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【G.R.A.D.】誰かのためじゃない、 あなた自身の願いのために 【大崎甘奈】

 ドーモ、伝書鳩Pです。GRAD、忙しい忙しいと後回しにしていたら、7月10日にはストレイライトも追加されてしまい、ノクチルを除く全ユニットのシナリオが実装されることになる。シャニマスのシナリオはどれも秀逸で読み応えがある分、咀嚼にはかなりのカロリーと時間を要するため、万全のコンディションで挑まなければならない。さぁ、今日は誰のシナリオを読もうか。

 そういえば、今朝は桃のゼリーを食べた。桃、といえばアルストロメリアだ。よし、今日は甘奈のシナリオを読むとしよう。そんな日曜の遅く起きた朝、おれは一文目から目を疑った。

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 開幕から、核弾頭級の地雷を踏んでいくトレーナー氏。大崎甘奈にとって「アルストロメリアではない」ことがどれだけ重たい言葉か。そしてそれは、我々プロデューサーがこれまで見て見ぬフリしてきた、大崎甘奈と「アイドル」への向き合い方の根底に存在しているある問題を浮き彫りにしていく。

甘奈ね、今しかできないことを全力で楽しみたいんだ☆

 ファションと自撮りを嗜む今どきの女子高生で、お姉ちゃんの甜花ちゃんが何よりも大好きな甘奈。そんな彼女がアイドルを目指したのも「甜花ちゃんのかわいさをみんなに知ってもらいたいから」という初期衝動によるもので、アイドル活動の動機を他者に預けたまま階段を駆け上がっていくことになる。そんな中、甜花が成長し変わっていくこと、ひいては自分が置いていかれる/自分から離れていってしまうことの不安に囚われ、失敗することへの恐れを日に日に増していく甘奈。そんな彼女の心配をプロデューサーが解きほぐし、W.I.N.G.のステージで満員の観客に迎えられた甘奈は「アイドルやっててよかった…!」と心中を語る。こうして一人のアイドル、大崎甘奈が誕生した…はずだった。

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 自分が一歩前に進むこと、環境や人との関わり合いが変化することに、甘奈は恐怖していた。先日配信され、アルストPのみならず全283Pを震撼させたイベントコミュ『薄桃色にこんがらがって』はまだ記憶に新しいだろう。「これまでのアルストロメリアでいられなくなる」危機に直面した三人はそれぞれに深い悩みと葛藤を抱えながら、千雪は過去の夢と向き合い、甘奈と正面からぶつかり合うことでようやく望んだ形に戻れたはずだ。だがそれは桑山千雪の視点から見た結末であり、大崎甘奈はまだ、甜花や千雪を対等なライバルとして見えていなかった。どこかでまだ、アルストロメリアという関係性に依存していたのである。

 「アルストロメリアの大崎甘奈」ではない、一人の「アイドル・大崎甘奈」としての価値をお客さんに提供しなければならない。じゃあ、私の価値って何だろう。その答えにたどり着けないまま甘奈は「いつも通り」を演じ続け、プロデューサーにもその心中を明かそうとしない。一体自分が何を恐れているのか、それさえわからないまま、仕事とレッスンをこなすも、やはり目に見えて甘奈は精神的に摩耗していく。

 甘奈の特徴として、人を頼ったり甘えたりすることが出来ない、ということが挙げられる。幼い頃から甜花ちゃんの面倒を見ていただろう甘奈は、「自分がしっかりしなきゃ」という意識が強いのだろうか、姉である甜花、大人である千雪やプロデューサーに悩みを打ち明けることができない。それどころか、悩んでいることを気づかれたくないとさえ感じ、より殻に閉じこもってしまう。

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 甘奈の様子に気づくプロデューサーだが、甘奈が話したがらないことには踏み込まず、代わりに甘奈の得意分野であるファッション系のお仕事を獲得してくる。だがそれも、甘奈を追い詰めてしまう。「甘奈はファッション系が得意」という他者からの評価さえ、今の甘奈には自信へと繋がらない。

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 自分の強みも価値もわからないまま、なんとか仕事をこなしているだけの今の甘奈にとっては、プロデューサーの健闘も溝を深めるだけだった。それでも甘奈は「大崎甘奈」を保つために、練習に挑む。それが自分を追い詰めるとしても、大崎甘奈でいられないことだけは許されない。そして、悩みは何も進展しない。

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 ついにプロデューサーは、甘奈に直接呼びかける。そこで返ってきた答えは、悲痛なものだった。

甘奈は……ずっと、無責任なの……

ひとりでお仕事する覚悟もないのに……!
できるふりして…!

ずっと…みんなに嘘ついてるみたいで……

自分で始めたはずなのに……
途中で、つらくなって……

……ずるばっかりなの……

 甘奈とて、アイドルとして確固たる指針がないことや、他者に依存したまま活動を続けていることに、何ら後ろめたいことを感じていないわけではない。それでも、これまでの成果や期待が降りかかってきて、甘奈はそれを裏切れない。精一杯お仕事をこなして、求められた結果を出す。そしてこれからも、みんなの期待に応え続けなきゃいけない。そうじゃないとー

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 甘奈は「ずるい」自分を本当は嫌悪していて、だからプロデューサーに心配されたくなかった。優しい言葉じゃなくて、叱ってほしかった。いっそのこと、失望してほしかった。出来ない子だって、言ってほしかったのかもしれない。あのトレーナーの一言から、甘奈はこんなに苦しんで、自分を責めていたなんて。その心情を思うと、キーボードを打つ気になれなくなってしまう。

 ここで本当にプロデューサーが素晴らしいのは、甘奈が本当に必要としているのは「助け」であることを見抜き、それを実行したことにある。甘奈は確かに弱くて、ずるいかもしれない。でも、それを受け入れてくれる人もいる。良いところも悪いところも受け入れて、進む道を指し示してあげること。それがプロデューサーの仕事であるとすれば、今回もまた最適解を導き出した。シャニPイケメンシリーズにまた1ページ。

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 甘奈が元から抱いていた悩みや苦悩とは、人から嫌われたくない、失望されたくない、というもの。だからこそ甘奈は与えられた仕事を懸命にこなし、そのために練習に励むことができる。ただしそれは「誰かが望む甘奈像」に縛られるだけで、甘奈の本当にやりたいことから外れたり、やりたくないことが目立つ結果になってしまう。それでも、一度背負った期待は裏切れない。だから努力する。自分を追い詰めてでも。

 そうすると、「甘奈は出来る子」として他者から認識されていく。ファションが得意で、明るく元気な女の子。きっと現場でも重宝され、その結果海外ブランドの日本展開モデルにまで選ばれてしまうほどの成果を積み上げる。すると必然、甘奈の中には「努力してなんとかやり遂げた自分」と「出来る人という他者からの評価」との間にギャップが生まれ、生まれ持った性格ゆえに甘奈はそれを裏切れず、もっと努力する。だが、そこにはいつか限界が訪れることを、彼女自身が感づいている。そして「出来なかった」ことが増えていったら、自分が必要なくなってしまうかもしれない。「誰かが望む甘奈像」から外れてしまったら、大崎甘奈は必要なくなってしまう。その恐怖に、甘奈は支配されていた。

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 これまでのコミュで描かれていた「変化や前進を怖がる」といった甘奈像の根底にあるものが、今回ようやく明かされた。変化を恐れるという感情は誰しも持ち得ることで、普遍的なものといってもいいくらいだ。だが甘奈はその傾向がより強く、その奥底にあったのは嫌われたくない/失望されたくない/他人の期待を裏切りたくないという思い。だからこそ甘奈は、自分の限界を超えて頑張るということから逃げ、挑戦することから逃げていた。変わることで他者の期待から逸れ、価値がなくなってしまうのではないかと思ってしまったから。そんな思いを抱えながら17年間生きてきたと思うと、これまでの笑顔さえ切なく感じてしまう。

 だからこそ、今の自分が安心してそこにいられる「アルストロメリア」が大好きで、守りたかった。ましてや、自分が原因で今の関係性を壊すなんて、あってはならないことだった。それが『薄桃色』における甘奈の真相であり、偽りのない気持ちだった。そんな自分を「弱い」「ずるい」と責め続けながら、彼女はユニットという楽園に居座り続けた。

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 そこから一歩踏み出す勇気をくれたプロデューサーと、大好きな甜花ちゃんと千雪さんと一緒にいたいから、「停滞」ではなく「並び立つ」ためにGRADに挑む。シード枠が事前に与えられていた「アプリコット」でもなく、ユニットの力も借りないたった一人でステージに立つ。自分だけの魅力を持った、唯一無二のアイドルであると証明するために

 ここにきて、ようやく甘奈は自分のために闘う決意を固めるに至った。誰かが望む甘奈になるためでなく、甘奈自身がなりたい甘奈になるために。そのための不安を、プロデューサーは優しく肯定する。

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 これまでどこか依存的だった甘奈の在り方が変わろうとするとき、そばにいてあげるのがプロデューサーの務めだ。その不安に真剣に向き合い、彼女を肯定して受け入れてあげる。だからこそ甘奈は、羽ばたく勇気を手に入れることができた。

 今回のシナリオの白眉は、『薄桃色』でも繰り返し口にしていた「アルストロメリアでいたい」という言葉が、甘奈の中で大きく変化しているところにある。大好きな甜花ちゃんや千雪さんと一緒にいられるセーフティとしてのユニットというとらえ方の強かった従来の甘奈と異なり、今回のシナリオを経て「前に進み続ける甜花ちゃん千雪さんと一緒に輝くためのユニット」として意識を改め、そんな彼女たちと並び立つために自分だけの個性を得てアイドルに向き合っていくことを決意した甘奈は、もうこれまでのように自分の行動の動機を他者に依存することはなくなるだろう。『薄桃色』でも前に進めなかった大崎甘奈が、本当にアイドルになるお話。それがG.R.A.D.大崎甘奈編の感動的なラストシーンだ。

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「えっ、もうここで終わってよくないですか?もう4,000字超えてますし、読む人も疲れてるでしょうし。ネタバレですしね。解釈は人それぞれって言うじゃないですか。別にPラブ論争に加担する気はないですし、そういうのは二次創作で……なに、これ公式?公式からの供給だから受け入れろ??いやいやそんな横暴な…おい待ってくれ、その銃を下ろしてくれ。わかった、わかったからお互い冷静になろう。こっちも大人だ。譲歩する。※あくまで個人の見解ですを添えて、お気持ちを自由に述べるってのはどうだ。これならそちらさんも満足でしょう?……ハイハイ、わかりましたよ。どうにかなったら命だけは保証してくださいよまったく。デリケートな案件なんですから…」

G.R.A.D. 優勝後コミュ ネタバレ注意
※あくまで個人の見解です

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(以上です)
(お疲れさまでした)

いやいや、大崎甘奈ちゃんが好きなのはぼくなので
G.R.A.D.千雪編もまた「価値」について悩む話で、プロデューサーがアイドル個人の「ありのまま」を受け入れるお話でした。G.R.A.D.は個人の能力が問われる大会ゆえにユニットから離れた個人の物語にフォーカスするんだなと気づかされました。


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