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掘り出しサイト・NHK『戦争証言アーカイブス』
無着成恭氏について調べていたら、NHKアーカイブスの『戦争証言アーカイブス』にたどりつきました。「上から教えない 「山びこ学校」の実践」と題して、約24分、ご本人が語っています。2015年の収録の収録です。無着氏は1927年生まれなので、88歳での姿ですが、まさに矍鑠(かくしゃく)たる様子で、話されています。この証言のなかで、無着氏は、自身の編著『山びこ学校』が生まれた背景を以下のように語っています。
『山びこ学校』という本が出てくるのは、学校で教えることをうのみにすることではなくて、自分自身が疑問に思ったことを前面に出すということがね、それが可能になったっていうことですね。戦後の教育で初めて、疑問に思うことを出すことができるわけ、できるようになったわけですね。
このサイトは、証言映像の視聴だけでなく、証言をテキストで読むことができます。こんなサイトがあったんだと、掘り出しもの、いや、掘り出しサイトに出会った気分です。
関連する証言動画もみることができます。著名な教育学者、文部官僚など、戦中、戦後教育の渦中にいた人々が語っています。NHK・Eテレの番組『[戦後史証言プロジェクト 日本人は何をめざしてきたのか]2015年度「未来への選択」』の取材にかかわって得た証言のようですが、戦後教育に関わった人々の肉声を聞けるのがとてもいいです。私が尊敬する教育学者・大田 堯氏の証言も約1時間、たっぷり聞けます。題は「教育はピープルのものだ」。大田先生らしいタイトルです。
無着氏の証言からも、大田氏の証言からも、戦後すぐの日本の教育情況というのは、教師の自由があったことがとてもよく伝わっています。忙しさからいったら、令和よりも当時のほうが上だったかもしれませんが、教師による教育内容と教育方法を選び取る自由があった当時の忙しさは、その忙しさのなかに教師が「自分の時間を持っているというか、自分自身の時間の中に自分の存在がある」と大田氏は語っています。自由と時間の感じ方の関係について考えさせられました。自分の心から没頭できるものがあるときの時間というものは、充実して感じられるものです。
また、大田氏は生活綴方の教育実践の価値についても触れ、その教育方法はほかの国に例を見ず、「世界遺産」と評しています。大田氏の証言は、後半ほど面白いです。最後には「教育はアート」という証言で締めくくられます。教育とは何かを問い続けた大田先生の、人生の答えのようなものが聞けて、とても嬉しくなりました。
大田氏の証言は、これまで著作でも述べてきた内容ですが、このような「証言」を引き出したディレクターの方の取材力(事前の文献研究・調査も含めて)の賜物だろうとも思いました。教育に携わる人、教師を目指す人、全ての人に視聴してほしい証言集です。