【cinema】クリスマスの伝説 4人の若き王たち
2017年49本目。EUフィルムデーズ6本目。ドイツ映画🇩🇪
クリスマス休暇を精神病院で過ごさなければならないララ、フェージャ、アレックス、ティモ、4人の若者たち。よりによってこの時期に引き合わされた彼らは、型破りな若い精神科医の下、多くの自由を与えられ、問題と向き合い、それぞれの時間を過ごす。クリスマス・イブ、4人は揃って病院を抜け出し、森の湖畔で静かな幸福を経験する。共に過ごす時間が終わる時が来ても問題は何も解決されてはいなかったが、多くの事が動き出していた。心折れた者、少し立ち直った者、その誰もがこのクリスマスを忘れることはない。(公式サイトのあらすじにキャスト名を加えました)
ララ。良いとこのお嬢さんだけど、あまりに奔放で型破りな性格から両親は彼女を持て余し、精神科へ通わせる。
フェージャ。ジョージア出身の超気弱な彼は、その性格から小さい頃からイジメの対象で、それゆえ精神を病んでいる。
アレックス。両親は離婚し、彼女は母の元で暮らすもその母の娘への依存がひどく、彼女の精神は落ち着くことがない。
ティモ。育った環境は劣悪で暴力でしか物事を解決できない、攻撃心むき出しの彼。母親の顔をガスコンロで焼こうとしたり、あらゆる暴力を振るって、何度も鑑別所と精神科を行き来する。
そんな彼らが共に過ごすことになった精神病院。クリスマス休暇には、誰もが家で過ごすべく去って行くのに彼らにはその帰る場所がない。いや、あるのだが、帰ることを許されなかったり、受け入れられなかったり、自ら帰ることを拒否したり。でも見ていて感じることは、誰しも悼み悲しむ心があって、どんな状態であれ、彼らは彼らなりに傷ついているということです。それと向き合おうとしたのが、彼らの主治医ヴォルフでした。一見同じ年頃という点でしか共通点がない彼らが、ヴォルフ医師によって話す場を設けられたことにより、それぞれの境遇を慮って、互いを護ろうとしたり、これまでにない自分を曝け出そうとする。よくある話なのかもしれない。でも彼らにとっては、本当に特別なクリスマス休暇だったんだなって。
とにかくこれを見ながら私が思ったのは、彼らのこの一瞬が永遠に続きますように、ということです。ほんの一瞬でも本当の自分に戻れた時、彼らはたしかに一つになっていた。そこにいわゆる友情なんてものはないのかもしれないけれど、4人で居ることで、自分が守りたいもの、守るべきものが見えたんじゃないかなって。それは、大人たちや、ヴォルフにも理解できない彼らだけの大切なモノなんだなって。
単なるティーンエイジャームービーとして扱うには、ヒリヒリするような痛いシーンもあったり、オトナの事情を見せつけられたり、一筋縄ではいかないストーリーで、院内のシーンにしても敷地内の庭に降り積もった雪のシーンにしても、とにかく寒々しいのに、どこかポッと温かさを感じてしまったのは何でなんだろう。彼らの一瞬を大切に切り取ろうとした眼差しなのかな。
彼らは自分の想いをうまく言葉に出来なくて、ひたすら声を掛けてもらうのを待っている。それが時として、暴力になったり、自分を傷つけようとしたり、何も言わずに殻に閉じこもってしまったり。精神病院にいるといっても、どこにでもいるフツーの子たちで、ただひたすら不器用なんだと。
一般公開はされないだろうし、クリスマスに見るにはちょっと切なくなる話だけど、自分を、自分の周りの人たちをもっと大切にしようって思える作品でした。
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