為政者の有能さは経済政策で見抜ける
優れた為政者に事を託すのは誰しもが望んでいることであろう。どう見抜くかであるが、実は簡単に見抜ける方法がある。それが経済政策の充実度合いである。
実際に歴史上、名君あるいは名政治家と評されている人物の多くは経済政策に優れている。以下に5人を取り上げる。
アナスタシウス1世(東ローマ帝国)
納税の変更をはじめ、財政再建に大きく寄与した。それにより治世中は財政が潤い、後のユスティニアヌス1世の西方領土の回復や聖ソフィア聖堂の建築など、様々な事業に経済面で大きな影響を及ぼしたとされる。
バシレイオス2世(東ローマ帝国)
アレレンギュオン制の導入が有名。それの導入により貴族たちを農民の連帯保証人にすることで貴族層の権勢を抑え込み、同時に農民の保護にも繫がった。それに加え贅沢を慎んだことも相まって、彼の治世中、帝国の金庫は金が溢れんばかりとなったことでもう1つ金庫が増築されたという話が伝わるほど。また、長年攻撃し続けたブルガリアに対しても併合後は以前から続いていた物納による納税を認めるなど併合前から続く現地に配慮した政策も踏襲している。
シェール・シャー(スール朝)
ムガル帝国を短期間ではあるものの解体させ一国の統治者にまで登りつめた英傑。領土を広げつつ領内においては貨幣の統一を行い(その時に鋳造された貨幣が現代にまで続くルピーの元祖となっているらしい)、道路の整備と拡大、さらに郵便制度の確立も実施している。そうした優れた政策によりインドの歴史上類まれな名君としての評価を受けている。
張居正(明朝)
万暦帝時代の官僚。納税を銀に一本化する一条鞭法と呼ばれる税制の確立で知られる。それにより明朝の財政は大きく改善され安定するようになり、朝廷内部は厳しく引き締められることとなった。その一方で万暦帝に厳しすぎる教育を行ったことが帝の性格を逆方向へ進め、後の放蕩な行動を好むことに繫がったともいわれる。
ホスロー1世(サーサーン朝)
マズダク教を壊滅させるとともに運河の建設や灌漑工事の実施、交通網の整備など国内における治世を安定化させた。国内の領土を4分割してそれぞれに行政区を設置し、税を定額化させ納税を強化している。その一方でイエメンに進出し中央アジアにおいて目の上の瘤となっていたエフタルを破るなど領土を増やし、また東ローマ帝国に対しては毎年の補助金の支払いを義務付けるなど対外面でも優位に立った。またアカデメイア閉鎖に伴う学者の流入に対しては彼らを保護し彼らのために研究所まで造らせるようにした。内外において安定かつ強力な統治機構を築きあげ優れた手腕を発揮したことで、後世に公正明大な君主として語り継がれている。ちなみにアヴェスターの編纂もこの時代に行われている。
以上だけでも経済政策の重要さがうかがえる。政治関係において優れた人物を見抜く上でこの視点を持つことは非常に大切であり、判断材料には最良の部分と言える。