【cinema】家へ帰ろう
2019年4本目に見たのが、アルゼンチン映画の「家へ帰ろう」です。
その前に3本見てますが、まずはこちらのレビューを書き留めたく、2019年最初のレビューとします。
ホロコーストを生き抜いたユダヤ人の老人が、70年の時を経て、友人との約束を果たすためにアルゼンチンから故郷ポーランドへ旅する姿を描いたロードムービー。ブエノスアイレスに暮らす88歳の仕立て屋アブラハムは、自分を高齢者用の施設に入れようとする子どもたちから逃れ、故郷であるポーランドを目指して旅に出る。そして、その旅には、第2次世界大戦時、ユダヤ人である自分をナチスの手から救ってくれた親友に、自分が仕立てた最後のスーツを渡すという目的があった。(映画.comより転記)
とあるんですけど、このあらすじ、ちと違う。友人ピョトレクはナチスの手からアブラハムを救ったのではなく、死の行進から逃げてきたアブラハムを父の反対を押し切り、家に招き入れた、なんです。
ポーランド人ピョトレクの父はユダヤ人アブラハムの父の仕事上の部下だったのに、彼らがゲットー、そして強制収容所に送られた間に、アブラハムの家を我が物にしたワルです。まぁその当時は皆そうだったんでしょうけど。
それはさておき。私が他の3作品をさしおいて、この映画の感想を書きたいと思った理由がいくつかあります。
1つはストーリーとしてよく出来ていて、感情移入しやすかったってこと。頑固者のアブラハムは、娘たちからは疎んじられているのに、アルゼンチンからはるかポーランドまでの道のりをこれでもかってくらい「赤の他人」(それも魅力的な女性たちばかり)から助けられていて。それがなんだかとても微笑ましくて、いじましくて。
2つ目は、アブラハムがヨーロッパに入ってから見た景色。パリやポーランド。私が旅行で訪れた所が幾度となく出てきて、無性に懐かしくなりました。
きっと彼にとっては、友との約束を果たすためであり、辛い思い出しかないポーランドに再び足を踏み入れることは、ものすごい決心だったわけで、70年も時間を要したのは、人生を懸けた決意の表れでもあったのだと。
7年前にポーランドを一人旅した際に、アブラハムが住んでいたウッチも訪れました。私は本当にメインストリートのピョートルコフスカ通りを歩いただけなんだけど、映画でもそこが出てきて、胸がいっぱいになりました。
映画の中に、自分が降り立った(訪れた)場所が映し出されるのは思った以上に特別感があります。
もし、これからそういう映画があれば、きっと自分にとって忘れがたい作品になることは間違いないので、皆さま、外の世界にどんどん出て、国内外問わず訪れることをオススメします!
もちろん映画を見て、その場所へ訪れるのもステキなことです。私はハンガリーやパリ、ポーランドを映画を見て訪れて、本当に本当に胸がいっぱいになったことは今でもとても良い思い出です。それだけで忘れられない旅となります。
あとエンドロールをずっと見ていたら、アブラハムと娘のクラウディアのやりとりは、シェークスピアの物語を基にしています、とありました。
たしかにアブラハムの台詞で、「娘にたった五語を言ってほしかったのに、彼女は言わなかった」とかちょっと奇妙だなと感じたのと、父娘の決裂の原因があまり定かではなくて、何でだろうと思っていたのです。
検索しまくったら、多分「リア王」の件なんでしょうね。ものすごく腑に落ちたのと、エンドロールをちゃんと見ていなければ、違和感を覚えたままだったんたろうなと思うと、やはり映画はエンドロールを最後まで見てこそだなと感じた次第です。
そして、何と言ってもラストが良いです。泣かずにはいられない。そんなことありえないやろ、はこの際ナシです。アブラハムの苦しくも暗くなりすぎないこの旅路は、最後の最後で、本当に報われたんだなと思いました。
2019年4本目。シネリーブル梅田にて。
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