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火遊びの代償は重い『女と男の観覧車』

 ウディ・アレン、好きですか?と聞かれ、「大好きなんです~特にカフェ・ソサエティとマッチポイントとか~♪」みたいなこと言ってオシャレ映画通ぶっててすみません。よくよく思い返したらこの2本しか観ていませんでした。すなわち、これで3本目ですね!好きなんですよウディ・アレン~♪

1950年代のニューヨーク・コニーアイランド。その遊園地内のレストランでウェイトレスとして働くジニーは、再婚同士で結ばれた夫ハンプティと、自身の連れ子であるリッチーの3人で、観覧車の見える部屋に暮らしていた。ある日、ギャングと駆け落ちし音信不通となっていたハンプティの娘キャロライナがジニーの家を訪ねてきたことで、ハンプティは娘に真っ当な人生を送らせようと奮闘する。そんな最中、ジニーはライフガードの青年ミッキーと不倫の恋に興じていた。

 遊園地といえば奇想天外なアトラクションや風変りな見世物が目に物珍しく、現実のアレコレを忘れさせてくれる、ステキな場所である。しかし、ジニーにとっては観覧車が見える家も外から響く射的の音も、ちっとも楽しい気持ちにさせてくれるものではない。才能溢れる元女優(本人談)としての過去は過ぎ去り、今や薄給のウェイトレス。夫は酒を飲んだら暴れるし、息子は学校をサボり映画館通いで、どうやら火遊びを覚えたらしい。その上、ギャングに狙われているとかいう夫の娘はバイトでも皿割ってばかりで使い者にならない。ここまで行き詰った人生はなかなかお目に掛かれない。

 悲劇と喜劇は紙一重、という真理を思い出させてくれる本作『女と男の観覧車』は、ブラックコメディと呼ぶにはあまりに胃が痛いほどに、どうしようもない人間ばかり登場する。主人公は偏頭痛持ちで怒りっぽく、嫉妬深くて不倫もしている。色彩豊かなポスターイメージとその横たわった美しい姿は、鑑賞前と後では大きく印象が変わるだろう。

 その相手役を務める不倫相手のミッキーを演じるのは、ジャスティン・ティンバーレイク。ハンサムで劇作家を目指す大学生、なんてロマンティックの塊みたいなキャラクターを嬉々と演じており、彼がこの物語の語り部として、スクリーンに向かって情感豊かに語りかける。本を読み教養もある、まさしく映画から抜け出してきたような男。そんな彼も許されぬ恋に手を出したが最期、傍観者ではいられなくなり、映画の後半から語り部の座を剥奪されてしまう。蚊帳の外から覗き見ることを許さない姿勢が、監督の持ち味か。

 お世辞にも褒められたような人は一人も登場しない、すさまじく荒れ狂ったウディ・アレン最新作。幻想的で美しい映像とは裏腹に、人生はいつだってほろ苦く、しんどいもの。思わず絶句のラストカットの切れ味が描くどん詰まり感を、あなたは笑い飛ばせるか。



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