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彼ははたして「導く者」だったのか。

ザ・プレイス

前に今年のイタリア映画祭大阪で一番良かったのは「シチリアン・ゴースト・ストーリー」だったと書きましたが、この「ザ・プレイス」も虚をつくという点では類を見ず、甲乙つけがたい作品でした。

カフェ「ザ・プレイス」には毎日ずっと居続ける謎の男がいる。たえず訪問者がいて、彼らは自身の願いを男に訴え、男はそれを叶える条件としてそれぞれに特異な任務を与える。はたして、彼らは任務を遂行できるのだろうか? 男が任務を与える理由とは? (映画祭公式サイトより)

夫がアルツハイマー症を患う老女に、大勢の人が集まるところで爆破事件を起こせば、夫は元どおりになる、と指南する。

不治の病にある息子を持つ父親に、息子が助かるためには、ある少女を殺せ、と指南する。

盲目の青年に、目が見えるようになるには、女性を一人犯せ、と指南する。

若い女に、好きになった男と一緒になりたいなら、強盗事件を起こせ、と指南する。

神との対話ができないと悩む敬虔な修道女には、男とセックスをし、子供を産めと指南する。

夫とうまくいっていない女に、あるカップルを自ら破滅させろ、と指南する。

まだまだその男に願いを伝え、叶えるための方法を聞きに来る者がいる。彼らは、男に操られていたのか? でも男にとっては、何のメリットもない。男はびっしりとメモ書きをした分厚い手帳をパラパラとめくりながら、突拍子もないアドバイスを彼らにするだけ。

男は一体何者だったのか。

導く者、壊す者、繋ぐ者、絶つ者。そのどれにも当てはまるし、それが善意なのか悪意なのかも不明。

こんなに多くの人が出てくるのに、物語は、カフェの店内でだけ繰り広げられる。全てが会話にて、観る者は、その会話から、彼らに何が起こったかを想像するのみ。

そんななか、男に願い事ではなく、ただ話しかけるカフェ店員アンジェラの存在が活きている。このアンジェラ役の女優サブリナ・フェリッリが好きだ。って、こんなに胸のあいたシャツ着てる店員さん、日本にいないよねぇ。セクシーすぎだろ。

男の告げる「任務」とやらは、結構過激なものが多くて、何でそんなことせなあかんの、と言いたくなるものばかりだけど、確実に願いが叶うとわかっていたら、人はそんなことまで仕出かしてしまうものなんだろうか。

見ていたら結構心は荒む、けど、何故だかほっこりする気分にもなるし、本当に不思議な作品だ。

私の隣の席の観客は、難しかったーと呟いてたけど、私はすごく好きだった。簡単か難しいかというと、難しいのかもしれない。でもペタンと平坦なモノよりは、ボコボコでいびつなカタチの方が面白いのと同じで。そして、これは悲劇でも喜劇でもなく、その両面を持ち合わせていて。

前に「おとなの事情」というタイトルで公開されたイタリア映画のパオロ・ジェノベーゼ監督作品。監督曰く、「ザ・プレイス」は「おとなの事情」に続いての三部作の二作品目だそうだ。次は一体どんな作品なんだろう。

でもどっちにも言えるのは、なんか役者がいきいきしてるところかな。どちらのテーマも現代社会の悩みやを苦しみをいろんな角度から切り取っていると感じたけど、演じている人々が出たいって思えるような作品だ。それに挑戦したら一皮剥けるような。だから、次の作品も見れるといいな。

2018年55本目。イタリア映画祭にて。

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