『MEG ザ・モンスター』おぉ哀れな巨大サメよ、安らかに眠れ。
「夏は海でサメでステイサム」みたいな企画書を出したプロデューサーと、それを通した重役が一番偉いと思う。そんな夏のB級大作。
海に浮かぶ海洋研究施設の調査隊は、海底奥深くに未知の海溝を発見。しかし、調査隊の探査船が巨大な”何か”に接触したせいで浮上できなくなってしまう。調査隊の救助に向かった潜水レスキューのジョナス・テイラーは、海底に潜んでいた超巨大ザメ=メガロドンと遭遇。全長23メートルを超える巨躯と鋭い歯であらゆるものを食い尽くすメガロドンは、海洋研究所のスタッフを襲った後、人々が集まるビーチに向かっていた。ジョナス率いるチームは、未曾有の脅威を回避できるのか!?
『ロスト・バケーション』に『海底47m』など、Z級映画としてレンタル店の棚を潤しがちなサメ映画ジャンルの中でも、しっかりと予算と脚本を揃えた上で製作された「良質な」サメ映画も確かに存在していた。その最新系がまさかのVSジェイソン・ステイサムだというのだから、世紀のドリームマッチが実現したことになる。グレート・タイタンだとかメカシャークあたりと一戦交えてきたサメ業界の中でも屈指のビッグマッチ。最強の敵には最強のサメということで、200万年前から生息していたという超巨大サメのメガロドンがエントリー。これを大スクリーンで観ずしてどうする。すぐに劇場に向かってほしい。
と、ここまで期待を煽っておいて何だが、皆さまご存じの通り本作はステイサムが勝つ。むしろ、前世でどれだけの悪行を重ねたらステイサムに追いかけまわされるのかという程に不憫なメガロドンさんの生涯にハンカチを濡らし、コロナビールを飲みながらポップコーンを食べるタイプの作品だ。
サメと闘うのだから戦場は海。さすがのステイサムも海では満足に闘えないのでは?甘い。我らがイサム兄貴はひるむことなく生身でメガロドンに接近し発信機をつけたり、己を餌にサメとのチェイスを披露するなど、地上にいるときと戦闘力がほぼ変わらない水陸両用タイプであることが本作で証明される。この世界一セクシーなハゲの前では救助船などちょっと大きい武器に過ぎず、新必殺技「ステイサムカッター」で巨大ザメを切り裂くシーンは思わず拍手喝采したくなるカッコよさ。その屈強なボディの前に小サメどもは頭を垂れひれ伏すしかなく、ステイサム兄貴のおこぼれに群がる醜悪なハイエナと化す。真のアクアマン誕生の瞬間を、私たちは目撃するのだ。
メガロドンさんの顔を立てるためワザとピンチを演出するステイサム氏
正直に白状すれば、本作の魅力はこれまで述べてきたこと以上でもないし以下でもない。イサムとサメの画が観たければ満足できるし、むしろそういうボンクラ映画ファンしか観ないような一作なのだ…と思いきや公開初週の週末興行1位を叩き出すなど、兄貴の筋肉にヴィンヴィンとキてるピーポーは思いの外たくさんいるらしい。とても喜ばしいことだ。
チャイナマネーがどうとか、原作再現度合いが気になるファンもいるかもしれないが、IQの低い私のようなボンクラ映画ファンにとってはご褒美みたいなものだったし、同じように感じた諸兄らも自宅に帰って筋トレに勤しんだりしたはずだ。車に乗るステイサムもイイが、泳ぐステイサムも最高だ。元飛び込み選手(マジです)が体を張ってお届けする夏の怪獣映画を、ぜひ劇場でご覧いただきたい。