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【cinema】ナイトライフ
2017年50本目。EUフィルムデーズ7本目。スロベニア映画🇸🇮
この衝撃的なトップ画を見てもらえたらわかるように、これをショッキングと呼ばずして何と呼ぼうか、という内容のこちら。
スロヴェニアの首都リュブリャナ。注目の訴訟で勝利を勝ち取ったばかりの高名な弁護士ミランが、血だらけになって倒れているところを発見される。身体中に犬が噛んだ跡があり、側には性具が転がっている。彼が生死の境をさまよう間、病院に駆けつけた妻レアは事件の真相を知ろうとすると同時に、恥ずかしい秘密がマスコミに漏れないよう、慌てて画策せざるを得ない。(公式サイトより転記・キャスト名を挿入)
これは犯人探しが主題の物語ではない。そこは観ていてとても気になるのだが、夫がこのような立場に置かれた時、妻はどうするのか、ということがひたすら描かれている。
リュブリャナ。約10年前に旅行で訪れた時、感じたのは至って普通のヨーロッパの国。たった数日しかいなかったのだから何か感じとれたらその方がすごいのかもしれないけれど、旧ユーゴスラビア連邦の一つで、しかし街角はその片鱗すら感じさせないくらい「フツー」なのだ。私が覚えているリュブリャナの街角は、竜伝説に纏わるモチーフが多かったことくらい。
ただ映画を見ていて、いわゆる「西側」とは違うなと感じたのが、妻が夫を介助した救急隊員を金で口止めしようとしたところか。ミランはそりゃもうあられもない姿で発見された。よりによって誰もがわかる性具までそばに置かれて。そんなことが世間に知られたら、彼ではなく、自分が生きていけない。そう思って妻は行動した。
夫ミランが妻に隠れて何をしていたかは最後まで明かされない。夫婦仲はとうに冷めきっていた。彼らの間に守るべきものがあるとすれば、それは世間体と社会的地位から来るある種の責任だけだ。
女はいつだって強い。この映画の中でのレアは必死だ。夫が無数の咬み傷を残され、瀕死の状態で見つかった。頼るべき者は、夫の仕事仲間か、手術を担当した医者か。いや、違う。己だけだ。私なら取り乱すであろうところでも彼女は歯を食いしばって、己のために行動する。そこに男女間の愛は一切ないのだ。夫婦生活が何年も続くとそうなるのだろうか。
男はいつだって自分本位で、女はその尻拭いをする。何だかそれを見せつけられたような気がする。
もう一度書くが、誰がミランをこんなふうにしたかは最後までわからない。それを期待する人には物足りないストーリーなのかもしれない。けれど、こんなに悲しくて空虚な物語もそうないと思うのだ。女はこういう立場になって初めて強さを発揮する。男たちが考える以上に強かに、半ば諦めの境地で。悔しいけど、こんな勝ち方しか女はできないんだなって。男には絶対できない自分の守り方。
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