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『ファッションドリーマー』をやっていて思う。おれがこの世で一番カワイイ、って。

 「ガルモ」「ガルモの新作だ」とフォロワーが騒ぎ立てていた『ファッションドリーマー』というゲームを買った。

 どういうゲームかは、こちらの動画なり公式サイトを観てくれればいい。要は無数に用意されたアイテムからコーデを選び、自らを着飾ってそのセンスを全世界に届け、いいねとフォロワーをかき集めカリスマファッションドリーマーになること、ただそれだけのストイックなゲームであること。それ以上の知識はいらない。

 というか前置きなど不要だ。仮想空間“イヴ”におけるおれの姿を見てくれ。そしていいねを押して、おれのファッションを真似さえすれば、おまえは今日からカリスマファッショナブルインフルエンサーになれる。ホコリと硝煙まみれのルビコンでも、広大なハイラルでもない、おれたちの真の楽園は、ここにある。

おれはカワイイ女の子になりたい。

 『ファッションドリーマー』をやっていると、今まで感じたことのない欲求が、心の奥底から湧いてくる。カワイくなりたい。カワイイ女の子になりたい。みんなから「カワイイ」って言われてチヤホヤされたい。あぁ、なんで現実世界にはイヴがないのだろうか。

 当初、このような着せ替えゲームを楽しめるのか、不安だった。そしてその不安は、一時間もイヴにいたら、嘘のように晴れてしまう。本来ファッションとは自由なものだが、自由を謳歌するにはお金だったり知識だったり、もっと言ってしまえば自分の体格や顔やキャラクターとの相性とか……そういう諸々を気にして結局「無難」に落ち着くのが現実のおれのファッションである。奇抜にもならず、ある程度の清潔感だけ整えて、「アウターと靴の色を揃えておけばええやろ」以上のことを考えたことはない(そして知り合いのギャルに「古い」と言われた)。

 ところが、仮想空間イヴでは、というかビデオゲームならば、そういった心配とは一切無用だ。本作は自分のアバター(ミューズと呼ぶ)の顔と体型と髪型などを細かく決めることができ、好きな容姿で世界に降り立つことができる。あとは数えきれないほどに用意されたアパレルから、好きなものを着て、街を歩いたり、映える写真を撮れば良い。ストーリーもなく、ゲーム上の目標を自分で立てるタイプの作品であるため最初は困惑するが、慣れてしまえばファッションドリーマーはゼルダ級の時間泥棒に様変わりする。

 あぁ、お金も自分の容姿も気にせず、着たい服をワガママに選ぶことは、こんなに楽しいのか。自分に合った服を選ぶのもいいし、服に併せて自分の身長を伸び縮みさせることも、性別すらも変えることだってできてしまう。このシャツはどんなジャケットと合わせてみようか、ちょっぴり色を冒険した靴をクラフトしてみようかと、思考と実践を繰り返しながらいくつもの「格好いい/可愛い私」が出来上がる。あとはドローンを飛ばし、あざといポーズだったりタピオカ飲みながら自撮りして、加工して、アップする。さすればフォロワーがどんどん増え、自分のコーデにいいねが殺到する。気持ちいい。圧倒的全能感。容姿を褒められるのって、こんな快感なんだ。

 そして同時に想うのだ。格好いい、可愛いって、無敵なんだ、と。画面の中のおれは、どんなに贔屓目に見てもイヴの中で一番、いや世界でもっともカワイイ。それは、生きる上で何よりの自信になるだろう。街を歩いていても、いつだって自分が主役になれる。服を選ぶということは、自分で自分のモードを作る、そういうことなのだ。

 「服を着せ替えるだけのゲームの何が面白いのか」と思っている方もいるだろうが、実はそういう人ほど『ファッションドリーマー』は向いている。現実なら着てみようともしなかったコーデや色に対して、少しずつポジティブになったり、服を選ぶことが楽しくなったりする。現に今、私は隙あらばswitchを起動し自分のコーデへのいいねに一喜一憂したり、街で見かけたファッションを真似したり他のファッションドリーマーのマイルームを訪れてはいいねを押しまくっている。もっとたくさんのアイテムを、まだ見ぬ組み合わせを、身体と心が求めてしまっている。現実では満たせなかった欲望をインスタントに叶えてくれるという意味で、劇薬のようなゲームだ。

 正直、こんな文章を書いている時間すら惜しいので、今日はこの辺で失礼する。みんなも今すぐ『ファッションドリーマー』を買って、自分の新しい可能性に出会ってみよう。おれとファッションバトルで勝負だ!

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