ?
黛冬優子は、それはもう気が遠くなるほど「ふゆ」であり続けた。そのことにプライドはあったはずで、それは完璧なペルソナだった。それでも、足りないものがあったとすれば、黛冬優子は自分でそれを許せない。その向上心あってこそ、「ふゆ」はアイドルでいられる。
認めたくないけど、
今あんたと話している性格の悪いふゆも本物
その他大勢がふゆだと思っている、
ふゆの理想のふゆも本物
本物にできるように、
頑張って頑張って猫をかぶり続けたのよ
……ふゆが、ふゆのままじゃ愛されないのは悲しいけど
ふゆが作ったふゆが、
たくさんの人に受け入れられるのは気持ちいい
どうしたって痛いし、どうしたって幸せでーー
そういう歩き方にするって決めたのはふゆだから
今回のコミュでは、なぜ「ふゆ」が生まれたのかは明かされない。いつか明かされるのかもしれないし、真相は明るみにならないままかもしれない。猫をかぶり続けるのは、並大抵のことではない。想像を絶する苦労があったに違いない。そんな弱みを、ファンに握らせるような女ではないのだ、冬優子は。だから、ファンもプロデューサーも騙し切ってみせる、最高のアイドル「ふゆ」であり続ける。自ら生み出した理想が「本物」に見えるように、黛冬優子はステージに立ち続ける。それが黛冬優子の「覚悟」だ。そのことを知って、おまえは目が覚めたはずだ。
思えば、黛冬優子をスカウトしたあの日から、シャニPは「ふゆ」というアイドル像を世間に広めるための共犯者になったようなものだ。偶像を偶像として提供し、ファンを騙す。そんな大ペテンの片棒を、自ら担いでしまったのだ。冬優子一人で創り上げた「ふゆ」は、今ではプロデューサーと冬優子ふたりの理想になった。
そして冬優子は、プロデューサーにも選んでもらえるアイドルであり続けると宣言する。エゴサーチや握手会の練習が描かれた前半コミュは、いわば、プロデューサーと冬優子の二人三脚で理想のアイドル「ふゆ」を創る工程であった。冬優子一人のものだったそれが、いつしか二人の夢となり、たくさんの人の愛を背負っていく。黛冬優子が描くアイドル像は、無数の愛を受け止め、肯定するものだ。その頂点を手にするまで、黛冬優子は歩みを止めない。その横に並んで歩くのは、プロデューサーであるおまえ自身だ。その信頼に応えたいと思うのが、プロデューサーってもんじゃないか。(引用元)
その覚悟に付き合いきれないのなら、おまえは黛冬優子のプロデューサーではいられなくなる。今回は、シャニP自身が自分の覚悟を改める物語であるとともに、黛冬優子の「強度」を見せつけられるお話だった。何人たりとも揺るがせられない、絶対のアイドル。頂点に登りつめるその日まで、歩みを止めてなどいられないのだ。その歩調に合わせられるように、これからも世間を騙し続けよう。最高のアイドルを披露し続けよう。さぁ、幕が上がるー。
to be continued.....