仮置き場、または最終処分場
1
酷暑には思い出されぬ故郷を厳寒の日にふと懐古する
夕方の駅は困憊した人を指嗾し喰らう怪異のようで
給湯の温度を1°C上げた朝 秋晴れの空、青は遠くて
私には見えない微かな星たちもまた、網膜を静かに照らす。
茂るビルが月を切り分け食べるから、私は月を見れないままで
火傷した舌を口蓋に押し当てる 一人で冬を感じてる夜
家にあるティッシュが全部なくなった 今日は耳の裏まで洗おう
2
「それこそが生の実感よ」 夜、食道をのぼるニンニクのかおり
僕たちは心の間のエーテルで互いの心を伝えられるか。
君と僕もあの電荷のようにポテンシャルエネルギーを持っているかな
カラオケで夜を明かして、明け方のサンリオピューロランドを見に行く。
耳に入った水を抜くために半裸でブオンブオンと頭を振る
「三月で仕事を辞めようと思う」 みかんで黄色くなったささくれ
感染拡大防止のため、この座席には座らないでください。
2022年9月〜12月