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【cinema】サラエヴォの銃声

2017年27本目。

第1次世界大戦勃発のきっかけとなったサラエボ事件から100年が経った2014年6月28日。記念式典が行われる「ホテル・ヨーロッパ」には、戦争についてインタビューするジャーナリストや式典での演説の練習をするVIP、賃金未払いをめぐってストライキを企てる従業員ら、それぞれ事情を抱える様々な立場の人たちがいた。やがてホテル内に鳴り響いた1発の銃声をきっかけに、彼らの運命は大きく交錯していく。(映画.comより転記)

前の「汚れたミルク」に引き続き、ダニス・タノビッチ監督作品です。昔、彼の「ノー・マンズ・ランド」を公開時に見ており、これにはとても期待していたんです。

世界史を選択していたのと、近現代史が好きだったので、いけるだろうと思っていたんですが、とにかく誰がセルビア系なのかボスニア系なのかについていくのに必死で、特にこのトップ画にもあるインタビュアーの彼女と、暗殺者ガヴリロ・プリンツィプと同姓同名である彼との早口でまくし立てるやりとりには、ついていけなくて、私は、取り残された感がありました。多分ね、現地の人が見たら、イントネーションとか民族の違いってのは一目見て、聞いてわかるんだろうね。それがわからないのがもどかしい。

テーマ自体にはとても興味があったのです。群像劇というのにも惹かれました。

サラエボ事件。あれから100年経って、ヨーロッパは変わったのか。いや、サラエボは変わったのか。この群像劇の中で、人々は自身の抱える問題と、国や社会として抱える問題とが合わさって、混沌とした中に皆埋もれて、もがいている様が描かれている。

皆自分のことには必死だけど、ある種の諦めが見てとれたり、最初からやる気がなかったり、途中で失せたり、どうせそうなんだろ、みたいな空気で充満していて、それは諸外国から見たサラエボの今なんだろうなって思うんです。

ストライキを起こそうとしたり、上司におかしいと進言したり、何か変えたいと願う気持ちがあっても…変わらない。変われない。

以前にルーマニア映画は国に対する諦観でもって、あらゆる作品が作られていると思う、と書いたことがあるんですが、このボスニア・ヘルツェゴビナのそれとはまた違うんですよね。パワーは漲っている。いつ何時(なんどき)、弾けてもおかしくない。過去に戻って、あの時起こった事の意味を考えようとすればするほど、そこから抜け出せなくなっている。皆それに気づいているのに、誰もそうとは言えないのかなって。

そんな中で、私はラミヤというホテルの女性従業員の存在が光っていたと思います。上司に対しても、同僚や周りに対しても、忠実であろうとする彼女の姿は、こんな状況下でも冷静に、気丈に振る舞おうとする感じが、ボスニアの今を体現しているような気がして。

↑彼女がラミヤ。ストライキの主導役になってしまった母親と、上司の支配人との間で葛藤する。

あの一発の銃声は、「やっちまった」でしかないんですけど、100年前も今もそれすら変わらないんだなって思わせられるんです。

85分の映画ですけど、考えさせられました。でもセリフの一つひとつの意味を考えるのにはもう一度見ないと理解できてないなって思いました。

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