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夏は夜・清少納言

夏は夜。月の頃はさらなり。闇もなほ、螢の多く飛び違ひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。

はい、夏です。勝手に書いていきますんで、それ違うとかあったらご指摘ください。優しくね。私も勉強になりますんで。
では、夏、いってみよー!

夏は夜をかし、ですよね。だって涼しいもの。月が出てりゃもっといい。風流ですもの。いや、月なくってもいい。闇夜でも蛍がいっぱい飛んでたら、ほんといい。

で、躓きます。
何で、蛍? 
私の乏しい知識によると、蛍って、万葉集にも古今和歌集にも、殆ど歌われてなかったような。源氏物語には、部屋にたくさん蛍を放つ美しい場面がありますが、源氏と枕の成立を見た時、若干枕が早い。

枕草子  
 1001年成立
源氏物語 
 1002年〜1008年成立

とすると、「蛍は綺麗」と大々的に言い出した、「ぺ」の人は、もしかして清少納言? 
(因みに「ぺ」の人って、言い出しっ「ぺ」の、「ぺ」)。
誰か知ってたら教えて下さいな。
ともかく、枕の頃までは、蛍は気色悪い嫌われもんの虫であったと推察されます。霊とか怪しの類いと思うたのかしら。
で、清ちゃんは頑張ります。アタイがみんなの常識変えちゃろう!
つまり、蛍を美のカテゴリーに入れちゃろう!
そんで、納得してもらおう!
で、冒頭、夏の部分です。
夏の良きものに「夜」をだす。
みんなニッコリその通り。
夏の良きものに「月」をだす。
みんなニッコリその通り。
夏の良きものに「蛍」をだす。
みんなニッコリそ……あ!いや、口車に乗るとこやった、危ない危ない。蛍なんぞクソ虫じゃ!おとといこーい。
 と、しれっとええもの並びで置いといて、勢いで誤魔化すには無理がある。なんか読者を納得させんと。
で、清ちゃんが考えたのが、"平安女性の好み"。
とにかく平安の女の子は、小っちゃいもの大好き。他にも、淡いとか細いとか少ないとか、そう言うのが大好き。カッワイーのである。
 逆に無骨にデカいもの大嫌い。黒々としたものとかぶっといものとか数あるものは大嫌い。
これ、使ったんですね。使った証拠に、春でやたらこの類いの言葉、頻出します。
 ようよう白くなりゆく空
 少し明かりて
 雲の細くたなびきたる
ね。で、夏ですが、あれれ?
 蛍の多く飛び違ひたる
「多い」て言っちゃってるよ。これじゃ、女子、納得しないじゃん。
て、安心して下さい。履いてます。これ、恐らく清ちゃんの作戦なんですね。
あら、蛍が多いって、お気に召しませんか。
いや、それは不調法。めんごめんごでございます。
それならば、これではどうですか。えい!やー!

ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。

「多く」がダメなら、「一匹二匹」、「ほのかに」、「うち光りて」だと、どうですか。数少ないものが、淡く、ほのかに、うち光るさま、どうでございましょうや。
か、か、か、か、かわゆーい! をかしあるあるあるまくり!
でしょ。そうでございましょう。そうざんしょ。
で、読み手が自我を持ち直す前に、清少納言はたたみかけますな。

雨など降るも、をかし。
(今まで暑さに茹っていた殿上に、ポツ、ポツ、ポツ、ザー、と雨が降る。みるみる気温が下がって、なんとよい!)

そーです。清少納言は、当時の、皆んなが思うステキで、蛍をサンドイッチしたのです。
サンドイッチのレトリック。
数のレトリック。
これを駆使して、清少納言は伝えたかったのではあるまいか。
ね。蛍って、綺麗じゃない?
過去の常識じゃなくってさ、自分の頭で想像しなよ。
イマジン。
想像してごらん。キレイくないですか。蛍って。

闇もなほ、螢の多く飛び違ひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。

確かに、いとをかし。





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