【資産税】原価法によって建物を評価する際の減価償却方法について
⑴原価法に関する概略
土地付き建物を一括取得した際にその価額について区分されていないケースはままある。そのような場合に建物の価額をどのように算定するかが問題となる(土地については割愛)。
不動産鑑定評価基準(以下、「本基準」という)によると建物の鑑定評価については原価法、取引事例比較法及び収益還元法が一般的な手法とされている(本基準21頁)。
ここでいう原価法とは「価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法」をいう(本基準23頁)。
再調達原価については「対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額」と定義されており(本基準23頁)、その計算方法には直接法と間接法がある…が、長くなるので割愛。
減価修正は、「減価の要因に基づき発生した減価額を対象不動産の再調達原価から控除して価格時点における対象不動産の適正な積算価格を求める」方法をいい(本基準24頁)、耐用年数に基づく方法(以下、「耐用年数法」という)と観察減価法によって減価額を算定することとされている。
耐用年数法とは、「対象不動産の価格時点における経過年数及び経済的残存耐用年数の和として把握される耐用年数を基礎として減価額を把握する」方法であり、観察減価法は、「対象不動産について、設計、設備等の機能性、維持管理の状態、補修の状況、付近の環境との適合の状態等各減価の要因の実態を調査することにより、減価額を直接求める方法」である(本基準25頁)。
⑵不動産鑑定評価基準における減価償却について
さて本題。耐用年数法について検討したい。
「耐用年数法」の償却方法は次のように示されている(本基準25頁)。
① 耐用年数に基づく方法
耐用年数に基づく方法には、定額法、定率法等があるが、これらのうちいずれの方法を用いるかは、対象不動産の用途や利用状況に即して決定すべきである。
このように、減価償却方法については「用途や利用状況に即して決定すべき」という非常にあやふやな指示なのである。
税務上、建物の償却方法はその取得時期によって異なる。平成10年3月31日以前に取得した建物については旧定額法ないし旧定率法を用いていた。そして、平成10年4月1日から平成19年3月31日までの期間は旧定額法により、平成19年4月1日以降に取得した建物は定額法によって償却することとされている(国税庁・T&A No.2100 減価償却のあらまし)。
1つ目の問題は、平成19年3月31日以前に取得した建物について減価修正を行う場合、旧定率法や旧定額法をもって減価額を算定することは認められるかという点である。
そして2つ目の問題は、建築時期が平成19年3月31日の建物を平成19年4月1日以降に取得した場合(すなわち中古建物)、旧定率法や旧定額法をもって減価額を算定することは認められるかという点である。
⑶税務上の取扱い
税務上、土地付き建物の取得価額区分については(譲渡所得に関してではあるが)国税庁の「建物と土地を一括で取得している場合の『建物の取得価額』について」で説明されている(日本不動産鑑定協会・土地・建物の内訳価格の算定にかかる対応について(案) 6頁)。
2 使用方法
(1) 譲渡建物の建築年に対応する建築価額表の建築単価(年別:構造別)にその建物の床面積(延床面積)を乗じた金額をその建物の取得価額として計算する。建物がマンションである場合の床面積は、その者が有する専有部分の床面積によることとして差し支えない。
(3) 中古の建物を取得している場合には、当該建物が建築された年に対応する建築価額表の単価に床面積を乗じて求めた建築価額を基に、その建築時から取得時までの経過年数に応じた償却費相当額を控除した残額を取得価額として計算して差し支えない
この説明によれば、減価償却方法は建築時の減価償却方法、すなわち平成19年3月31日以前の建築物であれば旧定率法ないし旧定額法によって算定することが認められると解して良いだろう。
逆に、これらのケースで定額法を用いて算定することが認められるかは微妙なラインである。再調達減価を建築年の標準建築価額によって簡便的に算定している以上、建築時の減価償却方法に従う方がスマートなのではないか。
余談だが、契約書等に建物と土地の価額が記載されている場合(区分済)、契約書等に消費税額が記載されている場合(実質的に区分可能)については、そもそも取得価額が明らかであるため原価法等を使用することは認められない(日本不動産鑑定協会・土地・建物の内訳価格の算定にかかる対応について(案) 7頁)。
⑷参考文献
・社団法人日本不動産鑑定協会「土地・建物の内訳価格の算定にかかる対応について(案)」
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