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残り火

耳を劈く音が響いている。
ふわりと生温い風が舞って、セミロングの髪が夜を泳ぐ。

夜空に溶ける火花。ぱらぱらとした余韻をかき消すように、次々と咲く、また咲く。
咲いては朽ちて、色を変えてまた咲いて。
ぼおと見惚れていたら、浴衣の袖をついと引かれて。見れば、貴女の瞳にも、また咲いて。

目の端を柔く垂らせば、貴女の顔もまた同じに。口角は上がって。
袖を摘む指先が伝って、私の肌に触れて。貴女の指先は私の手のひらをなぞって、弄ぶ。
その指と爪は、闇夜の中で白く光って。

花が咲く度に貴女の髪飾りは七色に色を変え、それが清廉な黒髪の艶を際立たせて。
眩しかった。
貴女の瞳の上でふわりと戯れるように、靡く前髪を見ていると、なんだか擽ったくて。

咲く度響くその音は、確かに地面を伝って、深く私の心臓を揺るがす。
同じように貴女の奥も揺るがす。
心臓の音と交じって、溶けて、その響きの全てが貴女のせいだと錯覚する。

ほんのりと紅に染まる頬。夏祭りの上気のせいじゃない。
お揃いの頬を見つめあって、瞳の奥の自分たちをじっと見つめて。

指を絡めた。
1歩、草履をからんと鳴らして。
そっと腰を落として、
紅色のお揃いに触れた。

遠くで、花の散る音が聞こえる。

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