朱夏に追憶、その後の今
朱夏の知らせ
いつの間にか。夏がはじまっていた。
撮った写真を見ると、だんだんと暖かくなっているのを感じる。夏が来るんだ。
朱色の太陽、その下で私はバイトのために自転車を走らせている。住宅街から低いビル街まで進んだが、赤色の信号を見て、止まった。生温くなった肌の上の日焼け止めはまだ肌に密着できている。さすが、1000円超えの日焼け止めだ。と思いつつ、青が見えたので進んだ。
大丈夫私には欲しいものが沢山ある。疲れるバイトだって、乗り切れる。眠くても辛くても、その後に得るものがいくら小さな幸福でも、それが幸福なら、取りに行くしかないよね。
バイトが今日も終わった。1日のミスを数えてから考え込む。
帰り。
正直、バイトは辛い。けど、先輩もみな同じように成長してきたみたい。覚えなきゃいけないマニュアルの膨大さ、お客様にフレンドリーに対応するための柔軟性、何時間も動き回る体力。そのどれもが私には足りていない。悔しい。だからやる。明日も明後日もできることならやってやる。お金だって稼げるしね。
疲れたら、人と話して、スマホを見るに限る。
伯母から水族館行こうよーという話がLINEで出てる。ちょうど電話する予定がその夜にあった。｢私さー。水族館すんごい行きたいんだよね…。｣
｢えっ、私も最近行ってないからいいなー。｣
みたいな会話。夏が来るのか。と思う。
水族館は行くことになった。江ノ島水族館。
水槽の中に海月がたくさんいて、その子たちが迷いながら泳いでるのを見るのを想像する。夏から秋にかけてやっている海月展は、｢涼しくなったら行こうねー｣という会話で話題として終わった。
Instagramで見かけた袖の短い涼しそうなワンピース。おばあちゃんちに行った時に通る市役所の蝉の声。マクセル アクアパーク品川に誘われた。
着たいなぁと思い夏に思い馳せ。蝉の声は忙しなく。誘われた水族館のホームページを見る。
私も、本当に、夏を迎えられるんだ。
感動した。嬉しかった。
私はもう1人では無い。独りに身を浸す必要はない。誰かが言ってくれたように感じる。
私だけは1人じゃない。ママは独りなのに。
寂しくないのだろうか。あの母は。
母。幼少期の母は、どんな子供なのか想像できない。私が幼少期の頃の母はノリが良くて、若くて、強くて、でも強情で、強欲で、どこに行くにも私を連れて行った。手を引く時はまるで雑巾を片手で絞る時のような強さで掴んだ。母、10cmの赤いヒールがかっこよかった。お姫様みたいだね。とその頃母に言っていたと聞く。男癖が悪い母。私は昼、母の男の人たちと遊ぶ。母は寝ている。2階のデカいロフトの寝室で。夜は寝かしつけをしてくれる。母が、私とママの物語を聞かせてくれる。もう覚えていない。過去の追憶。いい思い出。悪い思い出。私は、もう気持ちが悪い。
叔母との電話で、勉強の話をする。全然進んでないことを報告すると協力してくれる。今回はモチベーションをくれた。よーしっがんばろーう！
そんな気分になる。嬉しい。人がいるのが。
クーラーと診断名
病院にて。統合失調型パーソナリティ障害
との診断名を聞いた。
検索してみる。ふむふむ。奇妙な行動、思考。場にそぐわない感情や表情。異常知覚体験あり。幻聴。妄想。
私は、思った。(まさか、これだったとは〜っ)
でも、
１個気になった点があった。
親密な関係に対する不快感。
及びその能力の低さ。
ふと、懐かしさを感じた。
小学校5年生の頃、学校で仲良くなった子がいた。朝には挨拶して、休み時間にはお喋りする。その子にチャイムで他の子が聞こえないタイミングで、私たち親友になろっ？と言われた。
私は思ったのだ。(ん？なんで？親友とは？……)
あの頃がきっかけで私は人と親密になる事を避けている。いや、そもそも、なんで？と思った私がおかしかったのか、納得。
まじでごめんあの頃の友達。
同窓会で謝って説明しよ。と思った私。
異常な知覚体験についても、私もよく納得している。解離性障害と似てるけど、それにしては断続的で、症状も説明しきれない。
一時保護所。という場所で私は散々解離性の症状というのを体験した。
例えば。
左肘から下の感覚が薄くなる。それは日に日に強まった。最終的には、右手で素肌に触ってるのに左腕はジーパンの上から触られたような感触しか感じられない状態になる。ボールペンで引っ掻いた。白く傷が残っても、くすぐったいだけ。まあまあな騒動だったな。
色がいつもより少しだけ鮮やかに見える。
それは条件が限定されていた。
朝、起床時間の前に見る青空。
それが澄んだ綺麗な空に見えて美しかった。
当時は、もしかしたら解離性の症状が出ていたのかもしれない。
夢か現実か分からなかった。今、起きているのか。今、寝ているのか。それが分からない。これは、解離の症状で説明できること。
懐かしいな。一時保護所。私としては信頼した人達に囲われる感覚が嬉しかったけど、実情は劣悪な整備。国に何とかして欲しいなぁとは思う。
MSDで私にあてはまらなかったものもある。
魔術的思考。超能力。などなど。
そこは代表的な症状らしいけど私はない。
多分薬のおかげ。そう思うことにする。