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業界でちっぽけな僕が大切にしてること
こんばんは。
コーヒーが大好きで転職先にも
専用のインスタントコーヒーを完備しているツコツコです。
先日、友人との食事の席でこんな会話になりました。
「保険屋さんって大変やん?自分で希望してなるの?」と聞かれ、
「僕の周りの人は憧れだったり、使命感で始める人が多いよ」
「でも、ツコちゃんは新卒からやろ?なんで続けてるの?」
なぜでしょうね?
転属や転職の機会は何度かありましたが、
"辞める"という選択肢は持ったことはありませんでした。
友人の赤ちゃんも同席していたので会話は途中で切り上げましたが、
少しだけ振り返ってみたいと思います。
受け取れない満期金
大学卒業後、
唯一内定をいただいたのが日本郵便株式会社でした。
新卒で郵便局のかんぽ生命営業に就きました。恥ずかしながら、
「人のためにこの仕事をやる!」という感じでもなければ
「保険でご飯を食べていくぞ!」というわけではなかったんですよね。
それは後になってから湧いてくる感情ですが、
この頃はたまたま就職できた先が生命保険営業という感覚でした。
働き始めてしばらくすると昨今のニュースで流れてくる
かんぽ営業問題にも嫌気をさしていましたが、
僕が当時「この仕組みで困ったときの助けになれるのか?」
と感じたことが他にも問題がありました。それは転勤問題です。
局によってはゆうちょ銀行の渉外取引もできます。その兼ね合いで
「横領等の防止のため、数年おきに転勤しなければいけない」
という決まりがありました。この辺りは銀行と同じですね。
もうひとつルールがありまして、保険営業においてはエリア制でした。
隣の局のエリアに踏み入れて営業をしないことが原則。
「隣のシマを荒らすな」ということですね。
転勤してしまうと前のエリアのお客さまに何かあったとしても、
営業本人は対応することができないという仕組みでした。
お客さまの前では「担当になりました」と伝えますが、
実情は担当というものはあってないものでした。
そんな中で仕事をしていましたが、
業務の一環に未払い保険金を支払うというものがありました。
満期がきて保険金を支払えるにも関わらず、
本人の所在が分からないというものでした。
他の保険会社にもあるかどうかはわかりませんが、ザッと見て数百件。
受け取れるはずのものが受け取れていない方がいました。
中には100歳を超えている方も…
東日本大震災を体験し、毎日流れてくる情報、情報、情報───
届いてほしいところに物資が届かない。
買い占めで飲料水を買うこともできない。
風評被害から収入がなくなってしまう友人もいました。
ほしいものを確保できない人を目の当たりにしてきた経験から
「お金をお届けすることで今後の生活に役立つはず。
支払いまでしっかりしなければ。」と考えていました。
ご本人がご存命でなかったとしても、お子さんが受け取る権利があります。
先輩はリストを持って行く様子を見せなかったので
「受け取れるものだけでもしっかり届けたい」ということに使命感を感じ、
リストと格闘し始めたのでした。
格闘するものの無いものだらけ
先輩がリストを手にしなかった理由がすぐにわかりました。
リストを整理し始めて住所も調べ、区画整理で番地は変わっているものの、
大体の目星をつけて、現地へ行ってみました。
現地へ行ってみたものの、建物は存在しておらず。
歩いて周囲を探すものの、該当する表札も見つからず。
電話番号も当時のもので「現在使用されておりません…」のメッセージ。
契約は古く半角カタカナで登録されているので、
わかるのは名前のヨミガナと生年月日のみ。
他のところも行ってみましたが結果は同じ。
結局何日か駆け回ってみたものの、数件も当たることがなく、
肩を落として帰る日々でした。
リストを追いかけながら、
担当者が転勤を繰り返すこと、
離職が多いことによって引き起こされる問題だとわかりました。
もし、その人の担当で転勤によって離れることがあっても、
次の担当者が契約を引き継いでいれば起きなかったことです。
しかし、そんな引継ぎや担当制は存在しませんでした。
先輩が興味を示さなかったもう一つの理由
ご存じの方も多いと思いますが保険営業の収入のほとんどは歩合制です。
新規契約をいただかないと収入は増えません。
支払われるはずのものが支払われないお客さまのためであっても、
会社全体の問題であっても、
保険金の支払い自体は全く収入につながりません。
僕も取り組み始める前から理解はしていました。
収入に繋がらなくても、是正しなければ
「せっかく入った保険の意味がない」と思い、取り組みました。
しかし、所在はつかめず、支払いもできず。
その間に新規契約に取り組んだ方が収入が上がる仕組みでした。
受取人不在の契約は加入した動機もわかりません。
当時のことなのでお付き合いもあったかもしれません。
ですが、決して安くない保険料を支払い、
最後になっても受け取れないことに怒りを感じました。
契約をしていただいたのなら、最後まで責任を持たないといけない。
そのためにはお支払する時まで担当でなければ支払いができないこともある。
ということを嫌というほどに味わいました。
それからは「担当です」とは言えなくなりました。
生命保険をご契約いただくことに怯えるようになりました。
この会社で契約をいただいたところで、先々のフォローができるのか?
当時は誹謗中傷に当たる可能性があったので
ネットには出せませんでしたが、問題が明るみになった今なら
書いてもいいだろうと思います。
数年続けていましたが、精神的にも限界になり、
ご契約いただいた方に退職する旨とご契約の説明をした上で退社しました。
契約者が悩んで出した答えと状況を共有しているのは
保険は決して安い買い物ではありません。
受け取りの際はご本人が大変な状況に置かれていることがほとんどです。
契約までに保険料の兼ね合いや生活状況をお聞きしているのが担当です。
家族内でも加入状況を把握していない方も多くいらっしゃいます。
お客さまと共有している状況をご家族と共有することも担当の仕事だと思います。
契約までに悩んだ時間と内容を共有できるのも、
お客さんからお預りしたご契約の一部ではないでしょうか?
前置きが長くなりましたが、友人に伝えた返事は
「支払いするまでが僕の責任。
だから、責任を全うするまでやめられない。」でした。
我ながら文章にすると恥ずかしいですね。
でも、信用して契約していただいたものを
放り出して新天地へはいけません。
契約を誰かに引き継ぐまではやめるという選択肢は出てこないと思います。
引き継いでも経験や時間は共有できないのが悩ましいところです。
東日本大震災の体験も大きかったと思います。
あの時は、届けたいものが届かない状態でした。
当時学生だったので、できることと言えば
帰宅困難者を自宅に招き、ご飯と寝床を提供するくらいでした。
ボランティアも調べてみると現地の物資を浪費したり、
人間関係で被災者の方と揉め事が発生するということも目にしたので、
物資を送り、募金をした方がよっぽど現地のためだと感じていました。
ある程度は必要だと思いますが、何もできない自分が行って下手に消耗するよりも周囲の人と日常生活を多く取り戻すことが先決だと考えていました。
被災後、すぐに必要になるのは物資ですが、
少し回復し始めた段階で必要だったのはお金でした。
学生の身分だったので大金を届けられるはずもなく、
本当にお金がないということが歯痒かった。
募金をしつつ、もっとお金を届けられればと感じたのを覚えています。
必要な時にお金を届けることができる仕事。
融資ではなく、将来に必要な額のお金を確保できるのは保険だけでした。
これも仕事を続けている理由だと思います。
友人の何気ない質問でより一層、
担当という立場を大切にしたいと再確認した時間でした。