ここは猛者たちの集会所『#バーフバリ2絶爆マサラ』レポinキネカ大森
先日アップした新宿ピカデリーでの『#バーフバリ絶叫』上映レポ、note公式で取り上げていただき、さらにtwitterで広めていただいた方のおかげで、たくさんの方に読んでいただけました。この場をお借りして、お礼申し上げます。
未だ祭りは継続中の、インド式英雄譚の最新進化系にして娯楽映画の頂点であるところの『バーフバリ 王の凱旋』。その圧倒的面白さにひれ伏し、他の中毒者の雄叫び(感想)を求めネットの海を放流していた頃、こんなニュースが飛び込んできた。
ま、マサラ…?マサラ上映ってナンだ?発声とかしていいヤツか?知らないことはナンでもGoogleに問い合わせるこちらゆとり世代、検索結果を読んで驚愕するなどして、チケット争奪戦への覚悟を決めたのが1月14日、『王の凱旋』を初めて観た帰りの電車でのことだった。
マサラ上映とは、インドで行われる上映スタイルであり、絶叫はもちろん、紙吹雪を撒く、歌う、踊るなどが許された、観客参加型の上映のことを指す。ナンでも、日本でも発声(応援)上映に次ぐ新たな参加型鑑賞スタイルとして、聖地と呼ばれる映画館がいくつか存在し、今回のキネカ大森もその一つなのだとか。
こちらの劇場ではネットでのチケット販売を行っていないため、争奪戦は劇場窓口での先着順となった。1月20日の朝、西友大森店のエレベーターの前は朝9時の段階で20人近くが開場を待ちわびていた。「あの…バーフバリですか…?」「あなたも…?」みたいな雰囲気に包まれたあのエレベーター前は、すでにマヒシュマティ王国民の集会所と化しており、バーフバリブームをこの身で体感しながら、なんとかチケットを手に入れた。マサラ上映初体験ということで席は後ろから4列目の真ん中ブロック通路側。映画と観客を同時に鑑賞するスタイルだ(チケット購入時に話しかけてくださった王国民の皆さまも、その節はお世話になりました)。
ここで、改めて今回の王を讃えるための心得るべき法をおさらいしておこう。前回の絶叫上映との違いを見比べていただけると、イメージがつかみやすいだろう。
いかがだろうか。この危険な禁止事項の数々。しかし、バーフバリを観た者なら必ず夢見て、「バーフバリやってみたww」などという動画をアップロードして炎上するYoutuberが現れないためにも、こういった明文化は必要不可欠なのである。神話の出来事なんでね、良い子はマネしないように。
そして迎えた当日。この日のために用意した装備をおさらいすると、
①金色紙吹雪(2300枚入り)
②ペンライト
③ハンディタイプのほうき&チリトリ
④お片付け用のビニール袋(3つほど)
の4種。楽器やコスプレは諦めていたものの、何とクラッカーを職場に忘れるという痛恨のミスを犯し、劇場で嘆いていたところ、チケット購入時にお世話になった女性からシヴァガミ様のような慈悲深さでおすそ分けしていただき、事なきを得た。
劇場に着いたのは上映開始の1時間前の18時半。人気もまばらで、先日の新宿とは異なる静かな劇場ロビー。開場は19時からとのアナウンスを受け、劇場を見学していると、こんなユニークな仕掛けが待ち受けていた。
劇場側も率先して『バーフバリ』を盛り上げようとする心意気が感じられ、こちらも楽しくなってしまう。インドビール一本買おうか、しかし2時間半の上映前に水分をとるとトイレが近くなってしまう…などと悩んでいると、シヴァガミ色のサリーを着た女性が2名ご到着され、それに次いでヤシの木、インド象、ナンが現れた。
劇場にいたまばらな人だかりは、実はみなバーフバリ待ちだった!しかも開場直前に隠し持っていたコスプレや小道具を解禁したせいで、劇場の空気はますますヒートアップ。静まり返っていた劇場も王国民同士の交流や撮影会で大盛り上がりで、マサラの楽しみ方を心得ている有志の方々の先導が何よりも頼もしい。
ついに開場となった1番スクリーン。入口前では紙吹雪とクラッカーを配布しており、サイリウムやパフパフ鳴る小型ラッパも貸し出していた。なるほど、王を讃えるのにこれほど適した楽器はあるまい。そのため、本編が始まるまで、劇場はパフパフ音の嵐が巻き起こっていた。事情を知らない人が見たらここは動物園かと錯覚するような無法地帯。バーフバリを迎えるセレモニーの準備は万端のようだ。
イベントの醍醐味の一つである前説は、シヴァガミ様に扮した劇場スタッフによる注意事項。これまた映画の内容に即したユニークな前説で、観客もまたクラッカーとパフパフで答える暖かいノリが印象的。というより、本編前にそんなに鳴らして大丈夫か、と言うほどにクラッカー大量持参されている方がおられていて、その豪快さが笑いを誘う。
また、劇場には取材のため日経新聞の方がお越しになっており、上映中の様子を撮影するとのアナウンスが。王国民の民度が試される状況下で、撮影のポーズはもちろん胸に手を当てた王国民ポーズ。その後は、同時刻にマサラ上映を行っていた塚口サンサン劇場との生電話に若干のハプニングが起こりつつも、東西2か所のマヒシュマティ王国による「バーフバリ!」コール合戦、「5・4・3・2・1・バーフバリ!」の号令で、ついに本編が始まった。
前作『伝説誕生』のダイジェストを省き始まった本編。配給会社ツインのロゴ、そして邦題タイトルが映った瞬間、一瞬視界が染まるほどに紙吹雪が投下され、場内はクラッカーの音と硝煙の香りに包まれた。これが本国マサラスタイル…とおののいていては置いてかれてしまう。2300枚&劇場で補充した紙吹雪を惜しむことなく上空に向けて放り投げると、なるほどこれは思った以上に気持ちがいい。インド象を鎮めるためターメリックを撒いたバーフバリと同じ気持ちになれる。
さて、参加型上映スタイルと異常なまでに相性がいい『バーフバリ』の楽しみ方は、先日の絶叫上映in新宿ピカデリーで学んだところだが、その体感度はマサラ上映によってさらに進化すると言っていいだろう。キャラクターの登場やアクションの美しさ、キメ画のカットに名台詞の数々。それらに紙吹雪やクラッカー、楽器、声援で応える観客たち。その相互関係で、映画はもっと面白くなってゆく。
バーフバリやシヴァガミ様、デーヴァセーナはもちろんのこと、特に今回はバラーラデーヴァの人気が強く、アップで映る度に「かっこいいー!」「顔がいい!」との声が挙がった。というか、後方席から「抱いて!」と聞こえてきた時はさすがに笑った。前回の絶叫上映を「アイドルのコンサート会場」と評してはいたが、今回はバーフバリ対バラーラデーヴァの2大トップアイドルによる世紀のコラボレーションと言ったところか。修二と彰か。
加えて印象的だったのは、観客側の洗練された一体感。アクションや名台詞に歓声やクラッカーなどで応える一方で、ストーリー展開へのツッコミや、あえて“ノる”といった行為がよく見受けられた。例えば、「シヴァガミがデーヴァセーナをバーフバリの妻として迎えるのだとカッタッパが勘違いする」シーンでは、「あ~↓」と残念そうに唸ったり、「落ち着いて!」「よく考えて!」と叫んだりと、バラエティ番組のようなノリを打ち合わせもなく共有しており、その調和が見事と言うしかない。これはつまり先の展開を知ってこそ出来るワザであり、すなわちこの日集まった観客たちは複数回鑑賞済みの王国民であることの証左!さらにシヴァ神を讃える挿入歌も(私も含めて)至極当然のごとく歌えてしまうこの民度!バーフバリエリートが集結したマサラ上映の楽しさは、どんどんエスカレートしてゆく。
バーフバリが映り、舞い、台詞を発するごとに紙吹雪が飛び散り、クラッカーやパフパフが鳴り、拍手が場内を埋め尽くす。およそ未体験の鑑賞スタイルだったが、『バーフバリ』はわかりやすく燃えポイントの前には演出の“溜め”があるので、こちらも盛り上がりのテンポが掴みやすい。さらに、拝む、シリアスなシーンでは静まりかえるなどの“わかっている”人たちが織りなす一体感もさることながら、タンバリンや小型の打楽器を持ち込んだ有志による、BGMのリミックスが出来上がっていく様も楽しい。この日一日、一度限りの『バーフバリ』が産まれてゆく、その瞬間に自分が参加していることの至福を、未体験の方にも味わっていただきたい。
物語がマヘンドラの時代に戻ってからは、観客の盛り上がりも最高潮に達してゆく。パドラの首やバラーラ戦車改が映る度に「foooooooooooooo!!!」と歓声が上がり、あの“人間大砲”のシーンでは皆辛抱たまらん!!といった感じで特大のクラッカーと紙吹雪と拍手、爆笑の全方位爆撃が起こり、興奮のあまりここで紙吹雪を使い切ってしまう私。それでもなお休む暇も与えず燃え展開で殴りかかかる『バーフバリ』だが、それに120%一切の妥協無しで応える王国民のスタミナとハートに、目頭が熱くなる。
膝の上に溜まった紙吹雪をかき集めながら、ペンライトと声と拍手、体全体をフルに使って『バーフバリ』と一体になる私。その興奮と喜びを、あの日一緒に王を讃えた方なら共感いただけるだろうと思う。こんな楽しい映画体験があっていいのか…と茫然とするしかなかった新宿ピカデリーでの絶叫上映。それをさらに上回るマサラ上映の熱と狂気の宴。これを味わってしまっては、もう戻れない。
クライマックスはバーフバリとバラーラデーヴァ、両雄を慈しむように讃えつつ、エンドロール後は劇場が一体となって「バーフバリ!」コールで締め。あの呆気ないエンドロールでは終われない、この時間がもっと続いて欲しい。そんな思いが籠った王の名は。大合唱で、今回も終えることが出来た。
こちらが本編終了後の床の様子である。我に返ると、何と恐ろしいことをしたものか。公共の施設で紙吹雪をぶちまけ、使い終わったクラッカーが散乱し、辺り一面が大変なことになっていた。なので、お片付けまでがマサラ上映、というのがルール。劇場スタッフが箒とチリトリ、ゴミ袋を配布したり、各自持ち寄ったお掃除道具で清掃を行った。これがまたいかんせんとっても楽しい。何せ2時間半を一緒に過ごした仲間との共同作業なわけで、映画やマサラ上映の感想を語り合いながらのお掃除は終始和やかなムード。時間も22時を周っており、帰りが遅くなること必至だったものの、我先に帰ろうとする方がいなかったのも印象的だ。あれだけの地獄絵図だったにも係わらず、床から紙吹雪が綺麗さっぱり無くなった時は、達成感すら覚えるほど。
かくして、人生初のマサラ上映体験は、至福の時間と言う他なかった。各々が自由なスタイルで、時には一体となって、映画を盛り上げる。その方法の過剰さは『バーフバリ』という映画そのものの魅力とベストマッチしており、臨場感は格別である。
こちらのキネカ大森では、2/3に前作『伝説誕生』との2本立てを予定しており、バーフバリ熱はまだまだ続くだろうとのこと。完売となってしまった上記2本立てに続き、もっとマサラ上映を開催していただきたい。その際は、こちらの拙文が参考になれば幸いである。
マサラ上映に必要なものは以下の三つ。
①紙吹雪やペンライト、楽器などの思いつく限りのパーティグッズ
②作品を愛する心
③おそうじ道具
これらがあれば、きっと最高の一体感を得られること間違いなし。マサラ経験者や劇場側が盛り上がりを先導してくれるため、機会があれば躊躇なくご参加いただきたい。
最後に、キネカ大森様、日経新聞様、配給会社ツイン様、あの日一緒になって王を讃えた王国民の皆さまに、改めてお礼申し上げます。『バーフバリ』という映画との新しい向き合い方を知るきっかけをくださった方々には、感謝の言葉しかございません。
SNSでの評判が後押しして次々と公開館数が増え続ける今、次なるマサラ上映の実現を願って、今回のレポを締めさせていただきます。お読みいただきましてありがとうございました。
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