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金原ひとみ「ミーツ・ザ・ワールド」を読んで
金原ひとみさんの作品はエッセイしか読んだことがなかった。
金原ひとみ「パリの砂漠、東京の蜃気楼」(集英社)
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書かなければ生きられない、そして伝わると信じていなければ書けない、私は生きるために伝わると信じて書くしかない。デビュー20周年
パリと東京。二つの対照的な都市を舞台に綴る、著者初のエッセイ集。
一歳と四歳の娘を連れ、周囲に無謀だと言われながら始めたフランスでの母子生活。パリで暮らし六年、次第に近づいてくる死の影から逃れるように決意した、突然の帰国。夫との断絶の中でフェスと仕事に混迷する、帰国後の東京での毎日。ずっと泣きそうだった。辛かった。寂しかった。幸せだった──。二つの対照的な都市を舞台に、生きることに手を伸ばし続けた日々を綴る、著者初のエッセイ集。
生きることのままならなさやその感覚。
分類することはあまりしたくないが分類すると私もそちら側の人間なので読んでいて心地よかった。
小説も読んでみたいなと思いつつもきっかけがなく時間が過ぎた。
この間たまたま、金原ひとみさんとゆっきゅんの対談動画を観て、その対話があまりにもよくて、2人とものことが大好きになり、「ナチュラルボーンチキン」を読みたい!と思いつつ、また時間が過ぎた。
そうこうしているうちに、「ミーツ・ザ・ワールド」が文庫本化され、ゆっきゅんが解説を書いていると知った。
金原ひとみ「ミーツ・ザ・ワールド」(集英社)
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【第35回柴田錬三郎賞受賞作】
死にたいキャバ嬢×推したい腐女子
焼肉擬人化漫画をこよなく愛する腐女子の由嘉里。
人生二度目の合コン帰り、酔い潰れていた夜の新宿歌舞伎町で、美しいキャバ嬢・ライと出会う。
「私はこの世界から消えなきゃいけない」と語るライ。彼女と一緒に暮らすことになり、由嘉里の世界の新たな扉が開く――。
「どうして婚活なんてするの?」
「だって! 孤独だし、このまま一人で仕事と趣味だけで生きていくなんて憂鬱です。最近母親の結婚しろアピールがウザいし、それに、笑わないで欲しいんですけど、子供だっていつかは欲しいって思ってます」
「仕事と趣味があるのに憂鬱なの? ていうか男で孤独が解消されると思ってんの? なんかあんた恋愛に過度な幻想抱いてない?」
「私は男の人と付き合ったことがないんです」
推しへの愛と三次元の恋。世間の常識を軽やかに飛び越え、幸せを求める気持ちが向かう先は……。
金原ひとみが描く恋愛の新境地。
大切な人とのわかりあえなさ。
私はコミュニケーション(言語化、伝達)が苦手やのに心の中が複雑すぎるから、常にいろんな人に対して「なんで私のこと、わかってくれへんねんやろう」ってめちゃくちゃ思いながら生きてきた。(きっと相手にもそう思われることが多かっただろう。)
なんでなんでって思い続けた最後に、あ、この人にはどんなに言葉を尽くしてもきっとずっとわかってもらえないのだろう。と見切りがついたときの絶望。大事な人であればあるほど、傷つく瞬間。
その一つとして自死に対する考え方のちがい。
私はどちら側にもなったことがあるから、ライとゆかりん、どちらの気持ちも少しずつわかる。
ありのままの自分で生きることが推奨されてる風なのに、結局、社会の枠からはみ出そうになったり、はみ出ている人には、投薬。治療。
社会の枠からはみ出る人を薬や治療で押さえつけているだけ。
でもそれでラクになってる人いるやん、じゃあ治療するなってことか、とかじゃなくて、よく考えたら根底がおかしくて、それで幸せに、って、その状態ってその人の本来の姿、本来望んでいる生き方なん?っていうこと。
理解されない苦しみを、理想を押し付けられる苦しみを知っているのに、同じように誰かに押し付けてしまっていること。私はこれに気づいたときからいろんなことが本当に耐えられなくなってきた。
みんな、気を遣ってくれたり、大切に思ってくれたりする。でもそんなものがほしいんじゃないって思う。私が求めているのはそんなことではない。
設定やストーリーが面白い。登場人物もも魅力的。
とくにユキちゃん。何かに病的に頼らないと自分を保てない人、狂う人、好きになっちゃう。
先にエッセイを読んでいたからとくにわかりやすかったと思うが、著者の思考が随所に読み取れた。自分を肯定してくれていると感じられた。どうやってでも生きていいよなって、こうやってちゃんと言われるとそれだけで生きていることに背中を押してもらった気もちになる。
普段はなるべく図書館とか古本屋で本を得ようとしているけれど、この本は今、このタイミングで読むべきだ!ってときがあって、この本にはそれを感じたから本屋で新品を買った。
そういうのってちゃんと、今の心に届く本で、外れない。私には本選びの才能がある。