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平行移動と直線の式

点$${(x_1,y_1) }$$を$${ x}$$軸方向に$${ \alpha}$$、$${ y}$$軸方向に$${ \beta}$$平行移動した点を$${ (x_2,y_2)}$$とすると、
$${ x_2=x_1+\alpha,y_2=y_1+\beta}$$
となり、
関数$${y=f(x) }$$を$${ x}$$軸方向に$${ \alpha}$$、$${ y}$$軸方向に$${ \beta}$$平行移動した関数は、
$${y-\beta=f(x-\alpha) }$$
となります。
これらを、覚えてますか?
特に関数のほうは、直線や円の式で良く使われます
さらに2点$${(x_1,y_1),(x_2,y_2)}$$を通る直線の式は、$${x_1 \neq x_2}$$のとき、
$${y-y_1=\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} (x-x_1) }$$
または、
$${y-y_2=\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} (x-x_2) }$$
となります。
これらも、よく使います
これらの式は、丸暗記して使えるようになっても、あまり意味はありません
この理由は、変化の割合と平行移動をわかっていれば、すぐに式の導出ができるからです。
この導出に必要な変化の割合と平行移動の考え方は、他にも生かせます
特に変化の割合は中学で習い、その後あまり使わないので、忘れている場合があるでしょう。
変化の割合は、数学のなかで最重要分野のひとつである微分を学ぶときに使います。
この機会に覚え直しましょう!

今回は、点・関数の平行移動の解説・証明をします。
また、変化の割合の復習をし、2点$${(x_1,y_1),(x_2,y_2)}$$を通る直線の式、
$${y-y_1=\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} (x-x_1) }$$
$${y-y_2=\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} (x-x_2) }$$
の導出をします。
この式で、$${x_1 \neq x_2}$$としています。

この記事では、以下$${x_1 \neq x_2}$$とします。

平行移動

ここでは、まず点の平行移動について解説し、関数の平行移動について解説・証明をしていきます。

点の平行移動

ここでは、点の平行移動の解説をします。
図は、

のように、点$${(x_1,y_1) }$$を$${ x}$$軸方向に$${ \alpha}$$、$${ y}$$軸方向に$${ \beta}$$平行移動した点を$${ (x_2,y_2)}$$とします。
このように点を平行移動した場合、平行移動後の座標は、平行移動前の座標に平行移動した分を、単純に足せば良いとなります。
つまり、
$${ x_2=x_1+\alpha,y_2=y_1+\beta}$$
となります。

関数の平行移動

ここでは、関数の平行移動の解説をします。
結果と覚え方について書いた後、証明をします。
図は、

のように、関数$${y=f(x) }$$を$${ x}$$軸方向に$${ \alpha}$$、$${ y}$$軸方向に$${ \beta}$$平行移動した関数を$${y=g(x)}$$とします。
このとき、平行移動した後の関数は、
$${y-\beta=f(x-\alpha) }$$
となります。
この式の覚え方は、平行移動前の関数$${y=f(x) }$$の$${ x}$$と$${ y}$$を、平行移動した分の$${ \alpha}$$と$${ \beta}$$を使って、
$${x \rightarrow x-\alpha}$$
$${y \rightarrow y-\beta}$$
置き換えると考えます。
矢印の右側の符号がマイナスになっていることに注意しましょう。

証明
平行移動後の関数が、
$${y-\beta=f(x-\alpha) }$$
となることを証明します。
図は、

のように、関数$${y=f(x) }$$を$${ x}$$軸方向に$${ \alpha}$$、$${ y}$$軸方向に$${ \beta}$$平行移動した関数を$${y=g(x)}$$とします。
また、関数$${y=f(x) }$$上の点$${(x_1,y_1)}$$を$${ x}$$軸方向に$${ \alpha}$$、$${ y}$$軸方向に$${ \beta}$$平行移動した点を$${(x_2,y_2)}$$とします。
このとき点$${(x_2,y_2)}$$は、関数$${y=g(x) }$$上の点となります。
点$${(x_2,y_2)}$$は、点$${(x_1,y_1) }$$を$${ x}$$軸方向に$${ \alpha}$$、$${ y}$$軸方向に$${ \beta}$$平行移動した点なので、点の平行移動から、
$${ x_2=x_1+\alpha,y_2=y_1+\beta}$$
となります。
これらから、
$${ x_1=x_2-\alpha,y_1=y_2-\beta}$$
となります。
また、点$${(x_1,y_1),(x_2,y_2)}$$はそれぞれ
関数$${y=f(x),y=g(x) }$$上の点なので、
$${y_1=f(x_1),y_2=g(x_2) }$$
となります。
$${y_1=f(x_1)}$$に、
$${ x_1=x_2-\alpha,y_1=y_2-\beta}$$
を代入すると、
$${y_2-\beta=f(x_2-\alpha)}$$
となります。
この式から、
$${y_2=f(x_2-\alpha)+\beta}$$
となります。
この式と、
$${y_2=g(x_2) }$$
より、
$${g(x_2)=f(x_2-\alpha)+\beta}$$
となります。
この式から、点$${(x,y)}$$は$${y=g(x) }$$上の点なので、
$${y=f(x-\alpha)+\beta}$$
となります。
この式の$${ \beta}$$を移項して、
$${y-\beta=f(x-\alpha)}$$
となり、証明が終了となります。
今回の証明は、
$${y_2-\beta=f(x_2-\alpha)}$$
から平行移動後の関数は、
$${y-\beta=f(x-\alpha)}$$
として良いと思いますが、平行移動後の関数、
$${y=g(x) }$$
との結びつけを明示的にしたかったので、回りくどい表現となっています。

直線の式

2点$${(x_1,y_1),(x_2,y_2)}$$を通る直線の式は、
$${y-y_1=\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} (x-x_1) }$$
または、
$${y-y_2=\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} (x-x_2) }$$
となります。
これらの式の導出のため、まずは変化の割合の復習をしてから、導出をします。

変化の割合

求め方は、
$${変化の割合=\dfrac{yの増加量}{xの増加量}  }$$
となります。
変化の割合は、$${ x,y}$$がどれだけ増加または減少したか、つまり$${ x,y}$$の各変化した量から求めます
変化の割合とは、文字通り変化した量の割合です。
具体的には、各増加量は$${(x_1,y_1)}$$から$${(x_2,y_2)}$$に変化したときを考えると、
$${ xの増加量=x_2-x_1}$$
$${ yの増加量=y_2-y_1}$$
と求めます。
各増加量は、各座標の変化した後から前を引く
と覚えたらいいでしょう。
変化の割合は、
$${変化の割合=\dfrac{yの増加量}{xの増加量}  }$$
で求められるので、2点の座標から、
$${変化の割合=\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} }$$
と求められます。
また、変化の割合は2点間を直線でつないだときの傾きと等しくなります。
直線の式の導出では、このことを使います。

導出

2点$${(x_1,y_1),(x_2,y_2)}$$を通る直線の式の導出をしましょう。
直線の式は、
$${y-y_1=\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} (x-x_1) }$$
または、
$${y-y_2=\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} (x-x_2) }$$
となります。
まず全ての直線は、平行移動をすると原点を通ります
このことを利用します。
2点$${(x_1,y_1),(x_2,y_2)}$$を通る直線の式の傾きは、これら2点の変化の割合に等しいので、
$${\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} }$$
となります。
全ての直線は、平行移動をすると原点を通るので、2点$${(x_1,y_1),(x_2,y_2)}$$を通る直線の式を、

  1. 変化の割合を利用して2点を通る直線と同じ傾きで、原点を通る直線を求める

  2. 求めた直線を2点のどちらかの点を通るように平行移動する

という手順で求めます。
つまり、2点$${(x_1,y_1),(x_2,y_2)}$$を通る直線と同じ傾きで、原点を通る直線は、
$${y=\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} x }$$
となります。
この直線の式を、点$${(x_1,y_1)}$$を通るように平行移動すると、
$${y-y_1=\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} (x-x_1) }$$
となり、
点$${(x_2,y_2)}$$を通るように平行移動すると、
$${y-y_2=\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} (x-x_2) }$$
となります。
これで導出が終了となります。

まとめ

今回は点・関数の平行移動、2点を通る直線の式の解説や証明をしました。
特に平行移動は、この記事で扱った直線の式だけでなく、円の式でも使われます。
いろいろと使うこともあるので、忘れないようにしましょう。
平行移動に関しては、証明を覚えるより、結果を覚えましょう
点の場合は、点$${(x_1,y_1) }$$を$${ x}$$軸方向に$${ \alpha}$$、$${ y}$$軸方向に$${ \beta}$$平行移動した点を$${ (x_2,y_2)}$$とすると、
$${ x_2=x_1+\alpha,y_2=y_1+\beta}$$
のように、単純に平行移動した分を各座標の値に足します
関数の場合は、関数$${(y=f(x)) }$$を$${ x}$$軸方向に$${ \alpha}$$、$${ y}$$軸方向に$${ \beta}$$平行移動した関数は、
$${x \rightarrow x-\alpha}$$
$${y \rightarrow y-\beta}$$
と置き換えると覚えましょう
特に、点と関数では符号が違うので注意しましょう

また2点$${(x_1,y_1),(x_2,y_2)}$$を通る直線の式は、
$${y-y_1=\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} (x-x_1) }$$
または、
$${y-y_2=\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} (x-x_2) }$$
となります。
この直線の式に関しては、結果の式を覚えるのではなく、

  1. 変化の割合を利用して2点を通る直線と同じ傾きで、原点を通る直線を求める

  2. 求めた直線を2点のどちらかの点を通るように平行移動する

という手順で求められるようにしましょう。
私自身は、この直線の式の求め方を高校時代に覚えませんでした。
しかし、今は求め方を覚えたほうが良いと思っています。
この理由は、2点を通る直線を求めやすいということもありますが、特に変化の割合と平行移動という重要なことを覚えていて使うことが重要だからです。

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