見出し画像

スピンを用いた新たな分析技術を目指して

https://tuatdaizukan.net/

今回は量子物理学の研究をされている、工学部化学物理工学科の畠山温先生にインタビューしました。ぜひご覧ください!

<プロフィール>
お名前:畠山温先生
所属学科:工学部化学物理工学科
研究室:畠山研究室
趣味:体を動かすこと

粒子のスピンとは?


―先生はどのような研究分野で研究をされているのでしょうか? 

研究分野は、量子物理学という、物理の中でも小さな世界の現象を調べる分野の研究をしています。その中でも、特に量子の世界(注1)の粒子が持っているスピンという性質の研究をしています。スピンがその周りの光や電磁場、物質などと相互作用したときにどのようにその状態を変えるかを研究しながら、スピンをいかに正確に観測・制御するかを通じて、スピンを用いた精密計測技術への応用を目指しています。

(注1)原子や電子などを扱うミクロな世界

―スピンというのがイメージがつかないのですが・・・。

全くその通りで(笑)、スピンというのは、名前から回転とか自転というイメージは持てますよね。小さな原子とか電子とか、ナノメートル(注2)ぐらいの、小さな世界の粒子は、粒子のスピンという性質を持っています。粒子がスピンしたりスピンしなかったりというよりは、粒子はずっとスピンしてるんです。スピンという特徴を固有で持ってます、全ての粒子は。なので、スピンを調べるとその粒子が何であるかを知ることができる、あるいはスピンを通じてその粒子の状態がどうなっているのかを知ることができるという特徴があります。あとスピンには小さな磁石の性質も伴っています。なので大きな磁石というのも実は1個1個の電子が持っているスピンが集まって表れているもので、そういう意味でスピンは物質の性質を決めているという面もあります。

(注2)1メートルの10億分の1が1ナノメートル

魅力は不思議をひも解けること


―先生が量子物理学を専門に選んだ理由をお伺いしたいです。

物理というものが面白いなと思ったのは中学校のときで、理科の先生かな。科学雑誌の「ニュートン」って知ってますか?あれを理科の先生が学校でとっていて、見せてくれたんです。それにいろんな記事が載っているんですけど、その中でアインシュタインの相対性理論の解説記事がすごく面白くて、物理っていうのは面白いなと思いまして。その中に、多分「ニュートン」のことだから、時々量子の世界の記事もあったのかなと思います。そのときに量子力学という、不思議だけど面白いことがあって、それがちゃんと物理というもので説明できるってすごいなと思ったのが興味を持ったきっかけだったと思います。

職業として研究者というか大学の先生になろうと思ったのは、多分高校のときです。なんでそう思ったかというと、そのときに読んだ、京都大学の数学の先生が書いた「数学受験術指南」という、受験をいかにさぼって上手にやるかみたいな本があって。

―(笑)

それを読んだときに、大学の先生っていうのはすごくいい加減で、まあ、ええ加減でって感じで(笑)、自由で楽しそうな職業だなと思って、ああ、これだったら物理の大学の先生になるのがいいんじゃないかと思って選びました。

―なるほど。

実際に今の専門をやることになったのは、研究室選びのときに今の専門分野の研究室を選んだからなんですけど、その研究室の先生が研究室紹介のときに、自分の研究を楽しそうに喋ってくれて。レーザーを使って電子の電荷の偏りを測る、みたいな。でも電子の電荷に偏りがあるって別にそんな思ったこともないけど。

―そうですね、ないですね。

電子の電荷の偏りっていう、そういう不思議なことを実験で明らかにするっていうことを話している先生が面白いなと思って、その研究室を選んで、以後こういう研究をしています。

新たな分析技術を目指して


―今の研究分野での今後の展望をお伺いしたいです。

スピンを使って精密に何かを測るという技術が、すごく新しい分析手法として役立てられそうだなという感覚を持っています。

―その分析というのは、分析する物質中に何が含まれているかが分かるということですか?

はい、それが分かりやすいですね。先ほど言った通り各粒子は固有のスピンを持っていて、さらに磁石の性質も持っています。それは(粒子の種類に)固有の磁石の強さなので、それを測れば何の物質か、何の原子かというのが分かるんですけど、スピンを測るのって難しいんです。分析する物質の量がたくさんないと信号が出ないので。だけどうまい具合に工夫すると、少しの量のスピンでも測れる可能性があって、すごく少ない量の物質を測れるような技術を作りたいと思っています。

―それは今はまだできないということですよね。

そうですね。今の技術だとまだできないんですけど、近い将来、この研究室からその技術を作れるのではないかと思っています。

測定のための装置。物質に当てる光を調節し、その光を物質に当てて測定を行う。

高校生に向けて


―最後に、高校生へのメッセージを頂きたいです。

大学は自由にいろいろできる環境で、その自由な空間、環境というのはすごく魅力的だと思うので、ぜひ大学に入ってこういうことをしたいなという、やりたいことがあるような高校生活や人生を送ってもらえるといいと思います。自分がやりたいと思うことや重要だと思うことを、自分で考えて、工夫して、努力して、一生懸命やる。そういう高校生活であったり人生を送ると良いのではないかなと。あと大学は自由である一方で、先生や学校のサポートがあるというのも良いところだと思います。その自分の学生という自由な立場や環境を、自分がやりたいことに使う。そのための努力をする。そういうふうな大学生活を過ごせれば良いのではないかなと思います。そういうのをちょっと思い描いて、ぜひ高校でもいろいろ、勉強はもちろんだけどいろいろやりたいことを、熱心にやってみてきてほしいなと思います。

―ありがとうございます。今の僕にとっても大変勉強になりました。


文章・インタビュアー:工学部化学物理工学科2年 オレンジ
インタビュー日時: 2024年7月17日

※インタビューは感染症に配慮して行っております。

https://tuatdaizukan.net/



いいなと思ったら応援しよう!