映画『Winny』を見て仮想通貨を想う
『Winny』、ご存知だろうか?
多分若い人は知らないかもしれない。
というか自分だってWinnyが世間を騒がしていた頃は自分のPCも持ってない子供だったので、その記憶はおぼろげだ。
Winnyは日本人のプログラマーである金子勇によって作られた、Peer to peer(P2P)技術を応用したファイル共有ソフトである。
かつて日本ではWinnyによって、映画や音楽や大人な動画などが大量に共有され、深刻な被害を出した。(らしい)
自分の頭の中にも、当時のテレビのニュースなどを通して、すっかり染み付いた考えがある。
P2Pは悪いものだ。
使っちゃいけないんだ。
使ってるやつは悪いやつだ。
作った人も捕まったし、相当悪いやつだったんだ。
情報は一度流されてしまえば、その訂正情報を後でいくら流したとしても、それがすべての人に行き渡るなんてことはない。
自分のような情報に疎い凡人というのは、最初に受け取ったセンセーショナルな情報のまま年月を過ごし、2011年に無罪判決が出ようが、金子さんやWinnyを危険なものとして見続けるものなのだ。
そんな愚かな凡人が、映画『Winny』を見てきた。
令和5年になってようやく、あの事件が何だったのかを知るために。
始まりは2ちゃんねるに金子さんがWinnyを公開するところから始まる。
その後、警察に違法ダウンロードで逮捕される利用者たち。
そして警察の手は、開発者である金子さんの元へも伸びた。
これは映画の中のセリフの一つだが、Winnyを語るときによく使われる例え話の一つだ。
実際に金子さんの弁護を担当した壇俊光弁護士によると、壇さんは高速道路にたとえていたらしい。
「高速道路で速度違反をされまくったとして、道路を作った人が責任を取らされるのはおかしいだろう」と。(以下のAbemaの動画より)
映画の話に戻るが、
金子さん、警察相手に悪手を打ちまくりである。
まあそもそも、「これと同じこと書いてな?そうすりゃ帰れるんやから」と金子さんに詰め寄り、犯罪者に仕立て上げようとする警察も相当にヤバいわけだが、「じゃあ…」と言われるがままに供述書を書いちゃう金子さんもかなり迂闊!!
いやもちろん、自分は昔の警察のヤバい取り調べあれこれをネットで知っているから言えることかもしれないけども……!
というかこう……映画を見ていると、
金子さん、めっちゃのんびりやさんである。
やっぱり天才ってこういうふわふわした感じなのかな……?
それはともかく、金子さんはこの裁判中はPCに触ることや親しい人に連絡を取ることも許されなかった。
特にPCに触れられないのは致命的で、普通の人間が3年かかるプログラムを2週間で書けるなんて言われていた金子さんによって生み出せたかもしれないプログラムを思うと、かなりの損失だ。
それと、この映画は愛媛県警の捜査費不正会計問題も同時に描かれる。
これは不正会計で裏金を作り続けていたことを一人の警察官が内部告発するサイドストーリーのようなものだ。(もちろん実話)
「関係あんのかこれ?」と思ってたが、とても関係があった。
なぜなら警察官もWinnyを使いまくりだったからである。
どうなるかは映画を見てもらいたい。
まあノンフィクションの映画なので、金子さんがどうなるのかも分かっているといえば分かっているのだが……(映画を見る前に下調べはした)
なんかこう、
映画終わったら涙出てきたよね……。
無罪を勝ち取ってからたった2年後の2013年、金子さんは心筋梗塞でこの世を去った。
P2P技術はというと、Winnyの一件で日本のプログラマーが萎縮してしまったのかなんなのか、日本では鳴りを潜めることとなる。
しかし世界では大いに活用された。
一時期多くの人がPCでの通話などに使用し、のちにマイクロソフトが買収したSkypeを始めとして、今では日本人の大半が使っている韓国のLINE、そして仮想通貨のブロックチェーン技術にもP2Pは関わっている。
もしも金子さんが逮捕されることなく、日本が最初期からP2P技術を更に磨き上げて、業界の覇者になっていたら……。
そんな未来を空想してしまう。
まあでも過去を悔やんでも仕方ないので、未来を見ていこう。
ここで最初に自分が語っていた、
Winnyや金子さんに対して抱いていたイメージを思い出してみる。
もちろんこれは自分の頭がアレなせいもあるのだが、メディアの報道のせいでもあるのだ。こんな思考に染まったまま生きてきちゃったのは。
そしてなんだか、最近日本でこれと同じようなことになってる事柄がある気がしたのである。
それは……
『仮想通貨』だ。
・なんか危なそう
・ギャンブルなんでしょ?
・犯罪に使うらしい
・近づかない方がいい
・仕組みが意味不明
これが自分のちょっと前まで抱いていた仮想通貨へのイメージである。
度重なるコインの流出のニュース、
億り人とかいう意味不明な存在、
そしてなんだかよくわからん仕組み。
忌避する理由はもう充分すぎるほどある。
多くの日本人は恐らく上記のイメージなんじゃないかと思うし、相当な変革が起きない限りはこの思考を改めることもない気がする。
今の日本でビットコインとイーサリアムの違いがわかる人がどれだけいるのかという話だ。
そもそもJOIITOのポッドキャストを延々聞いている自分でさえ、未だになんだかよく分かってないのである!!(単純に勉強不足なだけだが)
だが、興味どころか忌避感すら抱いている人なら、おそらく自分より理解してないことだろう。
なんとなく、P2Pで起きたことが仮想通貨でも起きそうだなぁ……。
そんなことをWinnyの映画を観て思ったのだった。
未来の技術は理解するのが難しい。
でも対応していかないとね……。
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