雨の日の曲がり角 ポエム
あの日も
雨が降っていた
小雨かぁ
散歩にでたいけど・・・
傘をさせば大丈夫かな
朝からずっともやもやと
ある人の事を考えていた
もう何年も経ってるのに・・・
あれは・・・・
銀座のメインストリートから1本入った、
路地裏にあるお店から出た二人
振り向きもせず、お互い違う方向に歩て行った
アン・ルイスの歌の文句じゃないけれど
あなたは右へ
私は左へ
振り向いたら負けね
それが最後だった
もう何年たったのだろう
ずいぶん昔のような気もするし
ついこの前のような気もする
いや、嘘だな
この前のような気がするなんて嘘だわ
やっぱり
私の中では遠い昔の景色になってる
別れる間際に、お店を出る直前に
あなたは言った
「大丈夫 どんなに離れていても
きみが本当に困って迷子になった時には
必ず迎えに行くから」
その言葉は優しさからなのか
その場しのぎのセリフだったのか・・・?
どちらとも取れなかったけど、
いつまでも私の記憶の中に
留まっていた
あれから
ずいぶん時が流れて・・・
あの日、私は雨の中、
傘をさして散歩に出ていた
東京なのに、
この町だけは開発という言葉から完全に取り残された
昭和の匂いがする町
私がこの町に住んでいることなんて知らない
あれからもう何年もたつし
知らせてもいない
ここがわかるはずはないもの
私はこの町でずっと一人で暮らしてきた
それでも
心の中で
ずっと待っていたような気がする
あの日は
今日のような雨の日、
水たまりをじっと眺めて
この水たまりの中に入って
消えてなくなりたい
水たまりが底なし沼のように見えたっけ
その時、思い出していた
最後の言葉を
あの曲がり角を曲がったら
あの人はいるかもしれない
ふと
そんな気がした
ドキドキしながら
いるわけない
今日だっているわけない
えッ?
黒い大きな傘をさして
あなたが立っていた
「いくら何でも、水たまりにはきみはデカすぎて、入り切れないだろう?
迷子になった? ちゃんと 迎えに来たよ」って
真面目な顔をして立っていた。
そこで
目が覚めた
もうあの人はいない
来れるわけないんだもの