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二十四帖「胡蝶」角田光代訳源氏物語(源氏、やっぱりな)

 六条院のその美しさと催し物の見事さが描写される。どうやら六条院は、御所並みにデカそうである。これじゃ、おいそれと明石も娘に会いに行けんなあ。
 玉鬘の噂が流れて、文がわんさか届く。源氏はまんざらでもない。源氏んとこに人はくるが、今までこうした色めいた華やぎのないことを残念に思っていたからである。
 中に、弟の蛍兵部卿宮や右大将(髭黒)からの文もある。夕霧は自分の姉ちゃんだと信じて大人しくしている。代わりに内大臣(玉鬘の父)の息子柏木から文が届いている。姉弟と知らないのだから仕方ない。(玉鬘22 柏木20 源氏36)
 だから、言わんこっちゃない。隠しとくと揉めるって!
 そればかりではないぞ。源氏自身も養父として、玉鬘にあれこれ恋の指南をするのだが、自分も参戦する気満々である。なんと!
 んで、さりげなく紫に(!)、「あの娘はいい子だ」とか言う。紫は見抜いてて、「心の底からあなたを頼ってるなんてお気の毒だわ」と返す。
 かつて紫は子供の時分、源氏に攫われ娘として育てられた。そしてある日、父と思っていた源氏に抱かれ、妻となる。紫にしてみたら、大ショックである。
ーーああ、この人、また同んなじことしょうとしてはるわ。玉鬘はん、お気の毒やなあ。
 言われて源氏は、ひのとみちに外れたことを、またしそうだなあ、とか自分で思う。
 こいつ!
 しかし、やはり思い止まれないのが源氏で、とうとう玉鬘に言いよる。
「黙ってたら、わかんないよ。だから、ね」
 とか言うが、全力で玉鬘に拒否られる。
(私はここで映画「鬼龍院花子の生涯」で鬼政(仲代達也)が養女松恵(夏目雅子)に襲いかかるシーンを想起した)
 なるほど、玉鬘を父親の内大臣に合わせんのはそう言う思惑があったからなのか。
 しかし、玉鬘は逃げ場がないなあ。22で恋もしたことがなくて、ただでさえ心細いのに、頼れるはずの養父からは言い寄られ、文を送ってくる有力花婿候補は、蛍兵部卿(奥さん亡くなったジジイ)と右大将の髭黒(奥さん年取ったんで若いのが欲しいジジイ)。あと、事情を知らない柏木(弟)。本当の父(内大臣)は、私のことを知らない。知ったからと言って、頼りになるかわからない。
 美人さんはホント大変です。特にこの時代、好きな人に女の側から告ることはできませんからなあ。ていうか、言いよる男たちの中から、お相手を見つけるしかないわけです。そらつらい。選択権が限られる。
 小野小町も多分そうだったんでしょうな。恋しいあの人から文は届かず、深草少将みたいなヘンなんばっかりやってくる。夢見てる時しか、幸せを感じられんかったって、可哀想すぎますな。
 うたた寝に 恋しき人を 見てしより 夢てふものはたのみそめてき
 小町は生涯独身だったそうですが、玉鬘はどないなるんでしょうか。






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