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コインロッカーベイビーズ 村上龍

「限りなく透明に近いブルー」を読んで、福生には近づくまい、と思った。「海の向こうで戦争がはじまる」を読んで、この人はあっち方向の人か。もう読むことはないだろうて思た。で「コインロッカーベイビーズ」、半年くらい読まんでいた。が、なんかずっと評判いい。で、読んだ。たまげた。これはすごい。SF嫌いの私が言うのだから間違いない。帯で埴谷雄高も褒めてたんで間違いない。なんという創造力。なんという描写力。主人公が叫ぶ「俺たちはコインロッカーベイビーズだ!」そうだ!俺もだ!つて叫んでた。
あと、上巻の終わりのTV中継の最中の銃撃シーン、痺れた。様々なメタファーが具体化され、物語になっている。エンターテイメントで純文学。この人は、これからどこまでいくのかと息をのんだ。
 が、行かなかった。「愛と幻想のファシズム」は、面白かったけど、なんだか焼き直しみたいだった。中上健次は「あんなもんダメだ。ちゃんと言ってやった方がいい」みたいなこと言ってた。「半島を出でよ」は、更にアレで途中で読むのやめた。ずっと感心しなかったが「トパーズ」はよかった。先輩に話すと「汚い」と一蹴された。まあ、汚いちゃあ汚いが。それに村上龍的には小品だ。新聞連載の「イン、ザ、ミソスープ」で男が首落とされちゃうが、同じ時、酒鬼薔薇事件が起きた。この人は時代に愛されてる(変な言い方だが)、と思っりした。が、その後、やはりパッとしない。
 もう、あまり読まない。結局、「コインロッカーベイビーズ」が最高作だと思う。そういえば、長谷川和彦が映画を撮る話がずーとずーとずーとあって、結局撮らなかった。あの世界観を映像化するのは無理だったか。残念である。金もかかりそうだし仕方ないか。
「太陽を盗んだ男」の監督は、「コインロッカーベイビーズ」に翻弄された後半生だったかもしれない。

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