![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13082175/rectangle_large_type_2_c8e831546c55bcbbe455d0779c4945e2.jpeg?width=1200)
【さよなら大好きな人〜Episode 1〜】
13歳から海外旅行を始めた私。
キュンとくる瞬間は、台風のように突然現れる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~さよなら大好きな人 episode 1~
彼は、ギターを持って颯爽と現れた。
21歳の頃だっただろうか。
ベトナムで一ヶ月間
日本語教師アシスタントとして大学から派遣された。
昔からなぜがアジアの中でも特に惹かれていた国、ベトナム。
当時、英語教師の資格を取得するコースを受講していた私。
観光としてでなく先生の仕事ができるなんて願ったり叶ったりだった。
「アシスタント」とは名ばかりの、
同世代の現地のベトナム人大学生に
90分がっつり日本文化を教授する。
私は大学で仲良しの女の子と派遣されたのですごくリラックスできた滞在だった。
生徒は、本当に目を輝かせて興味津津に覚えたばかりの日本語で質問攻め。
他のクラスの子が、窓に張り付いて私たちの様子を見にくる事もあった。
「先生、日本の歌を歌ってください!」
(なんだと?!)
このレペゼン音痴の私になんたる申しつけ!
急に頭をよぎったのは2曲。
一つは、
#19 の「紙ヒコーキあの曇り空わって」
二つ目は、
なぜか、#DA PUMP の「if...」だった。
ここは空気を読んで前者をチョイスした。
(空気を読めたのか?)
派遣一日目からDA PUMPを歌うなんて
無理無理無理無理!
大衆の前で
音痴をひけらかしたにもかかわらず
なぜか生徒はスタンディングオベーションの大盛り上がり!
最高に気持ち良かった。
そんな不可思議なスタートを切り、私の教員生活がスタートした。
そして、
ある日生徒から週末 #マイチャウ (#Mai Châu )という少数民族の村に旅行に行こうと誘われた。
ベトナムで初旅行!
私のいた大学は、貿易大学(FTU)という所で20名ほど参加。
また、建設大学という他大学の生徒も20名ほどドッキングするとのこと。
当日、こんなに乗るん?と目を疑うほどの人数で
ぎゅうぎゅうに敷き詰めて数時間かけてバスでマイチャウへ。
みんな歌を歌ったり、
生徒がナイフ持ち出したかと思ったら
揺れる車内で器用にマンゴーを剥いて食べさせてくれたり。
すでに楽しすぎてワクワクが止まらない。
マイチャウについて、
バスを降りた。
すると、池のほとりで
誰かがギターを抱えて立っていた。
それが
彼だった。
彼は、
私が昔大好きだった人にどこか似ていたせいか、
一瞬で釘付けになった。
別にイケメンなワケではないし、
どちらかといえばマヌケなのだが(失言)
彼を目で追う自分には嘘をつけなかった。
いかんせん、
彼は日本語の「に」の字も喋れない。
ベトナム語とフランス語のみ。
そんな彼とのコミュニケーションは、
少しの言葉と
歌だった。
私と友達には、お付きのベトナム人2人がいて色々お世話をしてくれた。
(2人ともすごく仲良くなった友達だ)
とは言っても、
彼らより数段体力のある私は、
何百段もある岩段を登って洞窟見学をする際にも、
チュンチュンチュンと駆け上がり男子が過半数を占めるグループで
一番に頂上にたどり着いてしまった。
お付きの者は、すっかりへばってしまったのか
ゆっくりと腰を曲げてじいさんみたいに登ってた。
頂上に着くころには彼らはかなり老けていた。笑
洞窟に入り、
馬みたいな形の岩を見つけて
「フォーフォー!」言いながらまたがって遊んでいると
下にいた生徒たちは、
「あの人絶対日本人じゃない!」
と後ろ指をさしていたとか。
後日談だが、
大学通信なる新聞の一面には、
「元気すぎた瀬菜」
というシュールな記事が掲載されていたらしい。(失態)
頂上で遊んでいると、
そこに彼が現れた。
多分、
「君、おもしろいね!」
と言っていたんだろう。
ニコっと笑って不可思議なポーズを決めてきた。
何か話したいけど、
なんて話せばいいか分からない。
ベトナム語は、
「こんにちは」
「かわいいですね」
「セクシーな女は好きですか?」
この3つしか話せない。
もっと実になるモノ勉強しときゃよかった。
そして下山して、高床式住居でご飯タイム。
私たちにふり当てられた座席には
彼と、彼の友達がいた。
何十もある席の中でこの席がふり当てられたことに運命を感じた。
言葉が通じない事を、逆手にとって言語シェアのスタート。
日本語で
「おいしい」とか
「おもしろい」とか
「よっしゃ~!」って言葉を教えた。
そして、
「“愛してる”ってフランス語でなんて言うん?」と聞き、
“ジュテーム”
と彼が答えさせてすかさず、
"Oh, thank you^^"
(お!ありがとう^^)
と返すと
口をガハガハ開けて
「やられた~!」と言わんばかりに笑ってた。
外国人と話すときにこれをするとなかなか掴みはOKだ。
お付きの者が、彼らの話を通訳してくれた。
「言葉が通じないのに、こんなに楽しめるなんて信じられない!」と話してくれていたらしい。
その後、お絵かき大会をして遊んだ。
彼の似顔絵を描くと、
どう逆立ちしても
のび太
にしかならなかった。
ベトナムでもドラえもんは人気らしく、
「のび太は嫌だ!」とクレームをつけられたが、
むろん、その夜から彼のあだ名は「のび太」になった。
すると、突然、
のび太の携帯電話が鳴り響いた。
恋人からだった。
あぁ、私は何を期待していたんだろう。
本物ののび太にだって彼女はいる。
「ベトナムののび太にも彼女がいた」
ただ、それだけの事じゃないか。
たった半日程度だったが、
久しぶりに心が躍ったんだ。
急に切なくなり、
「ベトナムのしずかちゃん」が少しうらやましい夜だった。
To be continued...