【病院】売店で遭遇した優しい世界【車椅子】
あわわわわ……！！
イヤホンが壊れたぁぁああ！！
「何をそんなに騒いでるんだこいつは…」という冷めた目で見られている自覚はある。
しかし現在入院中の自分においてイヤホンはまさに必須アイテムなのだ！
これがなければいかにネットに繋がっていようが、動画やラジオコンテンツを楽しむことが一切できなくなるのである！！
（音が出ちゃうと同じ部屋の人に迷惑だからね☆）
哀れにも断線したイヤホンからは、なにやら一部の周波数の音がカットされたような変な音しか流れなくなっている。
……これは到底普段遣い出来るようなものではない。
思えば久々の断線だ。日常生活ではワイヤレスヘッドホンと無線の骨伝導イヤホンを使用していたので、断線なんて遠い昔の話になってしまっていた。
しかし、入院生活の今はもちろんそんなアイテムは手元に無く、親が持ってきてくれた有線イヤホンだけが頼みの綱だったのである。
（なぜそれを雑に扱ってしまったのか……！！）
遠方に住む両親に頼っているので、病院に来る回数はできるだけ減らさねばならない。
「イヤホン壊れたからもってきて～🤪」なんてアホみたいなことは気軽に言えないのだ。
次の面会日は恐らく数週間後。
この難局、どう乗り切れば……！？
いや、よく考えたら病院には売店というものがあるんだった。
病室にあるテレビを見るときにもイヤホンは必須（たまに他者の事を考えずに爆音でテレビ音声を流す人もいるが…）なので、売店に行けばさすがにイヤホンくらい売っているだろう。
一刻も早くこの状況をなんとかするべく、自分はあてがわれた相棒の車椅子に颯爽と乗り込み、1階の売店に向かうことにしたのだった。
・・・（移動中）・・・
「ハァ……！ハァ……！！」
……く、車椅子めっちゃ疲れるねぇ！！？
ちょっと離れた売店に行くだけなのに、もう腕が悲鳴をあげている。
普段のトイレ移動には使っていたので、もう慣れたもんだと思っていた車椅子だが、ちょっと遠出をしようとしただけでこれほど過酷だとは……！
何事も実際に体験しないとわからないものだ。
そして全然進まないな車椅子……！！（スピードが出ても困るが）
そんなこんなでなんとか売店に到着。
しかしこりゃ思ってたより店内が狭いぞ！？
ギリギリ車椅子が通れる通路ではあるものの、自分のドライブテクニックでは奥の方に行く勇気は出ない。（角を曲がれる気がしないので）
そして思った以上に人も多い。
うーむ、一刻も早くイヤホンが欲しすぎて来てしまったが、今日は面会日なので差し入れとかをここで買っていく人が多いのかな……？
こりゃ大人しく土日にしといたほうが……いや、そんなことはネット中毒者には無理な話だ。
今の自分ってすっごい迷惑な存在なんだろうなと思いつつ、売店の中へ。
ちなみにイヤホンは店員さんに聞いたら持ってきてくれた。
やはりあったか。これでQOLの大幅低下は免れるぞ……！
しかしこう……いざ売店に来てみると、お菓子とかジュースも買いたくなってきちゃったような？
思えば今までは親の差し入れはあれど、自分で売店のお菓子類を買うことはなかったのだ。（多忙な看護師さんに頻繁に頼むのも申し訳ないし）
ふむ……
今夜はパーティでもいいか…！？
（ドラクエ3リメイクも発売するしな）
とてつもなく後付けな理由をつけての暴走が開始された。
そんなわけでお菓子の物色を始める。
わぁ……！ バウムクーヘンにたい焼きに白玉あんみつに……！！
なお『バウムクーヘン』と『バームクーヘン』は別物らしいよ！
『バウムクーヘン』は国立ドイツ菓子協会による厳格な材料や製法の規定が存在します。
この規定に従った製品だけが「バウムクーヘン」として認められ、店頭での販売が許可されます。
そんな国立うんたらで規定された『バウムクーヘン』は、油脂はバターのみ使用可能とか、添加物不使用とか厳しい基準があるんだってさ！
（セブンイレブンの『しっとりバウムクーヘン』は植物油脂も膨張剤もバッチリ入ってる気がするけど、マツコの知らない世界で言ってた情報ならきっと正しいよね！）
それはともかく、久々のお菓子選定に迷っていると、
背後に人の気配を感じた。
そうだった。自分は狭い売店に車椅子で突撃してるヤバい奴だったのだ。
これはまずい……！
aosagi「ｱｯ……す、すいませ…」
紳士「何かお手伝いしましょうか？😊」
め、迷惑がるどころかお手伝いを！？
なんという紳士……！
突然受ける初めての優しさに動揺してしまった自分だが、そうか今の自分は車椅子に乗っていたんだった。
そういえば棚の高いところには全く手が届かないどころか、そもそも商品が見えてもいなかったことに気づく。
きっとそんな自分の状況を圧倒的推測力で把握し、即座にこの紳士は「物を取ったりする手助けをせねば」という思考に至ったのだろう。（凄いな）
そういえばコンビニでは消費者の視線に合わせてイチオシ商品を並べるゴールデンライン（ゴールデンゾーン）を設定しているというが、車椅子の自分には微妙にその手法は適さないんだな、なんてことをふと思う。
いやそんなこと考えてる場合じゃない。
紳士には「あ、大丈夫です！ありがとうございます！！」と告げて、バウムクーヘンとたい焼きとチョコパイをささっと手に取り、レジへ向かった。
いやー、しかし良い人も居るもんだなぁ……！
……とはいえ自分だったら果たしてあんな声かけが出来るだろうか？
学ぶべき対象はどこにでもいるものなのだ。
これも学びである。（学び）
そんなこんなで世界の素晴らしさを感じつつレジに並んだのだが、まあなんというか混んでるねぇ！！
やっぱりこれどう考えても土日に来るべきだったわ！
膝の上でお菓子を抱えつつレジ待ちをしていると、
背後から人の気配を感じた。
じゃ、邪魔か！？
それとも自分の両サイドの棚にある商品を取りたいとか！？
aosagi「ｱｯ…すいｍ」
淑女「よろしければ押しましょうか？😊」
またしても手助けを！？
そう、この淑女はきっと、膝に置いたお菓子を抱えた自分を見て、「これでは手で車椅子を漕ぐのも大変だわ…」と声をかけてくださったのだろう。
いやしかし一度の来店で2度もこんなことが……あらためて凄いな。
淑女に感謝を述べつつ、丁重にお断りし、その後無事に買い物は完了した。
まさか売店でこんな体験ができるとは思ってもみなかった。
とりあえず行動してみるもんである。
「日本人は車椅子に優しくない！！」なんてニュースをどこかで見た気がするが、こと病院に限って言えば、全くそんなことはないらしい。
ここの売店はそう思えるほどの優しさに溢れた素晴らしい空間だった。
きっと病院に来る人達というのは、家族が病気だったり、自分が病気に苦しんだ経験があったりして、人に優しくできる人が多いのかもしれない。
これもまた、入院生活で得られたかけがえのない経験だな……！
そんな素晴らしい経験をしつつ手に入れたのがこちらのイヤホンである。↑
いやもうコードの長さが尋常じゃない。流石はコード長3.8mである。
でも確かに病院備え付けのテレビに接続するなら、このくらいの長さがないとストレスがすごいのかもしれない。
ちゃんと病院用に選定されたイヤホンなのだろう。
そして実際に使ってみると、このコードの長さはベッドの机にPCを置いて寝そべりながら使うときにも非常に都合がいいのだ！！
いやはや、良い経験も出来たし良いイヤホンも手に入った。
このあとは買い込んだお菓子をお供に、ドラクエ3リメイク配信でも見て夜ふかしするとしよう。
良いこと悪いこと、色々ある入院生活ではあるが、
今日はとても良い一日だったな……！
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