4スタンス理論の学び方(選手の立場編)
4スタンス理論といえば4タイプの最適なうごき方があるのが有名。
廣戸道場に行くとプロ野球選手が横で施術を受けてるなんてこともよくあります。
でもあえてタイプ別を学ばない選択もあるのではというお話。
今回は「選手の立場」編。次回は「指導者の立場」編です。
※このnoteでは一般の方に分かりやすいように骨理学・REASH理論全般を指して4スタンス理論と呼んでいます。
※トレーナー規約の関係上、有料部分も4スタンス理論そのものの解説は含まれません。理論解説は書籍かマスター級のレッスンを参照ください。
■はじめに
初心者から国際大会出場者までスポーツ選手のトレーニングを担当させていただく中で、レベルに関係なく「この人は4スタンスタイプを伝えない方が良い」と思うことがあります。
楽器奏者のコンディショニングでも、ネットのアフィリエイト記事など変な形でタイプについて知るくらいなら何も知らずに演奏したほうがいいと思っています。
その根底にはどんな考え方があるのか、私の好きな卓球や楽器演奏を例としてご紹介します。
この記事のまとめ
■タイプ別ってそもそも何?
私が4スタンス理論(骨理学)の公認トレーナーとなった理由は、「みんなが守るべきところと、人によって違ってもいいところが判別できる」ようになるからです。
※こちらのnoteでも詳しく書いています。
チキータは手首?肘?
例えば卓球選手がチキータという技術を習う場合。(バイオリンのボウイングでもかまいません)
ある指導者は「もっとひじを前に突き出しなさい」
別の指導者は「ひじは横で手首を引き入れなさい」
など人によって違うことを言います。
中には高レベルすぎて理解できない言葉もあります。
ヒジ派と手首派どちらかは間違いでしょうか?
それとも手首もヒジも肩もすべて意識して同時に動かせば100点満点でしょうか?
もちろんそんなはずはありません。
となり合う関節は役割分担している
人間はとなり合う関節を同時には動かしません。
勢いで両方の関節がうごく瞬間はありますが、同時に力を加えて動かそうとするのは困難です。
となり合う関節を両方止めるとロボット風の動きになったり、両方動かすと妖怪や人ならざる者を表現する動き(歌舞伎や能では表現技法に使う)になります。
関節がうごく順番や安定するポイントは人によって異なります。私には私の、あなたにはあなたの正解があります。
人それぞれの正解を骨格の特性で分けると4タイプに分類できます。ばらばらにみえる個人差も、骨理学における骨格規則性から科学的に判別できます。
逆のタイプをやると?
私は小学生のころ、水泳も少年野球も卓球も、A1じゃないのにたまたますべてA1タイプ向きの指導を受けていました。
すると中学生のころには背骨と足首を疲労骨折し、大学生のころはヒザが痛くて30分も歩けませんでした。
タイプ違いをひたすら反復練習したら、身体中がボロボロになり前屈がヒザまでしか届かずそもそも長座すらできないほど体の動かない大人になりました。
今では柔らかいですねと言われたり、アスリートに動きの見本が出来たりするのは、4スタンス理論で健康を初めて手に入れたからです。
■今までの「型」を変えられない人
とはいえ全員が今すぐ自分のタイプの動きに変えるべきとは限りません。たとえばほんの少しのダウンタイムすら許されない人はその一例。
本来の4スタンス理論では「タイプに無理やりあてはめる」ことはしません。なのでタイプのうごきを無理やり強制するとリスクがあります。私たちはタイプが自然にでてくる身体づくりのトレーナーなので、その場でタイプ別を試してもらうのはあくまで違いを知ってもらうためです。
たしかにタイプのうごきに当てはめるだけでも、身体的負担は減り出力が激増します。しかしなんでもパワーアップすればいいわけではありません。
技術との兼ね合いや感覚面の慣れなど全体的なパフォーマンスを安定させる時間も必要になります。試合直前など、急激に変えるのは避けた方がいいタイミングもあります。
私がトレーナーとして駆け出しのころには、一気に改善しすぎた失敗談もあるのでまた別の記事に書こうと思います。
一瞬たりとも音色の変化が許されない人
とある世界的に有名なフルート奏者で「最新のフルートを試すと明らかに音色は良いけど、ステージが忙しすぎて慣れる時間が取れないから変えない」という人がいます。(有名なインタビュー記事なのでだれのことかわかった人も多いと思います笑)
同じように指導者としてはタイプ別の違いをきちんと考慮したり、日常生活には4スタンス理論を活用しているものの、ステージではあえて元の姿勢や動きを残している演奏家の先生もいます。
プロは音が変わると表現の仕方も調整する必要があります。音が良い方に変わったとしても「その音にどんな意味をもたせるか」が重要なので、プロ奏者は1曲を通して、1公演を通して精密にバランスを調整する必要が出てきます。
逆に学生やアマチュアはそこまで微妙な差を気にするよりも、4スタンスで爆音になったり指がまわるメリットの方が圧倒的に大きいので演奏会直前でもあまりデメリットはない場合が多いです。プロでも調整期間を多少とれるならあまり気にする必要はありません(むしろ表現力の幅が広がる)。
■動きが綺麗になると困る人
私のクライアントは卓球選手も多いのですが、卓球はつくづく不思議な種目だと感じます。筋骨隆々な成人男性が、小学生の女の子にボロ負けすることがよくあります。
全国大会に出る選手が、スマッシュを1本も打たない(打てない)選手に負けることもあります。パワーや身体能力が技術や戦術でかんたんにひっくり返る競技です。
「人と違う」はそれだけで強みにもなる
おもしろいのは「フォームがきたない」と言われる選手の球はけっこう取りづらいことです。リズム感も球の性質もほかの人と違うのでみんな慣れていません。
卓球は大きく分けると攻撃型と守備型の戦術に分けられます。
守備型では台から離れてまもる「カットマン」が有名です。
カットマンは守備型とはいえ台の遠くでたくさんの運動量が必要です。そのため身体能力が高い人も比較的多いようにおもいます。
反対に台の近くで守備をする戦型もあります。
特殊な用具でナックル性の揺れる球や遅いリズムの球を駆使して点をとり、ショートマンと呼ばれることがあります。
この戦型は運動量が比較的すくなく、初心者でも勝ちやすいという理由で好む指導者もいます。その考え方の良し悪しは別として、私の出身中学でも運動が苦手な選手がこの戦型になる傾向がありました。
似た話でボクシングなどの格闘技では変拍子系のリズムの選手が一定数います。5拍子や7拍子のようなリズムだと相手がタイミングよくガードできないのでパンチがよくあたるそうです。
短期的か長期的か
卓球のショートマンは「人と違う状態」そのものにメリットがある例です。運動が苦手なのは弱点だと思っていたら、気付くと強みになっていたパターンです。
ところが4スタンス理論を知ると「運動が苦手な人は自分本来の動きを教えてもらえなかっただけ」と気付くので、わりとすぐに普通の戦型もできるようになってしまいます。
そこで遅い球で点をとる選手が速い球へ変わろうとしたら、そのあいだに「ふつうの球」を経由します。相手にとっては取りやすくなるので一時的に試合で勝ちづらい時期が来るかもしれません。
「今すぐ勝つことを選ぶ」ならタイプに合っていない状態を許容することもあるかもしれません。とはいえ昔の私のようにからだを壊すリスクと天秤にかけていいのか慎重に考えるべきです。4スタンストレーナーだけでなく本人やコーチのコミュニケーションの上で総合的な判断が必要になります。
ちなみに上記は4スタンス理論のコーチ級までの話です。マスター級ならだれでも元のメリットを残したまま本来の軸を手に入れて強打もできるようになるテクニックをきちんと持っています(ライセンスの取得試験にも含まれます)。
「運動が苦手だから運動量の少ない戦型」という固定観念をとりはらえば、もっと戦術の幅が広がるのでこのデメリットはほぼ影響がなくなります。
■調整に間に合わないと興行に関わる人
あるプロ野球球団が4スタンス理論を本格導入したとき、ピッチャーは開幕からかなり好成績なのに、バッターはGWごろまで不振が続きました。
ここから先は
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?