シャニマスのアニメ 2nd season 第1章を観たぜ。
ドーモ、伝書鳩Pだ。
アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ 2nd season』の先行上映第1章を観てきたぜ、という実に長ったらしい前置きが出来ることを、嬉しく思う。前回からの公開スパンを鑑みるに元から決まっていた2ndだとはわかってはいるが、計2クールにも及ぶ話数で、しかも担当ユニットまで劇場の大スクリーンで拝める機会をいただけたのは、アニメの内容がどうであれまずは喜ぶべきことだ。
ありがとう、高山パパと、池田Pと、まんきゅう監督と陽一神とすべての関係者各位様。おれの中の“世界一可愛い私”こと黛冬優子は今日も銀幕の向こうでめちゃくちゃ可愛かった。どうだ、参ったか、同業諸君よ。
※以下、現在劇場公開中、及び地上波放送が予定されている
TVアニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』のネタバレを含む。
まずは雑に、1st(以下、1期と呼称)の内容を強引に要約するのなら、283プロのアイドルたちがW.I.N.G.での敗退を受け入れ、その先にある景色へと羽ばたく瞬間を、現実における『シャニマス』の1stライブ「FLY TO THE SHINY SKY」を再演することで“もう一度”スタートラインを超えていく、そんな物語であった。それに至るまでの話運びや演出に対し、個人の好き嫌いを伴う戸惑いや疑問なども含め賛否が別れたことは事実だが、これまでのシャニマスの歩みを知ればこそ心が動かされたり、涙したりしたことも、おれにとっては偽らざる本音であった。
その先の景色を描く 2nd season(以下、2期と呼称) では、現実のライブがそうであったように、283プロに大きな変化が訪れる。ストレイライトの参戦だ。
ストレイライト。パフォーマンスの激しさや精度はライブを重ねるごとに進化を続け、ユニット内でバチバチと火花を散らしてきた三人の迷光は、鮮烈な光となって新たな虹の一色に加えられた。今回のアニメでも、彼女たちが実装された当時の衝撃を思い出させるような、こだわり抜かれた見せ場が序盤に用意された。
高層ビルの屋上に、緊張感を漂わせる三人の少女を、ヘリコプターが追っていく。まだまだ芸能界全土への影響力も資金力も最大手ではないであろう283プロが、ちょっとどうかと思う予算を費やしたであろうストレイライトのデビューライブ生配信。センターに立つ少女の瞳が変わった瞬間、渋谷の街の人々の歩みが止まった。
シャニアニ1期は、抑制的で過度に観客の情緒を煽らない作風が持ち味であり、弱点でもあった。しかしストレイライトは、その定石に風穴を開ける。激しいロック調の音楽と共に、デビュー曲『Wandering Dream Chaser』への期待を掻き立て、極めつけが冬優子が発した「負けない」という台詞だ。その言葉の真意は、次のエピソードで明かされる。
……明かされるのだが、まさかあの『Straylight.run()』の映像化をやってのけるとは、まったくの想定外だった。シャニアニにおいて、enza版のコミュをここまで明確に原作としたのは、これが初めてのこと。こういうところも大番狂わせが得意のストレイライトらしいが、このエピソードチョイスは的確だ。冬優子があさひ、愛依と出会い、一つ一つの衝突に自分なりに折り合いを重ね、しかしついに爆発する。「ふゆ」を脱して「冬優子」であることをメンバーにさらけ出すことの重要さは、劇場まで駆けつけたPには説明不要のはずだ。この時初めて、三人はストレイライトになる。
このエピソードが前日譚として在るからこそ、1話のあさひと真乃の会話に深みが増していく。あさひは、この一件を通じてただアイドルであることや、より正確なパフォーマンスをすれば人を惹きつけられるわけでもないし、自分が正しいと信ずることが必ずしも正しく受け入れられない“馬鹿馬鹿しい世界”に自分が立っていることを学んでいる。だからこそ、彼女は無邪気に、興味本位であのような言葉を投げつけられる。「真乃ちゃんは、どんなアイドルになりたいっすか?」と。
この問いは、おそらくは今回の2期を貫く、真乃個人の課題となるだろう。1期では叙情的すぎて、なぜ彼女がプロデューサーのスカウトを引き受けアイドルになったのかについては、受け手が台詞の外から読み取ったり、enza版を副読本にする必要があった。それを踏まえて、今回真乃はあさひの言葉を受けて、なぜアイドルになったのかを、ようやく言葉にして自分の中で咀嚼していく。次に、1期で283プロのアイドルたちのセンターを務め、そのことをオーディオコメンタリーの収録という形で振り返るほどに成長した彼女の次のステップが、「どんなアイドルになりたいか?」なのだろう。
あさひの言葉は、内気で周りに譲ってしまいがちな性格の真乃の根幹を(おそらくは無意識的に)揺さぶり、少なからず動揺を与えてしまう。後のユニットシャッフルでの企画をまとめる際も、今日こそは意見を言うぞ!と意気込んでも、どうしてもあと一歩勇気が出ない。余談だが、そんな真乃の不安を察し受け止めてあげるのが千雪と智代子という人選も、1期でユニットの結束を描ききったことから生まれる自由度を感じさせる。
真乃がいずれどんな答えを出すのかは後の話数に預けるとして、今回のハロウィンライブでの彼女の目標は「みんなと一緒に頑張りたい!」であり、それはしっかり果たされたと言うべきだろう。何にせよ、あさひは「アイドルとは何か」を模索しながら予想不可能な場所へ走り去っていく自由さがあり、その在り方が真乃の意識に変革を与えることで、2期のゴールらしきものが薄っすらと見えるようになる。
シャニアニが今回ようやく「enzaシナリオのアニメ化」に振り切った一方で、このようなユニットを跨いだ触れ合いによって既存メンバーにもいい意味での波風を立たせるという独自の要素の開拓にも挑んでいる。1stライブという結果、いや「史実」へと向かっていくことで感動しこそすれ、意外性もなく着地した1期とは見違えるように、今のところ2期はスリリングで、面白い。そしてその輪の中にノクチルが加わっていくのだ。どうしたって、期待せずにはいられない。
意外性、サプライズという意味では、今回の4話で描かれるハロウィンライブが全編その通りであった。作中の観客の反応から察するにオールシャッフルユニットでのライブであることは事前に告知されていなかったという高山PのシャニPの暴挙に戦慄しつつ、全4つのユニットがパフォーマンスするED含め全5曲は、なんとオール新曲。1期は既存楽曲+『ツバサグラビティ』で乗り切らざるを得なかったことを思えば、驚くほどの大盤振る舞いだ。
ジャンルの異なる4曲が矢継ぎ早にお披露目される展開、全く未知の楽曲が曲名と共に明かされ、283プロのアイドルたちがそれぞれ持ち寄ったコンセプトに沿って独自の世界観を披露していく様子は、これまでのシャニアニを振り返っても底抜けに楽しく賑やかで、初めて応援上映への参加も検討したほどだった。作中で彼女たちが掲げる「HAPPY」の想いは、しっかりと受け取ることが出来た。しかもその光景をノクチルの4人が見守っているというところも、ドキドキが止まらない。樋口円香がこの日をどう振り返るのかを想像するだけで、恐ろしくてたまらない。
そして嬉しくもあり恐ろしくもあるのだが、どうやらこの2期の正念場はおそらく次回に待っている。素直にこの予告映像の内容を受け取るのなら、アンティーカの感謝祭に、『薄桃色にこんがらがって』と『天檻』の映像化が控えているらしいことがわかる。個人的にも最もシャニマスに心血を注いでいた時期の名シナリオが、アニメという形で再演されたらと思うと、今の気持ちはもはや楽しみだとか早く観たいなどの言葉では言い表せない。
1期の不評を(全てではないにせよ)跳ね飛ばすほどのエンタメ性を有して離陸したシャニアニ2期が、最終的にどのように着地するのかは、今はまったく予想がつかない。『Straylight.run()』の映像化がされたということは今後「どのコミュがアニメ化されてもおかしくない」という意識をもって、このアニメと相対しなければならないからだ。次の公開に対して怖いという感情が芽生え始めてきたことが、この第1章最大のサプライズと言っていいだろう。
この恐怖が喜びに変わるのか、それとも。その答えは、1ヶ月後までお預けだ。