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"タイトル負け"していないノルウェー国王

年が明けて、noteの記事タイトルを映画タイトルのままにしないように心掛けていますが、なかなか思うようなものが浮かばないものもあります。これがそうです。

ヒトラーに屈しなかった国王

タイトルでストーリーが丸わかり。でもね、自分が知らなかった事実を知れる映画って、娯楽性を求めるのとはまた違う醍醐味があって。

ノルウェーは中立国で本来なら侵略されない国であったこと、この国王は、ノルウェーがスウェーデンから独立した際にデンマークから選ばれてノルウェーへ行ったこと、ドイツの侵攻が始まったことで、クーデターが起こり、親ドイツ派への政権交代があったこと、ノルウェーはナチスドイツに抵抗した期間としては、欧州周辺諸国の中ではソ連に次いで長かったこと、とか。

どうしても世界史などで勉強する第二次大戦は、英仏独伊などのメインの国々に偏るため、欧州の周辺諸国がどんな状態だったかは蔑ろにされがちです。おー、なるほどー、そうだったのか、と思うことだらけで。

1940年4月9日、ノルウェーの首都オスロにナチスドイツが侵攻。ノルウェー軍も交戦するが、圧倒的な軍事力によって主要都市が次々と陥落し、占拠されていく。ドイツ軍はノルウェーに対し降伏を要求し、ドイツ公使とノルウェー政府国王のホーコン7世との謁見の場が設けられるが、ホーコン7世はその場で、ナチスの要求に従うか国を離れて抵抗を続けるかの選択を迫られる。(映画.comより転記)

上映時間136分。長い。仕事帰りに見たら寝るんとちゃうかな。そんなことが頭の中をよぎりましたが、何がどうして。夢中になって見ました。ナチの軍艦が夜間にフィヨルドに攻め入ろうとしてくる様、ミッツコーゲンの防塞でのドイツ軍とノルウェー軍の交戦、音響の効果も相俟ってか、もう胸のあたりがシクシクして、背中がゾワゾワしました。

たった3日間の出来事ではありますが、時間刻みでたどっていく様は鬼気迫るものがあり、ホーコン7世の苦悩は、王としてだけではなく、父として、家族の長としての選択を迫られながらで、彼の人間味というものをしかと感じられました。彼を100%美化するわけでもなく、でも彼への「リスペクト」(敢えてこの言葉を使いたい)を存分に感じられるものに仕上がっていて。

腰痛がひどくて、寝転びながら兄であるデンマーク国王へ電話をかける様子、孫が大好きなおじいちゃんであること、内閣総辞職をして責任を逃れようとする首相への喝の入れ方、そして最大の見せ場、ドイツ公使との交渉…。

この映画が面白く感じられるのは、このドイツ公使の立場も見せながら展開していくところです。ともすれば事なかれ主義の彼が、赴任先のノルウェーと祖国ドイツの狭間で苦悩する様子が克明に描かれており、ちょっと同情してしまうところもあります。

ノルウェー、政府閣僚含めて、北に逃げるだけでええんかい。国王、ドイツ軍の爆撃に晒されとるやないかい。一国の主がこんな仕打ちでいいのか⁉︎ ノルウェー軍の軽装、それでいいのか⁉︎

と、ツッコミどころはありまくりなんですが、それも映画ならではの醍醐味なんです。(そこは、エンドロールが終わるまでしっかり見てほしい)

それでも、タイトル負けの一切ない国王の物語でございます。苦悩しながらも、我のためではなく、祖国のために…!それだけを考えた国王の選択は間違ってなかったんだなと思います。

***

前からずっとボヤいていますが、(ナチス)ドイツがテーマの内容だと「ヒトラー」がタイトルに付けばわかりやすいと思われるのか、ここ何年かのそれ関連の邦題を調べてみると、この映画を含めてザッと11本。そのうち原題にヒトラーが使われているもの、皆無…。ね、もうそろそろ、いいんじゃないかな…。

戦争映画というだけではなく、極上の心理戦が味わえる映画です。「映像の世紀」好きな方はオススメかも。もっとあの時代の欧州諸国のことを知りたくなりました。

ぜひご覧ください。

2018年4本目。テアトル梅田にて鑑賞。

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