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mimico3355
BAR自宅、くまちゃんのウイスキー漬け
バーには黒猫がいる。
テーブルの向こう側に座る、真っ黒ツヤツヤの毛並みと金色の目、くたくたのやわらかい体が自慢の、ねこが。
金曜、夜。それはこの世で最も尊い時間。
仕事も終えた。あしたは休み。何も気にすることはない。
スーパーで予定外の買い物をしようと、その予定外に買ったお弁当で夕飯を済まそうと、その後にアイスを食べようと、誰にも咎められることはないのだ。
そう、酒もおやつも然り、である。
――彼女は恐らく内心でそう言い訳をしている。ねこには分かるのだ。だってねこは彼女のねこだから。
せめてもの栄養をと選んだのだろうお魚のお弁当を食べ終え、アイスを平らげ、そしていそいそと冷蔵庫から取り出してきたのは小さなタッパーウェア。中には何かキラキラしたカラフルなものが入っている。
それがなんなのかも、ねこは知っていた。
数日前の夜、飼い主がおやつボックスからおもむろに取り出したのはHARIBOのグミ。かの有名なゴールドベアの小さなパックがよっつ。タッパーウェアにゴロゴロと開け、平らに均し、何をするのかと見ているねこの前でひたひたと注がれたのはウイスキーだ。
飼い主が滅多に買うことのない種類の酒に少しばかり驚いたものだ。
彼女はグミとウイスキーが入ったタッパーをうやうやしく冷蔵庫にしまいこみ、にんまりと笑った。ご機嫌である。
そう、その日仕込んだグミキャンディのウイスキー漬けを、いよいよ今夜いただくのだ。
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