『プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第2章』逃げる場所など、どこにもなくて。
毎度毎度、祝日の木曜公開、本当にありがたい。王族に謁見するのだから国民の祝日になるのは正しいし、何より“噛みしめる”時間が必要なのだ。わずか60分にも満たない映画に、心を乱されている。
生き方を選べない者たち
王位継承第3位のリチャード王子の暗殺未遂、そしてケイバーライト爆弾の強奪。王国と共和国のパワーバランスが揺らぎ、戦争への火種が燻る中、白鳩の面々は爆弾の奪還に挑む。プリンセスの実家事情が少しずつ明かされ、「Crown Handler」たちの物語がいよいよ幕を開ける第2章。
本作で印象的だったのは、王族として生きることの息苦しさだ。リチャードは命を狙われ、エドワードは公務に追われ、メアリーは子どもらしく生きられない。そして何より、プリンセス(アンジェ)はその因習によって縛られてきた過去があるからこそ、メアリーを助けずにはいられない。幼くも公務を全うしなければならない重圧に表情を曇らせるメアリーに寄り添うプリンセスは本当に姉のようで、その慈しみの裏に隠された彼女の血の滲むような過去、国と家族に嘘を吐き続けて生き永らえてきた者の「覚悟」を、神の視点から眺める観客は悟ることになる。
むしろ、それこそが第2章のテーマなのかもしれない。第1章では、ビショップを通じてスパイを続けた者の末路をアンジェらに突き付けたように、今作ではただ王族であるというだけで自由を制限され、命まで狙われてしまうことの恐ろしさを、プリンセスと観客は今一度思い知ることになる。クライマックス、とある事件によってプリンセスの「女王になる」という夢は確かに近づいた。しかし、そのための犠牲はあまりに惨たらしく、同時に彼女にも死が近づいていることに他ならない。すでに火は点けられた爆弾が側にあるのに、逃げられない。彼女に王位継承者の資格がある限り、その命は標的であり続けるのである。
ケイバーライト何なの問題
白鳩の奪還目標であるケイバーライト爆弾。共和国から王国に持ち出され、王族への襲撃に使用することで共和国に嫌疑を向け、やがては戦争突入の口実となるであろう、危なすぎる代物。巨大化したCボールの見た目をしたそれは、作品により不穏な意味合いを濃くしていく。
冒頭での実験シーンで明らかになるように、ケイバーライト爆弾は原水爆がモチーフになっているし、Lによる「抑止力であって火種ではない」という台詞の通り、兵器の所持こそが国家間の均衡を保つために不可欠であるという考えは作中世界でも通底している。ゆえに、実際にそれが使われたとしたらとんでもない国際問題になってしまう。白鳩は、またしても世界の命運を託されたのだ。まだ若い少女たちなのに……。
そして、それが原水爆であるのなら、ケイバーライトは「可視化できる放射能」の液体とも見て取れる。TVシリーズでは「ケイバーライト症候群」に苛まれる少女が描かれ、やはり人体に悪影響を及ぼすらしいことが示されている。重さを無効化し、爆弾の材料にもなり、身体を蝕む謎のテクノロジー。果たして、アンジェはCボールを使い続けて無事なのだろうか。スパイを引退後、目の見えないアンジェはカサブランカで療養の日々、なんてのは御免被りたい。あそこは安寧と幸せの象徴であってほしいから……。