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【cinema】サウルの息子
アカデミー賞外国語映画賞、受賞しましたね、コレ。その前に見に行ったんですが。ですが。
とにかくこの映画は、アウシュヴィッツの囚人の中でもゾンダーコマンドーのサウル(発音聞くとショウルって聞こえる。全然サウルって聞こえない)が死体処理をするときに「息子」を見つけてしまい、何とかきちんとユダヤ式に弔ってやりたいと奔走する話なんです。
ゾンダーコマンドーをちゃんと取り上げた作品はなかったかもしれないし、こんなに収容所の音を(視覚より聴覚が刺激される)意識した作品はなかったと思います。
でも、でも、私はサウルに全然共感できなくて。最後まで。日本人的感覚なのかもしれないけれど、ゾンダーコマンドーは1人で動くわけじゃないし、連帯責任が第一条件で、もう皆自分が何をしているかわかっていても、生きることを諦めていたとしても(諦めてないか、反乱起こすし)、目の前の「やらざるを得ないこと」を遂行するために精一杯やっている。
息子を見つけてしまったサウルは哀れだ。でも仲間を巻き込んで、むしろ死に導くようなことをしているって自覚もなくて、遺体を隠したり、班を抜けてラビを探したり、仲間が反乱を起こすための武器を落としたり。愛する者を想う姿は崇高だ、というより何か周りを見てよって言いたくなってしまって。自分勝手にしか見えなかった私は心が狭いのだろうか。
って感想を書いていたんだけど、見ていてすごく違和感があったのが、その息子です。
彼の本当の息子じゃないの? サウルの思い込み? 精神がギリギリまで追いつめられていくなか、彼は人間の尊厳を保とうと埋葬という儀式に固執して、息子はいないけれどこんな行動をとったのだ、と書いている人が多くて、混乱しました。私はてっきり本当の息子だと思っていたので。となると、サウルは既に狂気の最中にいて、もう後戻りができなかったんだ…
ラストで彼が微笑むシーンはものすごく象徴的で、彼はなぜそんな笑みを浮かべたのか。解き放たれたと思ったのか、息子が現れたと思ったのか。
衝撃的な「モノ」は全てぼやかされていて、あくまでサウルの目に入ってくるものだけがクローズアップされているのもこの映画の特徴だけど、とにかく音に圧倒されて。
アウシュヴィッツには一度行きましたが、これを観た後に行ったらまた違うことを感じられるのかもしれないと思いました。