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三十二帖「梅枝」角田訳源氏(薫物、管弦、書)

 週遅れの盆休みで田舎に帰っている。老母の話し相手の一週間になる。TVが始終付いていたり、久しぶりに会う老母が次から次に話しかけてきたりするので、ほぼ読書の時間がない。「梅枝」も切れ切れにやっとこさ読んだ。これではまともに感想も書けないので、一週間は投稿を遠慮する。まあ、これも親孝行だと思って、老母の昔話に付き合うとしよう。

 「梅枝」では、明石の姫君の入内が決まり、裳着の儀が行われる様子が書かれる。
 祝儀に配るものなど用意するなか、源氏は薫物を調合している。紫の上も競って調合している。調合の仕方は秘伝である。興にのった源氏は「皆で薫物を出して競おう」
悪い癖である。判者は陣中見舞いに現れた蛍兵部卿宮。気の毒なことである。
 各姫君たちの持ち寄った薫物は、どれも素晴らしい。兵部卿宮は案の定、判じることができない。
 ここから管弦の遊びになり、姫の草子箱に入れる草子の選定になる。昔のもののほか、これも各姫君や達筆なものたちの書を集めることになる。書は源氏が様々に批評する。和歌が書けるだけでなく、その書き振りが、当時いかに重視されていたかがわかる。書は、貴族の嗜みというか教養であったのだろう。それにしては、「光る君へ」での道長の書は酷いな。
 書と言えば、京都の霊山歴史館で、西郷隆盛と坂本龍馬の書が並んでいるのを見たことがある。
 西郷隆盛の書は、誠に威風堂々、力強くしかも乱れがない。沈思黙考、立つべき時は立つ。まさにそういう、どっしりとした書であった。
 坂本龍馬の書は、型破り、自由奔放、思うままに書き殴った、悪く言えばグチャグチャの代物だった。
 思わず笑った。まさに書は人を表すだなぁ、と感じ入ったものだ。

 明石の姫君の裳着の儀は滞りなく行われる。ただし、実母の明石の君は呼ばれない。身分がないからである。切ないものだ。

 娘と言えば、内大臣の娘、雲居雁であるが、鬱々とした日々が続いている。こんなことならと、夕霧との仲を割くのではなかったと内大臣は今更ながら後悔し始める。
 夕霧も雲居雁に未練が残り、他に目が向かない。源氏は他に適当な姫君もいるのだから、と水を向けたりするが気乗り薄の様子である。
 どうなるんだろう、この二人。


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