安部公房のこと
ここのところ短編小説を書いていた。20枚くらいのもんなんで、筆が乗れば一日で書けるが、筆が乗らない。続けて書くと、発想が枯渇することがわかった。何事も無理してはいけない。昨日、本を段ボールに入れて持ち上げたら、腰をやった。無理はいけない。今後は、週一ペースで行きたい。その他の日は、また本の話やらなんやらくだらないことを書こうと思う。
で、今回は安部公房。偉い作家である。死んじゃわなければ、ノーベル賞が取れたと皆んな言っていた。実験演劇とか実験映画を始めたのは、寺山修司より早かったか、同時期ぐらいである。二人に交流があったかどうかは知らない。小説はアバンギャルドである。
最初に読んだのは「壁ーSカルマ氏の犯罪」であった。何がなんやらわからなかった。その後、大学に行ってスゴイスゴイと聞いたので、も一つくらい読むか、と「砂の女」を読んだ。これは面白かった。男があり地獄みたいな小屋に女と閉じ込められ脱出できない、という話である。映画も見た。岸田今日子は若い頃から「大奥」みたいな喋り方だな、と感心した。併映で「穴」という映画もやっていて、文学的香りの高いトワイライトゾーンみたいな話だった。田中邦衛の殺し屋がカッコよかった。
調子に乗って、「第四間氷期」「けものたちは故郷をめざす」「他人の顔」「箱男」「密会」「カンガルーノート」などを読んだ。一番面白かったのは「箱男」だった。でっかい段ボール箱に入って暮らす男の話である。今度、映画化されるらしい。失敗のにおいしかしてこないが大丈夫だろうか。
死んだ後、安部公房スタジオの看板女優山口果林が20年来の恋人であることを公表する本を出した。安部公房は妻帯者である。私はビックリしたが、界隈の人には周知の事実であったようである。安部公房、そういうとこだぞ!
あと、日本で最初にワープロで小説を書いたとか、自動車のチェーンの発明で特許をとって大儲けしたとか、そういう噂があった。本当か嘘か知らない。
煙草が目の敵にされはじめた頃、新聞に煙草擁護のエッセイを書いた。中に「煙草を吸うんじゃない。時間を吸うんだ」という一節があって、さすが小説家は言うことが違う、と感心した。