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電車の中の不穏な空気について。

先日、通勤中の電車内で、行きも帰りも小さな諍いのようなものを目にしたので(耳にしたので)、それについて書いてみたい。

朝は大抵満員の、本当にギュウギュウの電車に乗る。冬場はまだコートなどの厚みでマシだが、夏場は文字どおり、ヤバイ。男性なら痴漢冤罪も振りかかりそうな。まぁ真の痴漢も目撃して、防いだこともあるんですが。

それは置いといて、事は突然起こりました。満員電車とは言え、シーンとしています。友人同士や知人同士が乗り合わせない限り、会話もありません。

突然、女性の声で、

「オバサン、力入れて、もたれかからんといてくれませんか」

と前後に重なり合っているもう一人の女性に注意する推定年齢30代後半の女性A(と呼びます)。

車内が、いきなり、ハッと息を飲む微かな音がして。多分、私を含む近辺の全員が、一斉に、どないしたんや、となったんでしょう。

ここでポイントは、見ず知らずの女性から「オバサン」と言われたもう一人の女性Bなんですが、パッと見、後ろ姿は30代なんです。小綺麗にしたOL風の女性。まぁ前から見ると、推定年齢40代半ばと思われるんですが、いや、それにしても、知らない女性に向かって、オバサンて。同性でも失礼やろ。Aは、余程ムカついていたと思われます。

しかし、Bも負けちゃいない。ほぼ同世代のAに、オバサン呼ばわりされたのだから。

「混んでるからね。仕方ないのよ」

とわりとサラリと声も抑えて、応える。謝らない

私がBならどうだろうか。すいません、とか言うかもな。でも恐らくBは、赤の他人から、静かな満員電車内で、オバサン呼ばわりされて、怒りが増したらしく、より力を入れて、Aにもたれかかった、らしい。

ここから、終着駅まで、二人の女のバトルが繰り広げられる。

まだ力入れてるでしょ。何で力入れてくるんですか!」

そんなの知らないわよ。力なんて入れてないわよ。混んでるんだから仕方ないでしょ。アンタもうるさいわね

上記やりとりが、3回ほどあったでしょうか。

経験則から申し上げると、誰かが力を入れて隣り合っていたら、分かります。最初はたまたまだったかもしれないけれど、おそらく、その後は、BはAにわざと力を入れて寄りかかってたんですよね…。

車内は、もう周りの人間全員が居たたまれなくなって、終着駅まで息を殺しながら、たどり着いたのです…。

駅に着くと、思いのほか、何事もなかったかのように、二人は離れて、それぞれの向かう先へ颯爽と去って行きました。これは、女性だからかな。男性なら取っ組み合いの喧嘩に発展すること間違いナシ。(何度かそういうシーンも見たことがある)

***

さて、帰りの電車です。

私は仕事帰り、クタクタで、一席空いていた優先座席に座りました。一応周りにお年寄りなど居ないか確認して。両脇に男性が2人ずつ座っており、私の座った座席には計5人が座っていることに。

そうしたらば、向かいの座席も同じ人数が座れますよね。ところが、あと1人座るには少し足りないスペースしか空いておらず。

それに気づいた向かいの推定年齢60代半ばの男性Cが、自分の両隣りの女性に「もう1人座れるはずやから、ちょっと詰めたらいいんとちゃいますか」と声を掛けたんです。

たしかにそうですね。それに自然に気づく人もいれば、知らんぷりする人もいます。

こっちサイドは大人の男性4人に、女は私1人で、5人。向こうは、女性3人に男性1人。何でスペースが空かないんだろう。

と思って、よくよく見ると、端に座っている推定年齢70代の女性Dがリュックを脇に置いているものだから、どんなにあとの3人が詰めてもスペースが空かないのです。しかし、Cからは死角になっていてそれは見えない。

フツーならココで終わりです。

しかし、Cはめげない。Dに向かって、再度注意する。

もう少しまっすぐ座ればスペース空くでしょ。まっすぐ座りなさいよ(←もう命令口調)」

私、足が悪いの。ハンディキャップだから、まっすぐ座れないのよ!」

とDが言い返す。

いや、Dよ、足組んでますがな。アナタ、足さえ組まなければ、まっすぐ座れるよ!と私は心の中で幾分かCを応援してしまう。あと、ハンディキャップとか軽々しく使わないでほしい。そりゃお年は召していらっしゃると思いますが。

私だって足が悪いの。膝が悪いんだ。でもまっすぐ座ってますよ。その座り方がダメじゃないの

C、負けてない。しかし、Dは無視を決め込み、本を読む(フリをしていた)。

Cは、コイツに何を言ってもムダだと悟ったのか、それから自分が降りるまで、不満げな顔をしつつも、もう何も言わなかった。

そして、彼は気づいた、降りる時に。Dがリュックを自分とは反対側の脇に抱えていたことを。

朝の満員電車よりは、スペースもスカスカで、みんな帰宅途中なので、話し声も方々からする。だからCとDのやりとりは、そこまで目立たなかったが、向かいで座っている私は、気が気じゃなかった。声を荒げる感じではなかったけど、そのやりとりを見聞きしている方からしたら、大変居心地が悪くて。

***

朝のやりとりは、双方に「悪意」があった。言葉やその口調が刺々しく、互いにムキになっていたと思う。

夜のやりとりは、片方がよかれと思って、声を掛けたら、もう一方が、悪意ある返答で、諍いになりかけた。

そんな時、周りは大抵知らぬ存ぜぬだ。まぁ間に入るほどでもないけれど。

それぞれ、声を掛けられたときに、あ、すいません、と言って、我が身を省みれば(たとえ、それが素振りだけになってしまい、直すことができなくても)、丸く収まっていたんだと思う。私たちお得意の「すいません」で。

でも、そうしたくない何かがあったんだよね、BとDからすると。それは、何だったんだろう。大勢の前で、たしなめられて、恥さらし的な存在になったからか。まぁAの場合、あの注意の仕方はないよな。「オバサン」は、アカン。

まぁよくある電車の中での出来事ですが、同日に、行き帰りで起こったので、それらを目の当たりにし、私自身、身の振り方をきちんとしようと思った次第です。

ちょっとした声色や言葉遣いで、人は如何様にも動かせるというか。愛想笑いや事なかれ主義で済ませるのともまた違って。

「自分が悪い」ことなんて、頭ではわかっていても、いざ、それを面と向かって言われた際に、素直に認めることのできる人でありたいと思いました。

アレ? フツーの終わり方? ダメ?

翌朝、全く同じ時間の電車の同じ場所に乗りましたが、彼女たちを見ませんでした。でもそれぞれ今までに何回か見たことあるから、またバトルは繰り広げられる、かもしれない。

#日記 #エッセイ #コラム #つぶやき #電車の中で



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