質の良い書店は岩波文庫の取り扱いの有無で判断できる

本屋といっても色々あるが、今回は質の良い書店を見抜く方法を考えていく事とする。

先に結論から述べると、品揃えの質が優秀な書店は岩波文庫の有無で判断することができる。

書籍は通常書店側の判断で出版社側に取次を経由することで返品することができ、それにより商品の回転率を向上させることがやりやすくなる。岩波文庫はその反対で、販売する際には取り寄せ方式で行うことになる*1。そのため返本ができず、一度取り寄せてしまうと売り切るまで店頭に在庫が残る形となる。その取扱いの難しさゆえに近年は岩波文庫を取り扱う書店の数が減少し、ほしいと思った時にはネットでの注文か書店で直接消費者が取り寄せを申告しなければならない状況が発生しやすくなってしまっている。

そうした事情もあり、岩波文庫を取り扱っている書店というのは売りたい本を出来るだけ多くそろえたいという姿勢が強い、あるいは岩波文庫を揃えられるほど規模が大きいと判断できることが多く、そのために品揃えも豊富という傾向がとても強い。また岩波文庫を扱う書店は学術関係の書籍の取り扱いにも強く、種類も充実していることが多い*2。それらを考慮すると、岩波文庫を取り扱う書店は大体が品揃えの品質が高い優良書店であり、また取り扱えるだけの経営・売り場の規模が大きいと判断することができるのである。

この記事を読んでくださった方が良い書店を見つけられれば幸いである。

*1 岩波文庫は取次を通さないで直接販売店に商品を卸す方式を採用している。通常は取次を通して入荷や返品を行うため、取次を通さない販売方式を貫いている岩波文庫は多くの書店にとっては在庫を抱えやすい・売れない時のリスクが大きくなりやすいなどの点で取り扱いが難しいのだろう(それゆえに岩波文庫を取り扱っている書店は売れにくく在庫を抱えやすい商品でも扱えるだけの余力があり、様々な種類の書籍を展開できる傾向にあると言える)。
しかし取次を通さない販売方式を採用しているおかげもあり、書店に並ぶ岩波文庫は研磨されておらず、ほしいと思った時に購入することができる利点を備えている。通常は取次を通すために一度返本された本は周囲を削られて再度出荷されるという状況が多発し、ほしいと思っても購入をためらわざるを得ない状態に陥りやすいが、岩波文庫は取次を経由しない販売を行っているので、研磨のことを気にせずに購入できるのは他の出版社にはない大きな魅力なのである。

*2 専門書をはじめとした学術関係の書籍は内容が内容なのもあって研究者や学生など一部の層の購入が中心となることが多く、通常は多くの一般の人が購入することは価格も高価になりがちなのもありなかなかいない。そのために売れにくく在庫不良に陥りやすくなる。回転率を上げたいほど売り上げを重視している書店にとっては岩波文庫同様扱いづらく、敬遠してしまいがちになる。実際に学術関係の書籍が充実していない書店は岩波文庫の取り扱いが無い場合が多くエンタメ要素の強い本ばかりが並ぶ傾向にあり、全体の品揃えの質も良くないことがほとんどである。だからこそ学術関係の本を探す場合には岩波文庫を取り扱っている書店を狙う方が良く、そのことは岩波文庫を扱うことが書店が持つ品揃えの品質の良し悪しを証明する一種のステータスのような位置付けを担っていると言えるのである。

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