
4スタンス理論で「あごを引け」はNGなのか(基本編)
4スタンス理論を発見した廣戸総一教授(骨理学)は著書の中で【「あごを引け」はNGワード】というトピックを取り上げています。

基本編ではレッシュ本部公式からネット上で発信されている内容についてまとめます。
※この記事では一般の方に分かりやすいようにREASH理論や骨理学をまとめて4スタンス理論と呼んでいます。
頭の水平は人それぞれ異なる
4スタンス理論では大前提として「脳が安定して正常にはたらける」状態が大事だと説明しています。
たとえば頭をかたむけた状態ではスポーツのパフォーマンスが落ちたり、計算力や論理的思考力などが落ちるのは有名な話ですね。
しかし、脳の水平角度は全員が同じではありません。
(脳そのものの角度と頭蓋骨の形状の関係はまた改めて書きます)
「フランクフルト平面」と「カンペル平面」
実は4スタンス理論におけるクロスタイプ(A1,B2)とパラレルタイプ(A2,B1)では脳の安定平面がちがうと判明しています。
クロスタイプ(A1,B2)は「フランクフルト平面」という、耳の穴(耳孔)と目の下(鼻骨正中上頂部)を結ぶ線が水平になる状態で安定します。
パラレルタイプ(A2,B1)は「カンペル平面」という、耳の穴と鼻の頭(上顎骨正中下縁部)を結ぶ線が水平になる状態で安定します。
※普段から自然にその角度になっているので無理につくる必要はありません。

パラレルタイプに「あごを引け」は合わない?
この2つの平面を比べた時に、クロスタイプ(A1,B2)が安定する「フランクフルト平面」の方があごを引いているように見えます。
そのためパラレルタイプ(A2,B1)に「あごを引け」というと安定を崩すことがあります。
クロスタイプに「うつむくな」は合わない?
反対にパラレルタイプ(A2,B1)が安定する「カンペル平面」はあごが上がっているように見えます。
そのためクロスタイプ(A1,B2)に「うつむかずにあごを上げて」言うと安定を崩すことがあります。
この件については過去にツイートしたこともあります。
ツイート:「アゴをひけ」の危険性
【「アゴをひけ」の危険性】
アゴが上がると力が出ないと言われます。
しかし、アゴが上がるのは見た目に現れる結果でしかありません。
実際には感覚の多くを司る脳や平衡器の水平が崩れた時にパワーが出なくなります。
首を動かして顔を真上や真下に向けるとバランスが取りにくいのは当然です。
脳が水平安定を感じる角度は人によって異なります。
アゴをひくという指導によって本来の水平面より脳が前傾した状態にされたとしたら、パワーが出ないどころかバランスも取れなくなります。
短距離走のトップ選手が頭の角度と高さを安定させて走り続ける科学的な根拠がここにあります。
脳が安定を感じる角度は人によって異なりますが、そのタイプは大きく分けて2つあります。
口腔歯科の分野ではこれをフランクフルト平面とカンペル平面と呼びます。
カンペル平面で安定する人にアゴをひけと言うのは、バランスを崩せと言うのと同じことかもしれませんね。
フランクフルト平面とカンペル平面のどちらが安定するか、関節の動きや接続の位置等によって産まれた時から決まっており、これはそのままクロスタイプとパラレルタイプの差とも言い換えられます。
フランクフルト平面をクロス平面、カンペル平面をパラレル平面と呼ぶことも出来ます。
ちなみに出典リンク先ではイチローはカンペル平面という記述がありますが
ルーティンの途中を切り取った写真がたまたまカンペル平面に見えています。
実際にはクロスタイプのイチローはルーティンの最後(袖を手繰る辺り)で、きちんとクロス平面を作ってから構えに入ります。
まとめ
「あごを引け」または「あごを上げて」は脳が自然に安定する角度を崩す可能性があります。
深い考えなしに「よく言われるから」と安易につかうと逆効果になるかもしれません。
もし反対の平面になっていてもそこだけすぐに戻せばいいとは限りません。
そもそもタイプごとに自然に安定する角度なので、意識的に変えるものでもありません。
違うタイプの見た目になっているのはあくまで結果です。
そうなっている原因がどこかにあるので、原因を無視すると余計におかしくなります。
まずは4スタンス理論の基本である「安定立位」を見直してみてください。
骨で立てているときは自然に自分のタイプの脳の角度になるはずです。
次回予告
基本編は知識についてまとめました。
実践編はどんなときに脳の安定平面が現れるか。
おまけ編は自分の平面の見つけ方と「正しくあごを引く」について。