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高校生向けアントレプレナーシップ教育カリキュラムの設計:無茶苦茶(2022年版)

大学は後期の定期試験中だが,私はと言えば来年度のカリキュラムづくりに勤しんでいる。前回の記事では自分にとってのアントレプレナーシップ教育のあり方を図示したものをアップした。

今回はそれをもう少し具体的に示そうということで,ここでもたびたび紹介してきた福岡女子商業高校とのコラボ授業を例に取り上げてみる。2022年も実施する方向で調整中。早いもので4年目になる。2019年と2020年は各学年の進学クラス1クラスのみ,2021年はそれに3年生全クラスへと展開している。

2021年の3年1組の生徒は3年間この授業「福大コラボ」を受け続けたことになる。本来であればこの成果を研究として示すべきものなのだろうが,教育効果はいつ現れるかわからない。高校で授業を受けている間に発現することもあるかもしれないし,潜在的に影響を受けていずれ気づくこともあるかもしれない。校長先生にお願いして,卒業後も生徒さん数名にインタビューできる機会をお願いしている。果たしてどうなることやら。

これに関連して書けば,先日高校と所属学部が連携協定を正式に結ぶことになり,日本経済新聞にも記事にして頂いた。

そして,前回の記事にも示したように,この取り組みのショートバージョンとして,大分県日田市の日田三隈高校の2年生7人と共同で商品企画,販売を行うプログラムを実施した。

1/20の西日本新聞日田・玖珠版に記事が出ました(1/21追記)

さらには,今日になって長崎県壱岐市の壱岐商業高校でも展開することになり,頭の中を整理したくてこの記事を書くことにした。これまでの高校で続けてこられた課題研究(探求学習)の中身を一部アレンジし直しての「起業体験」。先般訪問した企業にもご協力頂かないと進まないかもしれない。

意図せず拡大しつつあることに多少の懸念材料はあるが,大事なことはすぐに効果を求めずに,長くコツコツとやることだ。講義内容のアレンジや地域性で反応が変わる可能性があることを考えれば,アントレプレナーシップ研究や大学生の学びへの影響を調査できる機会にもなる。

ということで,頭の整理をしようと書いたのが下の図だ。

まだハチャメチャではあるけれども,こんな感じかな。結構高レベルなことを教えるカリキュラムになってしまった(笑)。学年ごとのグラデーションを意識して,自分自身への気付き,組織や社会の中で働く自分,他者との協同といったことを往還できるような仕掛けを作れないかと思案中。あくまでも,講義内容をプロットしたに過ぎない。

こういうことができるのも,学生が丹念に授業内容を作り込んでくれていることに起因する。本当に学生が頑張ってくれている。

高校生へのアンケート調査で理解度等も調べているが(テストをしているわけではないので,あくまでも申告制),損益分岐点分析のような計算,具体的な技法よりも,繰り返し「一歩踏み出す勇気」だと伝えてきたアントレプレナーシップや,組織で目標を共有することの重要性といった抽象度の高いことが伝わっていた模様。

※ 一番大事なことは、ちゃんと会計〔金勘定〕を教えていることなんです。創り出した付加価値をお金で回収して、事業の継続性を保ちながら所得を増やす。これを理解してもらうことが重要だと学生には伝えています。一応、会計教育やってます。

生徒は授業を受けるにあたり事前にワークを行うことが条件になっている。2020年から導入したいわゆる反転授業である。興味ある方はぜひご覧頂ければ。相当ムチャクチャなことをやってます。レベル高いと思う。

そして,2021年度は女子商マルシェが中止になって,1回分をこれまでの授業や高校生活のふりかえりに使うことができたことで,それまで不十分だった理解が深まったこともあるようだ。いわば,点が線で繋がり,3年生ともなれば線から面を構成できた印象か。彼女たちがどこまでこの学びを活かせるかはわからないが,何かしらの形で影響を与えていると信じたい。

毎回学生が高校生向けに授業理解度を尋ね,自分たちの実感とすり合わせながら内容を微調整しながら授業を構成していく。3年生を各クラスのリーダーとし,経験値のある4年生とともに授業内容を作り込む。相当な負担だと思うが,その分だけしっかりと企画力,その実行力はついているように感じる。

っつーか,ここまでやったら売り物になるよね。パッケージでいくらみたいな(笑)。

4年目に入っていくつかのパターンを試しながら,いろんなことがチャレンジできるのは嬉しいことだ。不甲斐ない私の道を切り開いてくれるのは,いつも彼らだ。

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