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世界におけるフィボナッチ数列と関連する図形
フィボナッチ数列という不思議な数列、数学の話題としては広く知られているものの一つでしょう。この数列の名前になっているのが12-13世紀のイタリア(ピサ共和国)の数学者レオナルド・フィボナッチ、本名ピサのレオナルド(イタリア語: Leonardo da Pisa)です。
本名のほうはレオナルド・ダ・ヴィンチ(ヴィンチ村のレオナルド)と同じ形式で、姓というわけではなく住んでいた土地や出生地が記されているだけで、固有の名前はフィボナッチの場合もレオナルドのみです。フィボナッチは父のニックネーム「ボナッチオ」の息子という意味の諡(おくりな)です。彼は死後しばらくしてこの名で知られるようになってしまい、19世紀の数学史家リーブリによる誤記が決定打となって定着したようです。ちなみに彼はアラビア数字を広めたことでも知られていますが、これも本来インド数字として紹介したかったものが誤解されてしまった名称で、こういう星の下に生まれた人なのですね。
さて、フィボナッチは正確にはフィボナッチ数列の発見者ではなく、彼が著書『算盤の書』(Liber Abaci)で紹介したことで広まりました。
0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, ...
という0を含む自然数の列で、3項目以降のそれぞれの数は手前の2つの項の数の和になっています。この数列の著しい性質が、2つの隣り合う数の比を取ると黄金比1: 1.618…に近づいていくというものです。不思議なことにこの黄金比、自然界のあちこちに顔を出します。
たとえばヒマワリの種の配列は、中心の種の次に360度を黄金比で分割した角度(約137.5度)の位置に次の種がくる、という繰り返しで数千もの種がびっしりと密集しています。この種のパターンを真上から見ると、右回り、左回りの2つの異なった螺旋が描かれていることがわかります。この螺旋は1/4の円弧ごとにフィボナッチ数列の項に合わせて半径が拡大していきます。松ぼっくりを下から見たパターンも同様です。
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さらに、植物はこの黄金比を最大限に利用しているようで、葉も太陽光や雨を受けやすいように、フィボナッチ数列の数の比に沿ってずれた位置に生えています。また木の枝分かれ、気管支の構造にもフィボナッチ数列が現れるそうです。
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フィボナッチ数列にしたがって拡大する正方形を順次配置していくと黄金長方形という図形になります。そして、それぞれの正方形に内接する1/4円弧をつないでいくと螺旋が描かれます。これがフィボナッチの螺旋、あるいは黄金螺旋と呼ばれる渦巻です。さあ、また自然界の渦巻が現れましたね。
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フィボナッチの螺旋は対数螺旋と呼ばれる図形のの特別な場合になっています。対数螺旋は、半径が増えるにつれて、基準から測った角度が半径の対数に比例して増えていく図形で、たとえばオウムガイの貝殻がこれに従っています。
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フィボナッチ螺旋の当てはまる例として、台風の渦やグランドデザイン渦巻銀河の腕が挙げられることがありますが、これらの現象はどちらかというと一般の対数螺旋で表されることが本質というべきでしょう。グランドデザイン渦巻銀河の腕が対数螺旋になるのは(かなり専門的ですが)理論的な裏づけがあります。
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さて、フィボナッチ螺旋や黄金比はどういうわけか人間が美しいと感じる図形で、実に様々な建築やアート作品に用いられています。こちらは挙げるときりがないので、私が個人的に気に入っている北斎の『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』を紹介します。
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締めくくりに、ちょっと不思議な論説を紹介します。私は学生時代、新宮一成先生という方の精神医学の講義を履修していました。新宮先生は『ラカンの精神分析』という著書で「自己は他者を通してしか分からない」ということを式で表現するとフィボナッチ数、黄金比が表れると述べています。正直、この話は私には門外すぎてまったく分からないのですが、新宮先生の名調子を懐かしく思い出しつつ、無責任を承知で挙げさせていただきました。興味のある方は上記の著書をご覧ください。
(2022年9月6日)