乗法公式を使いこなそう⑤基本形の乗法公式の分類-使い方-
基本形の乗法公式は、右辺の$${ x}$$を含む項の有無から、
$${(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab}$$
$${ (x+a)^2=x^2+2ax+a^2}$$
$${ (x-a)^2=x^2-2ax+a^2}$$
と、
$${ (x+a)(x-a)=x^2-a^2}$$
に分けることができ、この分け方を分類1と呼びます。
次に、右辺の定数項が2乗した数かどうかから、
$${(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab}$$
と、
$${ (x+a)^2=x^2+2ax+a^2}$$
$${ (x-a)^2=x^2-2ax+a^2}$$
$${ (x+a)(x-a)=x^2-a^2}$$
に分けることができ、この分け方を分類2と呼びます。
最後に、右辺の$${ x}$$の係数の符合から、
$${ (x+a)^2=x^2+2ax+a^2}$$
と、
$${ (x-a)^2=x^2-2ax+a^2}$$
に分けることができ、この分け方を分類3と呼びます。
また以下では分類3から、
$${ (x+a)^2=x^2+2ax+a^2}$$
と、
$${ (x-a)^2=x^2-2ax+a^2}$$
を1つの式にまとめて、
$${ (x \pm a)^2=x^2 \pm 2ax+a^2}$$
と書きます。
これら分類1,分類2,分類3を使うと、因数分解をするときに、どの基本形の乗法公式を使うことができるか、わかりやすくなります。
今回は2次式、
$${x^2+mx+n }$$
を因数分解するとき、分類により基本形の乗法公式、
$${(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab}$$
$${ (x \pm a)^2=x^2 \pm 2ax+a^2}$$
$${ (x+a)(x-a)=x^2-a^2}$$
の中でどれを使うことができるか書いていきます。
以下では$${ m,n}$$を整数とし、
$${x^2+mx+n }$$
は基本形の乗法公式を使って、必ず因数分解ができるとします。
分類の使い方
右辺の$${ x}$$を含む項による分け方である分類1、右辺の定数項による分け方である分類2、右辺の$${ x}$$の係数の符合による分け方である分類3を使って、
$${x^2+mx+n }$$
の因数分解をするとき、どの基本形の乗法公式を使うことができるか考えてみましょう。
分類は1から順に2、3と使っていきます。
分類1
$${x^2+mx+n }$$
の因数分解をするとき、分類1より$${ x}$$を含む項が無ければ、
$${ (x+a)(x-a)=x^2-a^2}$$
を使うことができると決まります。
$${ x}$$を含む項が有れば、
$${(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab}$$
$${ (x \pm a)^2=x^2 \pm 2ax+a^2}$$
のどちらかを使うことができると決まります。
分類2
$${x^2+mx+n }$$
で、$${ x}$$を含む項が有る場合の因数分解をするときを考えます。
この場合、
$${(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab}$$
$${ (x \pm a)^2=x^2 \pm 2ax+a^2}$$
のどちらかを使うことができると決まっています。
分類2より、
$${x^2+mx+n }$$
の因数分解をするとき、定数項$${ n}$$が2乗した数でなければ、
$${(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab}$$
を使うことができると決まります。
定数項$${ n}$$が2乗した数であれば、
$${(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab}$$
$${ (x \pm a)^2=x^2 \pm 2ax+a^2}$$
のどちらかを使うことができると決まります。
次に、この場合どちらを使うことができるか考えます。
このときは、
$${ (x \pm a)^2=x^2 \pm 2ax+a^2}$$
を使うことができると、まずは考えます。
まだ、この式を使って因数分解ができるかわかりません。
しかし、まずは試しにやってみます。
試しに、
$${x^2+mx+n =(x \pm a)^2}$$
と因数分解をした後、右辺を展開し、両辺を比較して同じになるか確認をします。
この確認のとき全てを展開せずに、$${ x}$$を含む項の係数のみを計算します。
この計算後、求めた係数の絶対値(符合を無視した値)と、
$${x^2+mx+n }$$
の$${ x}$$を含む項の係数$${ m}$$の絶対値を比較して確認をします。
この確認で同じになれば、
$${ (x \pm a)^2=x^2 \pm 2ax+a^2}$$
を使うことができると決まります。
確認で同じにならなければ、
$${(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab}$$
を使うことができると決まります。
ここで、
$${ (x \pm a)^2=x^2 \pm 2ax+a^2}$$
を使うことができるとまずは考える理由は、試しにやってみることから確認まで、すぐに終わるからです。
$${(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab}$$
が使えるのか試すより、速く終わると思います。
分類3
$${x^2+mx+n }$$
で、
$${ (x \pm a)^2=x^2 \pm 2ax+a^2}$$
を使うことができると決まった場合を考えます。
この式は、1つにまとめて書いていますが、
$${ (x+a)^2=x^2+2ax+a^2}$$
と、
$${ (x-a)^2=x^2-2ax+a^2}$$
に戻し、どちらを使って因数分解ができるか考えます。
$${x^2+mx+n }$$
の因数分解をするとき、分類3より$${ x}$$の係数$${ m}$$の符合がプラスであれば、
$${ (x+a)^2=x^2+2ax+a^2}$$
を使うことができると決まります。
$${ x}$$の係数$${ m}$$の符合がマイナスであれば、
$${ (x-a)^2=x^2-2ax+a^2}$$
を使うことができると決まります。
分類の注意点と確認
分類2で書いた、まずは試しにやってみた後の確認が、わかりにくかったかもしれません。
また、ここまでで疑問に感じたことがありませんでしたか?
分類1、分類2より$${ x}$$を含む項が有る、定数項が2乗した数のとき、
$${ (x \pm a)^2=x^2 \pm 2ax+a^2}$$
を使うことができると決まると思いませんでしたか?
これは間違いです。
私自身、これが正しいと思っていました。
しかし、作成中に間違いに気づき、すでに公開していた「概要」を修正しました。
これらについて、具体例を使って解説します。
まず確認について解説するため、
$${x^2+8x+16}$$
の因数分解をしてみましょう。
これは分類1、分類2より$${ x}$$を含む項が有る、定数項が2乗した数なので、
$${ (x \pm a)^2=x^2 \pm 2ax+a^2}$$
を使うことができると、まずは考えます。
これらより因数分解をしてみると、
$${x^2+8x+16=(x \pm 4)^2}$$
となります。
ここで、確認をします。
この式の右辺の$${ x}$$を含む項の係数のみを計算すると、
$${\pm 2 \times 4=\pm 8}$$
となります。
これの絶対値である$${ 8}$$を、
$${x^2+8x+16}$$
の左辺の$${ x}$$を含む項の係数である$${ +8}$$の絶対値$${ 8}$$と比較します。
この比較をすると、両辺とも$${ 8}$$となっているので、
$${ (x \pm a)^2=x^2 \pm 2ax+a^2}$$
を使うことができると決まります。
また分類3より、
$${x^2+8x+16}$$
の$${ x}$$の係数の符合がプラスなので、
$${ (x+a)^2=x^2+2ax+a^2}$$
を使うことができると決まり、
$${x^2+8x+16=(x+4)^2}$$
と因数分解ができます。
この例から、
$${x^2+8x+16}$$
のような形の因数分解は、
$${ (x+a)^2=x^2+2ax+a^2}$$
を使って、
$${x^2+8x+16=(x+4)^2}$$
となり、確認はしなくても良いと考えるかもしれません。
しかし、このような考えは間違いです。
この解説のため、
$${x^2+10x+16}$$
の因数分解をしてみましょう。
同様に考えると、この式の因数分解は、
$${x^2+10x+16=(x+4)^2}$$
となります。
しかし、これは間違いです。
正しく因数分解をすると、
$${(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab}$$
を使って、
$${x^2+10x+16=(x+2)(x+8)}$$
となります。
つまり分類1、分類2より$${ x}$$を含む項が有る、定数項が2乗した数のとき、
$${ (x+a)^2=x^2+2ax+a^2}$$
だけではなく、
$${(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab}$$
を使う場合もあります。
このため、必ず確認をする必要があります。
まとめ
今回は、因数分解における分類の使い方について書きました。
この使い方は、基本的な因数分解の計算では意識しないと思います。
しかし、因数分解が苦手、文字を多く含む場合等の複雑な式の因数分解のときに役立つかと思います。
今回は、因数分解の計算問題のような必ず因数分解ができるという場合を扱っています。
しかし、二次方程式の計算問題のような因数分解ができるとは限らない場合もあります。
このような場合は、まずは因数分解ができると考えてやってみると良いでしょう。
また、分類2のことを考えると2乗した数を覚えた方が良いと思います。
できれば$${ 15}$$まで、最低でも$${ 13}$$までは覚えましょう。
特に$${ 13}$$は覚えた方が良いでしょう。
この理由は、$${ 13}$$が素数だからです。
もし$${ 14^2=196}$$を覚えていなかったとしても、素因数分解をすれば、$${ 196}$$が$${ 14^2}$$とわかるでしょう。
しかし、$${ 13^2=169}$$を覚えていなかった場合、素因数分解をしたとしても、$${ 169}$$は$${ 13}$$でしか割ることができないため、$${ 169}$$が$${ 13^2}$$と気づかないと思います。
最後に因数分解の計算で重要なことは、基本形の乗法公式を使った展開の計算を速くできるようにすることです。
因数分解より、展開の計算です。
できれば因数分解をした後、すぐに展開して間違っていないか確認できるようになりましょう。