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政治家志望から理系研究者の道へ―通信技術と研究の面白さー

今回は工学部知能情報システム工学科の梅林健太先生にインタビューしました。梅林先生はもともと政治家を目指していたという意外な経歴をお持ちですが、現在は無線通信ネットワークの研究者として活躍されています。この記事では、現在取り組まれている研究の魅力、また梅林先生がどのような経緯で研究者の道を歩み始めたのかについて詳しくお話を伺いました。ぜひご覧ください!

<プロフィール>
お名前:梅林健太先生
所属学科:工学部知能情報システム工学科
研究室:梅林研究室
趣味:サッカー、釣り

無線通信をもっと効率的に


ー早速ですが、先生の現在の研究内容について教えていただけますか?

私の研究は無線通信ネットワークに関するもので、センサーから収集したデータを効率的にサーバーに送信する方法を研究しています。AIやビッグデータが普及する中で、こうしたデータ通信のスムーズな流れをサポートするインフラが必要なんですが、有線で情報を送るとなると、絶対センサーにケーブルを繋げないといけないので、そうするとセンサーの配置や配線がなかなか大変。それを無線で出来れば楽に情報を送れますよね。

ー確かに、無線なら配線が要らなくて楽ですね。

例えば皆さんが使ってるスマートフォンにしても、基本的にはデータが無線で基地局に送られてきます。無線通信は電波を用いて行いますが、同じ周波数帯を使って通信をすると干渉してしまいます。そこで、ある周波数帯を使う時間とかを機器ごとに順番に割り振って干渉を起こさない工夫が施されたりします。ただ、周波数は有限な資源なので、今どんどんいろんな無線サービスに周波数帯が割り当てられており、足りなくなってきているという問題があります。そこで、周波数資源が実際にどのように使われているかを把握して、もっと効率的に周波数資源を活用する方法を確立させる研究に取り組んでいます。

研究室内を飛んでいる電波の周波数帯を可視化

ー5Gなど今の通信の規格で、どうやって周波数帯を上手く割り振るかという最適化をするということですか?

それだけではなくて、通信会社というのは、これまでは皆さんがスマホで電話や動画をスムーズに見れればあんまり文句言わないし、全然問題なかったですよね。5G以降では、スマホだけでなく自動運転や遠隔医療など色々な場面において情報通信をサポートすることを目指しています。そこで、自動運転や遠隔医療なんかでは、誤りや遅延っていうのは絶対起こしちゃいけなくなってくるし、要求条件は厳しくなってくるわけです。
これを実証実験で示していかないといけないのも結構大変なところで、ただ通信の品質を良くするだけでなく、実際のサービスの品質を評価することが必要なので、他の分野の人たちをうまく巻き込んでいってタッグを組んでサービスと組み合わせることが必要になってきています。現在は、趣味のサッカーを活かしてサッカーのコーチとの共同研究なんかもやっています。

他分野の方との共同研究の例(AIサッカー教室)

政治家志望から研究者の道へ


─先生は出身がちょっと特殊で文系出身だとお聞きしましたが、どういった経緯で理系の研究者になったんですか?

実は、もともとは政治家になりたいと思っていたんです。高校時代、リクルート事件を代表とする政治と金の事件とかをちょうど見ていて、社会問題に対して強い関心がありました。こんなんじゃだめだ。俺が政治家になってやるみたいな感じで。それで立命館大学の法学部に進学しました。ただ、そこで色々勉強すると、今考えれば当たり前ですが、政治は理論だけではなく他の要素が強く必要なので、自分には合っていないと思うようになりました。

─大きな転機ですね。

それで、4年生の時に文系の大学院に行こうかとゼミの先生に相談をしてみたら、「絶対頭打ちになるからやめたほうがいい、大学院に行くなら理系に行け」って言われました。当時、自身の卒論も理系教育という社会問題を扱っていたこともあり、編入学で工学部を目指すことを決めました。

─でも、文系の大学から理系の大学に進むのは難しいんじゃないですか?

そうですね。横浜国立大学の工学部は、大学生の受験科目で編入試験を実施していたので、とにかく数学と物理を勉強して受験したら無事に合格することが出来ました。それから大学院の修士まではみんなと同じように行って、就職するか博士進学するかという決断をするときになって、色々な企業を見たんですが、やっていることに対してあまり魅力を感じなかったんですよ。なら博士に進学してみるかと決意して進学することにしました。多分、大学の研究の自由度が自分には合っていたんだと思います。

─大学院卒業後はどうされたんですか?

ポスドク(「ポストドクター」の略称。博士号を取得した後に、大学や研究所で研究職を続ける期限付きの研究者)に進むのが最もチャレンジングで魅力的な選択肢だったので、先生が色々な大学を推薦してくれて、フィンランドのオウル大学に行くことにしました。そこでの2年間は研究の武者修行でしたが、今まで以上に自由に、かつ色々な人と共同研究をできたので、この経験は私の強みになりましたね。

研究は自由だからこそ、こだわりを持ってやる


ー研究を続ける上で、何が一番面白いと感じますか?

自分のアイデアを自由に形にできるところですね。企業の研究はどうしても利益優先になりますが、大学の研究はもっと自由です。新しいアイデアをどんどん試せるのがとても良いですね。それが私のこだわりでもあって、学生さんにもそのこだわりを持ってほしいと思っています。
まずは、「わかる」と「わからない」をできるだけ見極めてほしいということですね。学生さんが言う「大体わかりました」って実は何か分かっていないということであり、その分からないところに研究のテーマだったりアイデアとなるポテンシャルが詰まっていると思います。研究室の学生さんに期待していることは、私が知らない分野の専門家にそれぞれなってもらうことです。この場合、学生さんは各自が新しい分野を自力で分かるまで、かつ私を納得させることができるまで学び、理解する体験ができます。さらに、学生間での異分野の融合による面白いアイデアも出てきますし、学生さんが自分の知らない分野を学ぶ方法を身に着けられ、それは社会に出たときに非常に重要なスキルになると思っています。

挑戦を恐れないで


─最後に、先生から高校生へのメッセージをお願いします。

挑戦を恐れないでほしいと言うことですね。大学時代、高校時代は新しいこと、好きなことに挑戦できる良い時期だと思います。まずは目の前にある小さな目標、それはクラブ活動でも、勉強でも、何でもいいのでそれに一つずつしっかり取り組むことが大事だと思いますね。
また、今は『自分が本当にやりたいことって何だろう』って悩んでるかもしれませんね。それなら、目の前にあるやるべきこと、または取り組めることに集中し、継続的に取り組んでみると良いと思います。その結果は、思ったものとは違った結果になるかもしれませんが、継続し、挑戦することで何かしらを得ることは出来るはずですし、そのような経験は、将来必ず役に立つと思います。

文章・インタビュアー:工学府知能情報システム工学専攻修士1年 SK
インタビュー日時: 2024年9月16日

※インタビューは感染症に配慮して行っております。


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