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【詩】Raise your flag!!

映画だったか、小説だったか、近所の小さな美術館の絵だったか、骨とう品だったか、あいつの成功だったか、失敗だったか、あの娘の笑顔だったか、ともかく、そんな日常的な形をした探査機が俺の胸の奥深くまで沈んで行った。

馬鹿な話だが、その探査機が、まっくらで何も見えない水底で、昔俺が捨てた「旗」を拾ってきたんだ。

もうさ、塗装もはげ落ちて色なんてないんだよ。
傷だらけのボロボロで、ちょうど手に持つところあたりで折れかけてやがる。

最初は「何でこんなゴミみたいなものを」と思ったんだが「あぁ、これ、嫌気がさして俺が折ったんだったな」なんて思いだして、それを触って、撫でまわしているうちによ、懐かしくなってきやがって。真顔でじっと見つめたりなんかして。

なんだかもう一回だけ、そいつを力いっぱい握りしめたくなってよ。折れかかってささくれ立った箇所を黒歴史と一緒にぎゅうぅ、、っとやると、血が出てきて。

痛いけど手が痛いくらいなら、この旗を捨てる方がもっと痛かったじゃねぇか。なんて思ってやんの。

そしたら「旗」が何か叫んでるような気がしてきて。
「助けて」「助けて」なんて声まで聞こえてきやがる。いかれてるぜ。

あぁ、ちくしょう。なぁ、どうか笑ってくれよ。ずぶぬれで、ボロボロになったその「旗」をよ、もう一回刺してやろうかって、今そんな気分なんだ。

なぁ、やっぱり笑わずに聞いてくれよ。
旗が乾いたら、折れたところをきれいに包帯巻いて、すぐにでも頭のてっぺんからズブズブ差し込んで、無意識の山頂に掲げようと思う。君たち観光客が記念写真を撮る、山の一番目立つところに。


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