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対立する二つの正義『ルパパト』が面白い。

 初期メンバー9人で始まった『キュウレンジャー』に続き、今年のスーパー戦隊も攻めの姿勢を見せた。2組のまったく異なる戦隊が争いながら悪と闘う「VS」を番組のコンセプトとし、一年間の物語を走りきろうとしている。ついに25話を終え折り返し地点。面白さは失速せず、さらに加速している印象すらある。

 稀代の大快盗、アルセーヌ・ルパンが収集していた秘宝・ルパンコレクションが、異世界からやってきた犯罪者集団・ギャングラーによって奪われた。そのルパンコレクションを奪い返すため、夜野魁利宵町透真早見初美花の3人は「快盗戦隊ルパンレンジャー」としてギャングラーと日夜闘いを繰り広げていた。
 一方、世間を騒がす快盗戦隊とギャングラーとマークしていた国際警察も「警察戦隊パトレンジャー」を結成。朝加圭一郎陽川咲也明神つかさの3人はパトレンジャーに変身し、市民の安全と平和を守るために二つの組織を追う。

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 快(怪)盗と警察といえば『ルパン三世』などでおなじみのモチーフであり、対立する二者としてとても飲み込みやすい。また、快盗側の正体がバレるか否かのサスペンスを時折挟むことで、視聴者の興味を一年間持続させることも作り手の戦略であろう。まんまとハマってしまった。

 本作の面白さは、まずは対立の構造そのものにある。ルパンレンジャーの3名は、それぞれがギャングラーに家族・婚約者・親友を奪われている。そしてその「大切な人」を取り戻したいという願いが、彼らの目的であり原動力である。誰かが倒れても残った者が願いを叶える、という誓いを交わすほどのストイックさ、戦闘時の流麗かつスピーディなアクションは素直に格好いい。

 一方のパトレンジャーは、作品世界において知名度や人気の点でルパンレンジャーに遅れをとった形だが、キャラクターの濃さでは負けていない。堅物の先輩刑事と未熟者の後輩、それらをまとめるしっかり者の紅一点。公的組織に属しているゆえか見た目の華麗さでは劣るが、市民のために体を張って命懸けで闘う姿は共感を呼びやすく、「ヒーロー」として王道の魅力を持ち合わせている。

 ギャングラーという共通の敵を持つ二つの戦隊だが、局地的な共闘はありつつも、真の相互理解には(25話現在)至っていない。ルパンレンジャーは己の願いのために闘う「私的」な正義を、パトレンジャーは警察組織に属する「公的」な正義を信条に闘っている。それらは甲乙付け難く、悪を倒すための正義なら等しくヒーローとして写る。二つのヒーローが存在する本作は、アバンタイトルで「どっちを応援する!?」と視聴者に投げかけることの出来る、稀有な戦隊モノだ。異なる正義はやがて融和の道を進むのか、あるいは決定的な対立の果てを行くのか。その推移を見守るために、ファンは日曜朝早く目覚めるのだ。

 そしてこの物語の最高の盛り上がりは、快盗の正体を警察が知る瞬間であることは間違いない。今のところ快盗側だけが相手の正体を知っているが、この均衡が崩れる時はいつか必ずやって来る。行きつけの洋食店の店員が快盗であることを知った時、警察側はどのような反応を示すのか。おそらく、この着地から逆算して脚本は書かれているだろう。どのようなタイミングで、どのような状況でそれに至るのか。今からとても待ち遠しい。

 その他にも、今後の盛り上がりのための布石は多く打たれている。一向に姿を見せないルパン一族、謎多き執事コグレ、快盗戦隊の大切な人の仇ザミーゴ・デルマの存在などなど、後半戦に向けて風呂敷が広げられた状態だ。邪推するなら、ルパンコレクションを集めたところで本当に失われた命が甦るのか(「大切な人」たちは氷漬けにされた上、砕け散っている)の保証はなく、もう一波乱ありそうな予感が漂っている。

 近いようで遠い二つの正義の行方。張り巡らされた謎。長い歴史を持つシリーズゆえ、これくらいの積み重ねはお手の物だろうとは思いつつ、新しいコンセプトならではのスーパー戦隊のドラマが観られるのではないか。それぞれの背景や動機が絡み合い、物語はさらに加速していくだろう。完結を迎えた時、自分は一体どちらの戦隊を応援しているのか。先行きが見えない分、期待値は増すばかりだ。

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 そんな2組のヒーローの素顔は、双方とも個性豊かで、すぐに魅了されてしまう。見た目のチャラさとは裏腹に優しく熱い心を持ったレッド(魁利)、クールな二枚目で料理人のブルー(透真)、妹系でおしゃれ好きのイエロー(初美花)が揃ったルパンレンジャー。前述の通り、それぞれが大切な人を失うというシリアスな背景を背負いつつも、軽いノリでスマートにお宝を奪う。「快盗」という大それた裏の顔を持ちつつ、どこにでもいる等身大の若者としての一面がとにかくキュートだ。

 日頃は洋食店で働いており、3人はまるで家族のように近しい関係を築いている。しかし、願いのためなら誰かを切り捨てでも生き残る覚悟を、同時に背負ってもいる。この誓いが後に何らかの葛藤を生じさせることは想像に難くなく、次週の放送が待ちきれなくなるラストで締めくくられるだろう。

 対するパトレンジャーは、警察ドラマの様式美に思える布陣が揃う。熱血で猪突猛突進な1号(朝加圭一郎)とお人よしで未熟な後輩2号(咲也)を、時に叱り時になだめ全体を引き締める3号(つかさ先輩)。1話の時点ではまだ急造チームだった彼らだが、相性は抜群。警察としての使命に燃える3人は、自ずと応援したくなる。

 個人的な推しはやはりパトレン1号こと朝加圭一郎。ルパパトの視聴動機の7割を占めるほどに筆者はこの漢に惚れている。
 銭形警部ばりに茶色のコートを着こなし、倉田てつを以来の濁音発声能力の持ち主である演・結木滉星がまず最高。熱血警官キャラの王道を往く風貌と声のデカさを兼ね備えた才能を発見した制作陣に、拍手を送りたい。
 性格面では、正義感の強いこれまた王道キャラで、子ども好きだが懐かれないというオプションを装備。愚直で鈍感で熱血漢。今どき実直すぎる正義のお巡りさん。それが朝加圭一郎だ。
 画面の朝加圭一郎が常に真剣であるからこそ、融通が利かなかったり、頓珍漢な行動をとる彼を観て、視聴者は抱腹絶倒し、目が離せなくなる。朝加圭一郎マジ朝加圭一郎。今年の流行語は間違いなく「国"際"警"察"の"権"限"に"お"い"て"実"力"を"行"使"す"る"」で決まりだ。

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 加えて、20話からは追加戦士として高尾ノエルが参戦。国際警察所属かつ快盗という二つの顔を持ち、そして初登場話にして両戦隊の前で正体を明かすというトンデモ行為で、視聴者も併せて困惑させたキザな男。胡散臭さたっぷりのこの男、どうやら快盗ら同様に大切な人を奪われた過去があるらしいが、真の目的は未だ不明。両陣営に属し状況をかき乱す、先行きの見えないキャラクターだ。余談だが、筆者は彼の変身アイテムの動作がどうしても覚えられない。

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 二つの戦隊が織りなす追跡劇は、いよいよ後半戦に突入。朝の子ども向け番組という制約の中で、大人の視聴者をも唸らせるドラマを何度も送り出してきたニチアサなら、このままで終わるわけがない。もっと深く、もっと面白く。個人的にもお気に入りの一作になるのでは、という予感を秘めつつ、快盗と警察の闘いを見守ってゆきたい。

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