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生活綴方(せいかつつづりかた)って何だろう?

この記事では、生活綴方の基本的なことがらについて、説明していきます。説明を作成するのに参考にした本は、1958年に初版発行の『生活綴方事典』(日本作文の会編/明治図書)です。



生活綴方の二つの意味

生活綴方という言葉は、これまで2つの意味で使われてきました。

生活綴方の1つ目の意味は、子どもや大人が書いた特別な内容をもった文章(作品)のことです。特別な内容というのは、自然や社会、人との関わりの中で考えたり感じたりしたことを、ありのままに書いたもののことです。そこで見たり感じたりした人の姿や物の形や動きも、具体的に生き生きと表現する文章を指します。

生活綴方の2つ目の意味は、その作品を作るまでの過程や、みんなでそれを読んで意見を出し合ったり、話し合ったりする過程を指しています。その過程の中で、自分たちで学ぶことを大切にする活動のことを言います。

なぜ「生活」や「綴方」という言葉を使うの?

わざわざ「生活」という言葉がつくのは、書く人が自分の生活の中でとらえたり、感じたりしたことを表すからです。作文と言わず「綴方(つづりかた)」と昔の言い方をしているのは、大正時代から日本で行われてきた、リアリズム(現実に即した表現)という考え方を引き継いでいるからです。生活綴方の作品では、実際に自分で体験したことや、自分のものになった言葉で書くことがとても大切にされています。

生活綴方の目的

生活綴方の作品を書いたり、作品をもとにみんなで一緒に話し合ったりするのには、次のような目的があります。

・人の様子や物の形や動き、その関係をよく見て、大切な意味を見つけ、事実に基づいた考え方や感じ方を育てること

・自然や社会を正しく理解し、深く考える力を身につけること

・自分の観察する力や想像する力、考える力を伸ばして、創造的な発想ができるようにすること

・固定された考えやかたよった見方から抜け出して、自分らしい自由な考え方を持てるようにすること

・人と協力したり、社会とつながっているという気持ちを育てること

・日本語や文字について学ぶこと

 先生や指導者の人にとっては、作品を書いた人がどんな生活をしているか、どんな見方や考え方をしているか、どんな気持ちでいるかをよく知ることや、その人の可能性を見つけて、それを将来に向けて成長させるきっかけになります。

でも、生活綴方というのは、学校で教える内容を決めた今の「学習指導要領」や、国語の教科書には、はっきり書かれていない方法です。これは、第二次世界大戦が終わったあと、国語の授業で文章を書くことを「作文」と呼ぶようになって、すぐに生活に役立つ実用的な内容を書く機会が多くなったからです。

それでも、生活綴方は熱心な先生たちが戦前の伝統を守りつつ発展させながら、今でも全国の学校で取り組まれています。

生活綴方と「ありのまま」

 生活綴方では、ありのままに文章を書くことを大切にしています。「ありのままに書く」ということには、二つの大事な意味があります。

一つ目の意味は、自分のまわりで起こったことや自分たちの体験した出来事を、見たり聞いたりした通り、正直に書くこと。もう一つの意味は、その出来事をどう感じたか、どう考えたかを、うそをつかず、かくさずに正直に書くことです。

正直に書くことがなぜ大事かというと、いくつか理由があります。

一つは、物事をどう見て、どう考えているかを正確に理解できること。これによって、考え方や見方をさらに深めたり、広げたりすることができます。

また、正直に書くことで、真実を大切にする態度をはぐくんで、日常生活にも良い影響を与えると考えられています。

さらに、正直に自分の感じたことを書くことは、いまの自分自身を表現することでもあります。それは、自分の感じたことを素直に伝える以上のことを意味することになります。

私たちが暮らしている社会は、毎日のように色々なことが起こっています。その中で、何が本当で何がうそか、どこに問題があるかをよく見て、自分なりに考えたり感じたりすることが大切になります。そうした自分の考えや感じ方を、はっきりと書くことで、「ありのまま」は、こうしたい・こうなってほしいという「あるべき」姿をふくんだものに発展していきます。

生活綴方と「リアリズム」

「リアリズム」という言葉は、「現実主義」や「写実主義」とも言われることがあります。これはもともと文学や芸術で使われる言葉で、さまざまな意味を含んでいます。一つ目は、実際の生活に基づいた作品を作ることの重要性を表しています。二つ目は、文学や芸術の中で、現実の世界を正確に描く流派やスタイルを指します。三つ目は、日常生活で、空想よりも実際に起こっていることを大切にする考え方のことです。

学校でのリアリズムという場合は、子どもたちに自然や社会をしっかり観察させ、そこから良い考えや感情を育てる教育を指しています。これは、ただ何かを覚えさせるだけの教育に対する批判でもあり、子どもたちにある決まった考えを押し付けるのではなく、現実を見て自分で考えることを大切にする態度をいいます。

リアリズムという考え方を子どもたちの教育に生かそうとするとき、欠かせない二つの内容があります。

まず一つ目は、子どもたちが実際に起こっていることと自分との関わりを通じて、彼らの考えや感情をしっかりと育てていくことです。二つ目は、それぞれの子どもがどんな生活をしているか、どんな気持ちを持っているかをよく理解し、その個性に注目しながら、子どもたちがどのように物事を理解していくかを丁寧にサポートすることです。

このリアリズムの教育方法は、子どもたちが持つ夢、空想を大事にすることも忘れません。実は、子どもたちが現実を学ぶ中でこそ、自然な夢や空想が育っていくことがわかります。これらの夢や空想も子どもたちの成長にとって大切な部分としてとらえていくことを大事にしています。

まとめ

生活綴方(せいかつつづりかた)は、日本の伝統的な教育方法の一つで、子どもたちが自分の生活体験を基にした作品を書くことや、その過程を大切にする活動を指します。この方法では、子どもたちが自然や社会との関わりを通じて、実際に見たり感じたりしたことを正直に文章にすることが求められます。その目的は、観察力や創造力を育て、個人の自由な思考や社会とのつながりを深めることにあります。

また、生活綴方ではリアリズム、つまり現実に即した表現が重視されます。これは、子どもたちが自分の感じたことを素直に表現し、より真実に基づいた理解や思考を深めるためです。これにより、子どもたちに知識だけでなく、現実を見て考える力を育てることが目指されています。

生活綴方は、現代の教育カリキュラムでは明確には取り入れられていないものの、熱心な教育者たちによって実践され続け、子どもたちの豊かな表現力や人間性を育む手法として評価されています。

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